投稿エピソード②

3回見たら死ぬ絵、って言われている絵の話を聞いたことがありますか?少なくとも都市伝説系のエピソードやオカルト系の話が好きな人であるなら、もう耳にたこができるほど聞いてきたことと思います。生首がイスか何かの上に置かれている絵や、巨大な目がこちらをのぞき込む絵、日本人形のような顔が不気味にほほ笑む絵など、例を挙げればきりがありません。でもそれらの絵についてちゃんと調べてみると、本当に死人が出たからそう言われ始めたわけじゃなくって、普通にイラストレーターさんや画家さんによって書き上げられた絵のうち、ただただ見た目が不気味だから面白半分でそう言われるようになっただけ、というのが実際の所ですよね。もちろん本当にその回数見たら死ぬ絵であるなら、そもそも表に出回ったりはしないわけで、僕らの目にとまる前に処分されるか封印されてしまうのが現実的なところでしょう。

さて、僕がこれからお話しする話はそういった見たら死ぬ系のものではなく、少し性質の違う話です。僕の実体験に基づく話をそのままお話するので、多少腑に落ちないところなどあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しく思います。




さて、ここまで偉そうなことを言ってきた僕ですが、実は無職のニートです(笑)。今年で32歳になるんですが、今でも食事や寝床は完全に親に甘えていて、まぁダメ人間だっていうのは自分でもよく分かっています。

ただ、そんな僕ですが最低限の収入はあるんです。無職なのにどうやって?って言われると思うので先に書くんですけど、僕実はインターネット上でスマホの修理を個人でやっているんです。ほら、スマホってぶっちゃけ昔のガラケーに比べてひ弱でしょう?画面がすぐ割れたりとか、バッテリーがすぐ痛んで持ちが悪くなったりとか。そういう修理をそこらのお店よりも格安で引き受けて、代金をもらっているんです。昔からコンピューター系は好きだったんで、修理の工程を覚えるのも部品の事を勉強するのもまったく苦じゃなかったし、なんなら楽しかったくらいでした。まぁもちろん、親に寄生しないとやっていけない程度の収入ですけどね…(笑)。

さて、そんな風にして僕はいろんな人のスマホの修理を請け負っているわけなんですが、それを行っている中でおかしな経験をすることがあったんですよ。


スマホを修理するとしたら、どこを治すにしてもとりあえず分解しないといけないですよね?先の例でいえば、割れた画面を治すには一度画面と本体を切り離してあげないと新しい画面と交換することはできないわけですし、痛んだバッテリーを治すにしても、その本体を開けないと中にあるバッテリーにアクセスすることはできません。センサーがおかしいから修正するときも、音量ボタンの接触が悪いから修正するときも、基本的には本体を開けないといけないわけです。

ゆえに僕は修理のたびにスマホを分解し、その中身をこの目で見ているわけです。そうすると、機種による細かな違いなどはありますがどれも同じスマホではあるのでおおよその中身は同じで、どこになにがあるか、どの部品が何の役割をするために組み込まれているのか、といったこと大まかなことは自然と理解できていくわけです。

そんな中で時折、正体不明のパーツが組み込まれているときがあるんです。とはいっても、全員にってわけじゃないですよ?体感で言うと10人に一人くらいかな…?一応僕はこれでも素人よりはスマホの部品には詳しいですし、それなりに多くのパーツの事を勉強してきているので、例え専門家ほど完璧に理解することはできていなくても、最低限このパーツはどんな役割をして何の目的で組み込まれているか、という事は分かるんです。

でも、そんな僕でも全く見当のつかない部品を見ることが、ままあるんです。まぁあってもなくても気づかないくらいの小さな部品ではあるんですけど、どこか妙な雰囲気を発しているというか…。しかもその部品は、他メーカーのスマホであっても全く同じ色形をしていて、配置されている場所まで全く同じ。気になってインターネットなどで調べてみても全く情報が出てこなくって、公開されている分解図にも記載されていませんでした。もちろんメーカーに問い合わせたこともありますよ?すると「そんなものはない、お前が勝手に入れたのだろう」と言われて一蹴されてしまいました。

なんの機種か気になる?うーん、詳しい機種名を出すとよくないと思うのでここでは伏せますが、まぁ日本でも一般に広く流通している機種ですよ。決してマイナーで珍しいような機種の話ではないです。

ただまぁ修理するにあたっては全く関係のないパーツですから、正直分からないままでもなんら困ることはないんです。でも、メーカーでさえ把握していないパーツだと聞いたら、そこに何があるのか気になるじゃないですか?

そこで僕は、そのパーツを専用の端子を通してリーダーでバイパスし、パソコン上でデータ処理を施してみることにしたんです。ええ?もちろん分かっていますよ?人のスマホのデータが入っているかもしれない基盤パーツを解析なんて、そんなことしてもいいのかってことですよね?

ただ、よく考えてみてください。このパーツはメーカーも把握していない、分解図にも記載のないパーツなんですよ?それならむしろその正体を明らかにする方が、持ち主のためだとは思いませんか?少なくとも僕はそう思いますよ??

