編集部独占インタビュー【魔の交差点の真実に迫る!】

著者である管理人様が北大正交差点に関する調査を独自に行われていたその裏で、当編集部はあの交差点に非常に詳しい方に独占インタビューを行うことに成功しました。我々の取材に応じてくださったのは、北大正交差点の近くにお住みになられているXX優志【※注釈1】さん。現在大学4年生のXXさんは、あの交差点に関しては様々な思いをお持ちのご様子で、今回初めてメディアに向けてその心中を吐露してくださいました。インタビュアーは管理人様に行っていただき、余計な表現などはすべて排除した上で、管理人様とXXさんの会話のみを文字にて掲載いたします。


管理人「XXさん、本日はよろしくお願いいたします」

XX「よろしくお願いします」

管理人「さて、さっそく本題に移りたいので大変恐縮なのですが、XXさんはどうして我々の取材を受けてくださることに決められたのですか?」

XX「はい。もうこれ以上、誰にも死んでほしくないからです。さらに言えば、あの交差点に誰も近づいてほしくないからです」

管理人「これ以上、というと?」

XX「実は、僕の友人もあの交差点で事故死してしまったんです」

管理人「そうだったんですか…それはお気の毒でした」

XX「それも、1人や2人ではないんです。4人ですよ?短い期間で4人も僕の友人が事故で死んでしまったんです。みんな本当に仲のいい友人たちでしたから、あの時はもう気がおかしくなるかと思いました…」

管理人「苦しい思い出だとは思うのですが、お気持ちの許す限り詳しくお話していただいてもよろしいですか?」

XX「もちろんです。そのために来たんですから」

管理人「ありがとうございます。それではまず、XXさんから見たあの交差点への率直な印象、思いを教えていただけますか?」

XX「はい。僕は生まれた時からずっとあの交差点の近くに住んでいて、学校に通うにも、遊びに行くにも子どもの時からしょっちゅうあの交差点を通っていました。その時は今みたいに事故多発地帯なんて言われていなくて、ごくごく普通の交差点だったんです。なんなら今よりも標識とか信号とかは古かったから、昔の方が危なかったと言えるんじゃないですかね。でも昔は全然事故なんて起きていませんでした。それがいつからか、詳しい時期は覚えていないんですけど、急に「あの交差点は事故多発地帯だから気を付けて!」って言われるようになったんです。前までは誰も立っていなかったのに、地域の人や警察官の人が見回りや声掛けを行うようになっていきました。でも正直、その時はあんまり本気にもしていなかったです」

管理人「それは、どうして?」

XX「やっぱり、人間って自分が痛い目を見ないと学習しないところってあるじゃないですか?自分には関係のないことだからべつにいいや、みたいな。多分当時の僕も全然深く考えずに、警察の人やボランティアの人に声をかけられても適当に流してたんだと思います」

管理人「なるほど、人間には確かにそういう心理もありますね。しかし、いまのXXさんはそうではい。いつから心情に変化が訪れたんですか?」

XX「僕が高校生の時です。あんまり大きい声では言えないんですけど、僕高校生の時って少しやんちゃをしていて…。とは言ってもそんな派手なことはしていなくて、夜中に仲間を集めて街にくりだしたりとか、自転車の二人乗りをしてみたりとか、それくらいの事です。若い時ってそういうのが快感に感じられて、非日常感っていうんですかね?その時間を仲間と共有しているって感覚が心地よくて…」

管理人「やんちゃをされていたとは驚きですね。それならなおさらあの交差点に興味など出なさそうですけど…」

XX「最初はそうでした。でもそんなある日、いつものように仲間を連れて深夜に自転車で街にくりだした時の事です。あの日は二人乗りはしていなくて、それぞれが自分の持ち寄った自転車に乗っていました。小学校の時からの仲だった2人といつもの場所に集合して、いつものコンビニでお菓子やジュースを買って、誰もいない街の中や道路を疾走していました。あれは夏の終わりごろでしたから、気温も湿度も非常に心地よくって気持ちが良かった。けど今にして思えば、もしかしたらそういったところから油断があったのかもしれません。そして僕らは、例の交差点に進入したんです」

