XXという名字の人にお気を付けください

大舟

投稿エピソード①

今からお話しするのはすべて、実話です。

これは私が体験したというよりは、私の周囲の人が体験した話なのですが、私もその現場に一緒に立ち会っていましたので、私も当事者であるといってもいいと思い、こうして話を投稿させていただくことにしました。


私は今、県内の大学に通う大学生をしています。今年で4年生になり、いよいよ就活が始まるという大事な時期になります。入学した時は初めての1人暮らしが始まるという事もあり、また中学や高校からなじみの友人で同じ大学に行く人が誰もいなかったので、非常に不安だったことを覚えているのですが、サークル活動やゼミでの交流を経て、多くの友人を作ることができ、非常に楽しい学生生活を送ることができました。でも彼氏はできなかったのでそこだけが心残りかも…(笑)

そんなある日の事、当時私は大学2年生だったのですが、所属していたサークルで飲み会を開くことになったんです。とはいっても、別に誰かがやめるから送別会の意味を込めてとか、新しい人が入るから歓迎会を開くみたいに目的があってやるものじゃなくて、ただただ話のノリのままに開くことになった飲み会だったんです。あのサークルはどちらかというと真面目な人たちが多く集まるサークルで、あんまり飲み会を開くようなタイミングもなかったので、サークルのメンバーは飲み会を盛り上げようと必死に事前準備を行っていて、気合の入れようがまるで違っていましたね。

けれど、正直私はあんまり乗り気ではなかったんです。というのも、私あの時メインで参加しているサークルが他にあって、あのサークルではあんまり活動していなかったんですよね。参加することにしたのも、当時先輩だった人に勧められる形で半ば強引に入れられたような感じだったし…。そんな幽霊部員な私が参加しても、なんだかお互いに気まずいだけじゃないですか。だから最初は参加を断ってたんです。でも部長さんから絶対参加して!としつこく誘われ続けて、結局参加することにしたのです…。


飲み会の会場はよくある大衆居酒屋で、参加したのは15人くらいだったかと思います。最初は参加を渋っていた私だったんですけど、いざ飲み会が始まってみれば非常に楽しい時間を送ることができて、何度も声をかけてくれた部長さんに心から感謝したことを覚えています。あんまり接点がない学生どうしても、共通の授業やゼミを受けていればそれなりに話は弾むもので、お酒の力もあって飲み会は大いに盛り上がっていきましたね。

楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、18時から始まった飲み会は気づけば19時、20時、21時と進んでいって、みんなベロベロに酔っぱらっていました。

事件が起きたのはその時でした。みんなのスマホが一斉に震えだして、同じ通知を画面上に示したんです。

そこにはメッセージアプリの通知が表示されていて、確かこんな内容だったかと思います。


――――

差出人:なし

内容:あなたは気づいていましたか?

――――


たったそれだけの内容なんですけど、それがみんなのスマホに、それも同時に送られてきたんです。

でも、私のスマホにだけはその通知が来てなくて、なんだか私にはそれも不気味に感じられて嫌な気持ちでした…。

だって、普通に考えておかしいじゃないですか?みんな同じサークルに所属はしていますけど、一斉に連絡を送るなんて今時グループLINEくらいしかありません。メッセージの一斉送信をするにしても、差出人は不明っていうのが理解できません。もしも、もしも誰かがいたずらでこんなことをやったのだとしても、私にだけ来ていないっていうのもなんだか気持ちが悪くて…。

迷惑メールだったらこういう内容のメッセージも来たりするかもしれませんけど、それにしては誘導リンクも張られてないし画像もないし、一体なにがしたいのか分からないですよね?