…などと、多少強引な理由付けを行ったのち、僕はデータ解析に取り掛かりました。とは言っても正直、望み薄です。というのも、最近のスマホって詳細な個人情報を収納するのは当たり前、それに加えてクレジットカード情報や信用取引の記録まで入っていたりするでしょ?だからめちゃくちゃセキュリティーが固いんです。某有名スマートフォンのパスコードロックをFBIは最後まで解除できなかったって話がありますよね?僕たちの身近にありふれているスマホですが、そのセキュリティーは超大国の精鋭部隊をもってしても突破が非常に困難なのです。

それゆえ、僕がこのパーツの情報を読み取ることはまぁ無理だろう、そう思っていました。


僕が自分の目を疑ったのは、それから数分ほどしての事です。パソコン画面のソフト上に、あるメッセージが表示されました。


『解析に成功しました』


そのメッセージを見た時、僕は自分が信じられなかったですね。なんだかFBIをも超えたような気分を感じられて。まぁそんなことはないんですが(笑)。


さて、ここまで話したらそこに何があったのか気になりますよね?もちろん隠さずに

全てをお伝えしますよ。以下は解析されたデータの全文です。


―――――――――

あなたは 10675 回見ました

―――――――――


ええ、それだけですよ。がっかりしました?

僕が一番がっかりしましたよ。この不気味な部品にはどんな秘密が保管されているのかと思って期待して見たら、ただのカウンターだったわけです。まぁなにを数えるカウンターなのかは分からないですが、これくらいのものならわざわざ別パーツに組み込まずとも、メインの基盤に一緒に組み込めばいいものを、と思わずにはいられませんでしたね。


僕はそれ以降も、修理を請け負ったスマホの中にそのパーツを見たら必ず解析しているんですが、どれも全く同じ内容を示しました。回数は人によりけりでしたけれど、決まって全部がなにかのカウンターでした。

今回はもしかしたらなにか違うデータが入っているんじゃないか、と解析のたびに願っていましたが、結局今に至るまでそんなことは起こっていません。


起こっていませんが、この話には続きができたんです。

ある日の事、僕はいつものように修理を依頼された人から郵送されてきたスマホに目を通し、修理のプランを立てていました。

どうやら持ち主さんはこのスマホを高いとことから落としたかなにかしてしまったらしく、本体は原型こそとどめているものの、修理不可能なほどに破損してしまっていました。

であれば僕の手に負えるものではないのですが、依頼主さんからの依頼は本体の修理ではなく、本体の見た目だけそれなりに綺麗に整えてほしいというものだったんです。データの復旧などは求めない、と。

そう依頼を受けた時は不思議に思いましたね。見た目だけ綺麗に戻していったい何の意味があるのか、と。自分のスマホを綺麗にしたいのなら新しいものを買えばいいし、見た目だけ綺麗なものが欲しいなら中古物を買った方が良いと思うでしょう?

中のデータ基盤自体は綺麗だったので、専門のお店にもっていけばデータの吸出しくらいはできますよと伝えたんですが、それも必要ないと言われてしまい…。

でもまぁ代金も頂けるという事だったので、結局僕は引き受けることにしたわけです。見た目だけ綺麗にするなんてやったことがなかったのでいろいろと苦労しましたが、なんとか普通に見られるくらいには綺麗に状態を整えることができました。

…するとその時、中に例の部品があることに気づいたんです。正直、もうこの部品に対する興味も薄れてしまっていたのでスルーしようかとも思ったんですが、もしかしたら今回こそはという期待が心の中にまた沸き上がってしまい、結局僕はまた解析にかけてみることにしました。



…すると、それまでとは違うメッセージが画面上に表示されました。




―――――――――

あなたは もう見られません

―――――――――




見た時はえ?と思いました。ほら、人間って予想していたものと違うものを見せられたら固まってしまう修正があるでしょ?お店に物を買いに行った時、店員さんから想定外の質問をされた時とか。あの時の僕もそんな感じで、これは一体どういうことかと頭がフリーズしたのを覚えています。

そのメッセージが妙に気になった僕は、依頼主さんにメールで聞いてみることにしたんです。このスマホ、いったい何があったんですかって。返事は割とすぐに帰ってきたんですけど、その内容はかなりおどろきのものでした。


持ち主さん、交通事故で亡くなっていたらしいんです。


横断歩道を歩いているとき、前方不注意の車にひかれて即死してしまったのだと、ご家族が話をしてくれました。このスマホはその時の衝撃で破損し、ひどい状態になってしまったわけです。つまり、本当に僕に依頼してきたのは持ち主のお母さんだったわけです。

スマホを綺麗な状態にしてほしいと依頼したのは、これは大切な遺品だからと。このまま残しておきたいからだと。だから別のものではだめだったんですね。もちろん僕は修理を綺麗に行い、懇切丁寧に梱包を施してお母さんの所にお送りしました。


でもその時、僕の脳裏にある可能性が思い浮かんだんです。あのカウンター、結局何をカウントしているのかは今もなお分からないままですけど、もしかしたら3回見たら死ぬ絵のように、決められた回数を超えてしまうと持ち主が死んでしまうんじゃないか、というものだったんじゃないかって。

もしも本当にそうなら、あのカウンターが数えている物は一体何なんでしょう?なにかを調べた回数?写真を撮った回数?いろいろなことが考えられますが、それも結局分からないままです…。


とまぁ、そんな不思議な経験をしたのでここに書かせていただきました。無職ニートの戯言にここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。




――――――――――――


投稿者名:XX翔太

性別:男性

年齢:32

郵便番号:510-0○○○

住所:三重県津市○○○○


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