管理人「その時、なにが起こったんですか?」

XX「もう時間は深夜ですから、自動車の通りもなく、人の通りもなく、あたりは非常に静かなわけです。そんな状況なわけですから、もしも交差点に自動車がいたら絶対に気づきますよね?しかも僕らはT字路に対して直進方向に侵入したわけですから、もしも自動車がいたならなおさら発見しやすい位置にいたわけです。僕ら3人は僕を先頭にして、後ろに2人がついてくる位置関係だったと思います。全く自動車の気配はありませんが、僕は一応周囲を見回してきちんと確認をした後、横断歩道に侵入しました。後ろの二人も僕にそのままついてきてくれたと思います。するとその時、突然僕らの横から白い自家用車が突っ込んできたんです。位置的に右折車だったと思いますが、それはもう本当に突然に」

管理人「それは不自然ですね…。私も取材に当たり、この交差点を下見させていただきましたが、XXさんがおっしゃられたように、やってきた自動車を見落とすようなことはなかなか考えられなかったです」

XX「そうなんです、僕には本当に突然現れたようにしか見えませんでした」

管理人「しかし結果的には、それが事故につながってしまったと?」

XX「はい…。僕が先頭を走っていて、まさに僕の自転車の横っ腹に突っ込む形で自動車は進んでいました。向こうはそれなりのスピードを出していましたから、自分はもうここで死ぬのかなって。その瞬間はなんだか目の前の現実がスローモーションに感じられたのを覚えています」

管理人「それから、どうなったのですか?」

XX「僕はそこで気を失って、気づいた時には病院のベッドの上でした。もう完全に死んでしまったものだと思っていましたから、目が覚めた後もなんだか生きた心地がしなかったですね。しかし奇跡的に全く怪我はしていなくて、かすり傷もありませんでした。一応念のため病院まで搬送されたって感じでしたね」

管理人「そうでしたか。無事に助かったのは本当に良かったですね」

XX「ただ、良いだけでは終わりませんでした。僕の後ろを走っていた仲間二人は、あの場で即死してしまったと聞かされたんです…。僕は心の底から自分を責めました。自分がもっとちゃんと周囲を見ていれば、もっと気を付けていれば、あるいはあの日に出かけようと二人を誘わなければ、こうはならなかったかもしれないのに、と…」

管理人「無理もありません…。非常に悲惨な事故ですから…」

XX「3人の中で自分だけ生き残ってしまうと、なんだか僕は2人の事を犠牲にして生き残ってしまったように思えてならなかったんです。そう考えれば考えるほど、僕はますます自分の事を責めていきました…。けれど、それ以上に許せないことがありました」

管理人「それは、なんですか?」

XX「なにより許せなかったのは、僕たちをひいた車があのまま逃げていったことです。降りて手当てをすることもせず、救急車を呼んでくれることもせず、通り過ぎていったんです。しかもその犯人はいまだに捕まっていませんから、もう本当に悔しかったですね…」

管理人「大変な状態だったこととお察ししますが、そこからどのようにして立ち直られたんですか?」

XX「すさんでいた僕の事を見かねたのか、他の仲間たちが僕の事を誘って遊びに連れ出してくれるようになったんです」

管理人「それは素晴らしいお仲間ですね」

XX「最初はなかなか気分を変えることはできませんでしたし、誘いを断ることもよくありました。ただ、そんな僕でも仲間たちは根気強く接し続けてくれて、時間はかかりましたけど、僕の心は少しづつ立ち直っていくことができました。しかし、そんな時の事です。二度目の事故が起こるのは…」

管理人「お辛いことと思いますが、可能な範囲でお話を頂ければと思います…」

XX「あの時は、事故からちょうど2年ほど経っていた時でした。僕は大学1年生になって一人暮らしを初めていて、その時は新しい生活に慣れ始めていた頃でした。久々に高校の仲間で集まって、なにかご飯でも食べに行こうって話になったんです。集まったのは僕を入れて3人、行き場所は当時まだ地元の高校の近くにあった居酒屋に決まりました。久々に再開した仲間との時間は本当に楽しくて、時間の経過も完全に忘れていましたね」

