著者自己紹介
投稿されたエピソードの中から、私が特に印象深かったもの2つを取り上げさせていただきました。皆様、ご覧になっていただけましたでしょうか?これはいずれも視聴者の方からお送りいただいた怪奇エピソードなのですが、どちらもお化けや幽霊の類の怖さではないというか、なんだか人間の怖さを感じさせるようなエピソードだったとは思いませんか?私はこれ以外にも複数の投稿エピソードに目を通しまして、そこに奇妙な共通点を見出したのです。ここではその事についてお話させていただければと思います。
おっと、ついつい興奮して自己紹介が遅れてしましましたね、これは失礼しました。実はこれまでに紹介させていただいた2つの投稿エピソードなのですが、あれは私の作成したサイト上に投稿されたものなのです。つまり私は、怪奇エピソードを集めるサイトの管理人というわけです。ただ荒らされると嫌なので、ここでリンクは張らないことにします(笑)。ぜひ探し出してみてください!
少し私のお話をさせていただくと、私は今年で41歳になる中年まっしぐらの普通の男です。仕事はWebデザイナーをしておりまして、内容はインターネット上でサイトや掲示板のフォーマットを作ったり、デザインをてがけたり、あるいはその相談に乗ったりすることが主ですね。元々は普通に会社通いを行うサラリーマンだったんですが、以前からこの仕事に興味を持っていたこともあり、あるいはもともとインターネット関係の作業には強かったという事もあって、思い切って転職してみることにしたんです。とまぁそう言えば聞こえはいいかもしれないですが、実際私は結婚しておりませんゆえ、妻や子供がいないから自由がきくというのが一番大きな理由だったかもしれませんね。開業してしばらくはそれなりに苦労しましたが、今ではそこそこ安定して仕事を頂けるようになりました。まぁとはいっても、自由の利く独り身とはいえ収入で言えばサラリーマン時代の3分の2以下になってしまったわけですから、果たしてどちらが幸せだったのかは何とも言えませんね…(笑)。
そして仕事の
そのようにして今私はデザイナーの仕事をしているわけですが、同時に根っからの都市伝説や恐怖体験マニアなんです。とは言っても、インターネット上や雑誌などに転がっている話をくまなくチェックしているかと言われるとそうではなくて、怖い話を聞いた時に感じるゾクゾクする気持ちが好きというか、不気味な恐怖体験を起こしていた原因が分かった時のドキッとさせられる感覚が好きというか、そういうタイプのマニアなんです。ただ私自身、まったく霊感などもありませんし、恐怖体験をしたようなこともなかったので、そのせいでかえって興味をそそられたのかもしれません。
話を本題に戻しますね。先ほど紹介させていただいた2つのエピソード、ご覧になってどう思われましたか?私は正直、この話を見て非常に不気味な思いを抱いたんです…。
どういうことか、というのを順番に説明しますね。まず先ほどの2つのエピソード、共通して投稿者の方はなんら直接的な被害を受けていないんですよね。彼ら自身にというよりは、彼らの周りの人に不可解な現象が起こっている。もちろんそれがなぜかなんて理由なんてさっぱり分かりませんが、共通点であるとは言えると思います。
次に、投稿者様の名字についてです。実は私のサイトは、エピソードを投稿するには個人情報を登録することになっているんです。見るだけなら登録しなくても見られるんですけどね。なぜそうしたかというと、閲覧数が月間でトップだった投稿者様にはなんらかの景品をお送りしようかなと考えていたんです。もちろん現金運百万円とか派手な旅行券とかのクラスは無理ですけど、ちょっとした商品券ですとか、なにかのグッズをプレゼントするとか、それくらいなら実現できるし面白いかなって思ってたんです。
だから私にだけは登録された投稿者様の名前が見られるわけなんですが、先の2つのエピソードは名字が同じ方からだったんですよ。XX【※注釈1】さんです。別にそれだけならただの偶然だろうってことになりますが、そうではないんです。
というのも、XXという名字の方からの投稿は実は他にも複数ありまして、さらにそれらの話は全て先ほどと同じ共通点を持っていたんです。投稿者様本人には直接的な害はなく、その周囲にいる人たちに怪奇現象が起こっているという、あの共通点が。
私はこの点に気づいた時、非常に興奮したのを覚えています。だっておかしくないですか?例えば、何か呪われた名字みたいなものがあったとしますよね。でも普通それで死ぬのってその名字の人たちなわけじゃないですか。呪いをかける方だってきっとそれを狙ってかけるわけで、その結果呪われた人たちはどんどんと死んでいって、一族は壊滅、その名字は永遠に失われる、っていう方がよくある話だと思うんです。それが今回はまったく正反対で、言ってみれば全く関係のない人間が怪奇に巻き込まれてしまっている。それってなんだか不可解だと思いませんか?