そのメッセージの事を見た途端、私はそれまでの楽しかった思いが一変して、全くこの状況を楽しめなくなってしまったんです。

でも、周りを見回してみるとみんなはそうではなくて、あんまり不気味には思っていなかったみたいなんです。お酒が入っていたからかもしれないんですけど、なんだかこのメッセージを面白がっているような事を言い始めたりして…。

そんな時、ある人がこう言ったんです。みんなに一斉に送られてきたんだから、みんなで一斉に返事をしたらどうかって…。

私はなんだか酔いもさめてしまっていたので、絶対にやめておいた方がいいって何度も何度も言ったんですけど、全く聞きいれてもらえなくて、結局みんなそれぞれの言葉を返信してしまったみたいなんです…。

もちろん、示し合わせて返事を送ったわけではないので、それぞれが返した言葉はバラバラでした。うるさいって返す人もいたし、誰ですか?って返す人もいたし、気づいてませんでしたって返す人もいました。本当にバラバラでしたね。

でもそんな中で、私の言葉を聞いて返信しないでくれた人が二人、いました。どちらも女の子で、私と同じようにこのメッセージを不気味に思ってくれた人たちでした。彼女たち二人はメッセージをすぐに消去して、何の言葉も返信しませんでした。そして私たちは、こうするのが絶対正解なのになんで男の子たちは面白がって返事をしちゃうんだろうって言いあって、同じ思いを抱く仲間がいたことにほっとしていました。

みんなが一斉に返事をしても、結局それから何か起こったりすることはありませんでした。向こうからさらに返事が来ることもなかったですし、同じ内容のメッセージがもう一度送られてくることもありませんでした。ただただ一斉に、一度だけ、向こうからメッセージが送られてきただけだったんです。

なんだ、何にも起こらないじゃないか、面白くないなぁってみんなは笑いあっていて、ひとまずその一件は誰かのいたずらか何かだったんだろうって事で決着したんです。

飲み会はその後も再開されましたけど、私はなんだかそれまでみたいに素直に飲み会を楽しむことができないでいました。嫌な予感…とした言いようがないんですけど、心の中にそんな思いを感じていたんです。もちろん、これが本当に誰かのいたずらで、誰が不幸になることもなく終わってくれるならそれに越したことはないのですが、現実はそうはいかなかったんです…。


その飲み会からしばらくして、私はもう完全にそのサークルから距離を置いてしまっていました。あの飲み会のことがあったっていうのもあるんですけど、私自身3年生に進級していよいよ卒業の準備に向けて忙しくなる時だったし、あまりあのサークルに参加する意義を感じていなかったからですかね。

そんな時の事です。人伝いに、あのサークルのメンバーが次々に事故にあっているって話を聞いたんです。

もちろん、普通に生活していて事故にあうことだってありますし、ただの偶然じゃないかって最初は思いました。でも、話を聞いていくと偶然では済まされない共通点があることに気づいたのです。

まず、あのサークルの当時のメンバー数は25人でした。その中からあの日の飲み会に参加したのが15人だったわけですが、その内の11人があれ以降に同じような事故にあっていたんです。飲み会に参加していなかった人は誰も事故にあったりしていないのに、参加した人のほとんどが事故にあってるって、ちょっと偶然とは思えないんですよね…。

そしてさらに、事故には不気味な共通点がありました。事故にあった人はみんな、飲酒運転の車にひかれていたんです。…なんだか怖くないですか?そこにつながりがあるなんて考えたくないですけど、あの時お酒に酔ってメッセージに返信した人たちが、そろってお酒を飲んだドライバーにひかれていたんです。その話を聞いた時、私本当に吐きそうになったことを覚えています…。

でも幸いなことに、その中で死んでしまった人は誰一人いませんでした。みんな急所は避けて車と接触していたみたいで、重症になることもなくそのままスムーズに退院までできたそうなんです。

この話がここで終わっていたなら、お酒におぼれた人間に神様が軽く罰を与えたんだって話にできたかもしれません。お酒を飲むのはほどほどにってあれほど言われているのに、まともな判断ができなくなるまで飲んでしまったあの時のメンバーに神様が警笛を鳴らしてくれたんだと、多少強引ですけど自分を納得させることができたかもしれません。でも、この話にはとんでもない結末がまっていたんです…。

あの時、メッセージに返事をしなかった女の子の事を覚えていますか?迷惑メールに違いないから削除が正解だって話をしていた、あの二人です。

…その子たちは、あれから間もなく死んでいたことが分かったんです。しかも、その死に方というのが非常にむごたらしくて…。


当時新聞にも載って、地元のニュース番組でも取り上げられたことなので、特定されないように少しぼやかして言うんですが、あの二人はその日、一緒に買い物に行っていたらしいんです。お互いが買いたいものを買って、併設の映画に行って映画も見ていたのかもしれません。きっと、楽しい楽しい一日だったんだと思います。そしてその帰り、二人はバスで帰ることにしたようなんです。別に見知らぬバスでも、始めていく路線でもないんですよ?大学に通う時だって何度も何度も乗っている慣れ親しんだバスなんですよ?