管理人「楽しい時間って一瞬のうちに過ぎていきますものね」

XX「それから何軒か近くのお店をはしごして、3人とも完全に出来上がってしまっていました。テンションも高かったですね。いよいよ体も限界みたいだったんで、次のお店で最後にしようかって話になって…。それで、歩いてみんなで移動していたんです。そうしたら、例の交差点を通りかかりました」

管理人「なるほど…」

XX「僕も仲間に負けないくらい酔っていましたが、あの交差点で二人の仲間を失った記憶は色濃く残っていました。僕は注意しすぎなくらい周囲を確認し、完全に周囲に誰もいないことを確認し、横断歩道を渡り始めました。当然信号機も青です」

管理人「…その時、何が起こったんですか?」

XX「…あの時と、全く同じことが起こったんです。それまでなんにもいなかった道路上から急に白い車が右折してきて、横断歩道を歩く僕らに突っ込んできたんです…。しかも、状況まであの時と完全に同じです。やや先頭を歩く僕に、他の二人が続く形。自動車は先頭を歩く僕めがけて突っ込んできました」

管理人「…それから、どうなってしまったのですか?」

XX「…それも、同じです。僕はその瞬間に記憶が途切れて、気づいた時には病院のベッドの上…。僕自身は何の怪我をすることもなく済んだのですが、一緒にいた仲間二人は自動車にひかれて即死…」

管理人「信じたくはないですよね、そんな現実…」

XX「ええ…。本当に、本当に、これが現実なのかと…。もう、何の言葉も出ませんでした…。あの時と同じように、しかも同じ車に…」

管理人「同じ車だったのですか?」

XX「確かに見ました。あの時と同じ色、同じ形をしていましたから。ナンバーもたぶん同じだったように思います。下二桁が33なんですよ」

管理人「○○ー33、という事ですかね?」

XX「はい、その通りです」

管理人「では、同一犯であると?」

XX「最初はそう確信していました。だからこそ激しい憤りを感じていました。…でも、少し冷静になってみた時、かえってそれはおかしいのではないかと思い始めたんです」

管理人「おかしい、と言いますと?」

XX「だって、考えてみてください?警察の方に聞いたんですが、今ってひき逃げをして逃げ切れる確率って相当低いらしいんです。必ずどこかに証拠が残るから、と。でも、同じ犯人が同じ車で、それも2年の月日を空けて同じ事故を起こして、しかもその両方とも逃亡を成立させるなんて、無理じゃないかって思いませんか?」

管理人「確かに、あまり現実的ではないかもしれませんね…」

XX「…そう考えれば考えるほど、なんだか不気味で仕方なくなっていったんです。僕は事故防止の活動をする傍ら、あの交差点でけがをした人に話を聞くこともあったんですが、みんな決まって口にするんです。白い自家用車が突然現れて、自分をひいたいったって…」

管理人「それは奇妙ですね…。なんだかまるで、幽霊かなにかが車を操っているかのような…」

XX「僕だってそんな話は信じたくありませんけど、もしも、もしもそれが本当だったなら、あの交差点で事故を防ぐ方法はひとつしかありません」

管理人「それが、もしかして…」

XX「そうです。『あの交差点に近づかない』これしかありません。ですから、僕はその事を多くの人々に分かっていただきたく、こうしてメディアに出ることを決めたのです。最初からあの交差点に近づかなければ、僕のような思いをする人も現れません。誰も傷つくこともありません。警察の人も周辺住民の人も、これ以上苦しむ必要もありません。僕はどうしてもそれを伝えたいのです」

管理人「お辛い記憶だったことと思いますが、こうして声を上げていただきましたこと、本当に感謝申し上げます。編集部として、XXさんのお声を必ず読者の皆様にお届けいたしますことを、ここにお約束いたします」

XX「どうか、よろしくお願いいたします」







【※注釈1】

インタビューに当たり、ご本人様からは実名を記載しても構わないと言っていただけたものの、この名字は管理人様が調査を行っているものと同じものであったため、同じ名字の方への風評被害を防止するためにここでは伏字にさせていただきます。

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