第6話 苑立蒼の心
俺(苑立蒼)は幼い頃からどこへ行っても整った顔立ちを褒められ人生イージーモードで生きていく予定だった。だが小学2年生にして余命宣告をされた。初めは軽い息切れや、呼吸困難だった。違和感に気付いて病院に行った頃には手遅れだった。
「心臓の機能がこれから徐々に下がっていくでしょう。高校を卒業出来るか危うい状況です」
医者にはそう告げられた。両親は泣いていて、俺だけ違う世界に取り残された気分だった。月に一度の定期検診に、薬代。両親は必死に働いて俺を支えてくれた。そんな俺も周囲に気付かれないように今まで通り過ごすことにした。そんな日々が続いていくと思っていた。でも俺が中学に上がると同時に両親は事故で亡くなった。スーパーの帰りに横断歩道を渡っている時飲酒運転をした車に突っ込まれたそうだ。俺が定期検診の日は三人で俺の好きな母の手料理を食べるというのがお決まりだった。その日は定期検診の日で父と母は俺が食べたいと言ったオムライスの材料を買いに行った帰りに事故にあったらしい。
(俺が病気になんてなるから。二人は必死に働いて自分の時間を削ってでも俺の為にそばにいてくれたのに。俺のせいで事故にあったのか?なんでこんなことになるんだよ、俺何か悪いことしたかな、、)そんなことを考えては時間だけが過ぎていく日々を送った。両親は生命保険に加盟していた為治療費が払えなくなるという事は無かった。高校は中学の友人が多く行く学校を選んだ。俺は高校を卒業出来ないってことを自分でよく分かっていた。だから周りの友達には予めそのことを高校に入ると同時に伝えた。みんな
「そんなの嫌だ。死んでほしくない。それまででも一緒にいたい」
そう言ってくれた。その言葉は俺にとって嬉しくもあったが縛られている感じもした。物心着く前に余命宣告をされたんだ。死ぬことに対して恐怖はない。俺らしい生き方をして命を絶とうとした。そう思って体が言う事を聞かなくなってきたあたりで決心した。場所はどこでも良かった。何となく高校の屋上に行ってみたくなって屋上から飛び降りようと思った。靴を脱いでフェンスを乗り越え空の向こう側を見た。風が気持ちよく後ろから吹いていた。一歩踏み出した時屋上にもう一人居ることに気付いた。そいつは俺をじっと見つめて何も言ってこない。不思議に思って
「なんで止めないの?俺はあと一歩であの世なんだよ、」
そんな事を口走っていた。
「私は貴方となんの関係も自殺を止める理由も無い。それに私は自殺が悪いことだとは思わない。」
予想外の返事が返ってきた。みんな
「死なないで」
そう言うのに、はじめて俺を分かってくれる人に出逢えた気がした。あと少しの命。その間だけでも近くにいたいと思える人だった。
だから気づいた頃には
「付き合って」
なんて言葉を口にしていた。
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