それで私は、できる限りこの事を詳しく調べてみることにしました。一度気になってしまったらこの事が頭から離れず、一体そこにどういうからくりがあるのか確かめたくて仕方がなくなってしまったわけです。
しかし、そう都合よく事が進むものではないことくらい、自分でもよく分かっています。そもそもサイトに投稿されたエピソードが嘘かもしれませんし、登録された名前も偽りのものかもしれません。たとえすべてが本当だったとしても、私個人で調べられることなど絶対的に限られています。ですので正直なところ、私自身も暇つぶしになればいいかなくらいの軽い気持ちでXXについて調べ始めたというのが実際の所でした。
最初は自分のサイト上でオリジナルの特集を組むことから始めました。これで少しでも注目が集まったら、本業の方にもなにか活かせるかもしれないと考えたからです。
投稿されたエピソードやインターネット上の情報、自らの考察結果をサイト上でコツコツと更新を続けていくうち、自分が思っていたよりもアクセス数が伸び、多くの方に注目していただけることとなりました。リームアロー編集部様から出版化のお声がけを頂いたのは、ちょうどそれくらいの時だったかと思います。
私自身、この事がまさか本になるなどとは思ってもいなかったので、編集部様からお声がけを頂いた時は現実だと信じられなかったですね。しかし編集部の方とお話を進めていくうち、これは夢ではなく本当の事なのだと理解することができました。
私個人が集めた情報は微々たるものではありますが、そこに編集部様のお力が加わることで、間違いなく真実の解明に向けて大きく前進することができるだろうと確信しています。
しかし同時に、私はご覧いただいている皆様に謝罪を行わなければなりません。書籍化の依頼を編集部様から頂き、私がその依頼に応じることを決めた時、私はサイト上の特集ページを予告なくすべて非公開にしてしまいました。更新をお楽しみにしていただいた皆様の事を、心からがっかりさせてしまったことと思います。私自身、書籍化にあたって最も悩んだ点はそこにありました。編集部様からはどうしても売り上げの都合でオリジナルサイトを非公開にしてほしいという依頼があり、何度も何度も協議を重ねたのですが、最後は私が判断を下すこととしたのです。
しかしそうすることとしたのには、はっきりとした理由があります。正直なところ、先に申し上げた通り私個人の力だけでは調査に限界があります。書籍化にあたり、編集部様のお力を借りることができるなら、私たちがつかめる真実はより大きなものとなり、より確かなものとなります。
編集部様のお力を借り、必ず皆様が納得できる真実を明らかにして見せますので、今後とも私の事を応援していただけますと嬉しく思います!よろしくお願いいたします!
【※注釈1】
私自身は伏字にするつもりはなかったのですが、編集部様との協議の結果、今回に関しては伏字で話を進めていくこととなりました。しかしこれでは何の意味もないため、いずれ必ず編集部様を説得し、該当の名字を公開して伏字なしで掲載を進めますことを、ここにお約束いたします。
言える範囲で説明するとすれば、決して珍しい名字ではありません。おそらく皆様もこれまでの人生で一度は出会ったことがある程度の珍しさだと思われます。あえて近しい例を挙げるとするなら、竹田、宮下、江口【※注釈2】程度の珍しさだとお考えください。
【※注釈2】
例に挙げた3つの名字が、XXではないことを暗示するものではありません。
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