それなのに、二人はバス停の停留所から大きく身を乗り出して、まるで自殺志願者のような行動をとっていたらしいんです…。モザイク付きでバスの前方カメラの映像が公開されていたんですが、確かに二人が意思をもって飛び込んできているようにしか思えないものでした…。

二人はそのままバスに接触して傷を負い、傷口から少しずつ血液が流れ出てその場を赤く染めていったそうです。

でも、バス停に侵入するときのバスって低速ですよね?衝突してもよほど当たり所が悪くなければすぐに絶命することはないと思いませんか?

現に二人とも、それからしばらくは意識もあって存命だったらしいのです。…でもどういうわけか、当時のバスの運転手は二人のことを気にすることもなく、乗客の乗降を行ったのちにそのまま走り去っていってしまったんです。

その時、すぐに手当てをしてあげていれば二人は助かったかもしれないのに…。二人はその体にものすごい痛みを最後まで感じたまま、ゆっくりゆっくりと死んでいったのです…。せめて一瞬のうちに死ねるのならともかく、そんな死に方って本当に残酷だと思いませんか?


当時メディアを騒がせていたのはまさにその部分で、テレビのニュース番組のコメンテーターや新聞、雑誌などはこぞってバスの運転手の事をこれでもかと非難しました。そしてそれにつられるように、多くの関係ない人達もまた運転手の事をSNSなどで攻撃し始めて、それはもう過剰といえるほどでした…。

運転手はもちろんひき逃げで捕まることになったのですが、それからしばらくして拘置所内で死亡しているところを発見されたそうです。…その場から逃げ出した自分が悪いとはいえ、自分に対する批判の声があまりにも多かったことを苦にして自殺したといわれています…。


けれど、私が恐怖を感じたのはその点にではないのです。というのも、自動車事故が起こった時には運転手の名前と年齢、場合によっては職業や経歴までもが報道されますよね?その時も例外ではなくて、バスの運転手の名前と詳細が報道されたんですが…。その名前が、あのサークルの部長の名前だったのです…。

もちろん、最初は同姓同名じゃないかって思いました。でも彼の経歴がアナウンサーの口から語られた時、それはこの日本にたった一人しかいない彼の経歴そのものだったんです。彼はあの一件の後、なぜかすぐに大学を辞めてしまったそうなんです。そしてしばらくバイトを転々とした後、バス会社に入ってバスの運転手になったんだそうです。会社の同僚の人がメディアのインタビューに答えてましたけど、本当にまじめな人柄で、ひき逃げをするような人じゃないって言っていたのが印象的でした。




そして、この事は後から知ったんですが、実はあの時部長もあのメッセージに返信をしていなかったらしいんです…。つまり、あのメッセージに何らかの返事をした人はみんな事故でけがをおって、何の返事もしなかった人が不審な死を遂げているんです。一体どうしてこんなことになったのか、今も全く理由が分かりません…。

もしもあれが呪いのメッセージかなにかだったとして、なんと返事をするのが正解だったのでしょう?返事をしなかった3人の全員が不審な死を遂げてしまったところを見ると、何も返事をせずにスルーするのが一番許されないということなんでしょうか?それともメッセージが送られてきた時点でもうダメなんでしょうか?

あの時、私にはメッセージが送られてきませんでした。ということは、私にはこれから送られてくるのでしょうか?もしも送られてきたらどうすればいいのか、いまだに分からないままです。



今後、いつ何に巻き込まれるかもわからないので、こうして経験談を投稿させていただくことといたしました。最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。



――――――――――――


投稿者名:XX理香

性別:女性

年齢:22

郵便番号:330-0○○○

住所:埼玉県さいたま市○○○○○○


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