第4話 理由が知りたい

今朝は優菜と一緒に登校する約束だ。最近は帰りも別々だっためものすごく楽しみだ。玄関を開けると優菜が笑顔で待っていた。

「おはよう!今日もあっついね〜」

「おはよう。今日は玲くんは良かっの?」

気になってしまいつい聞いてしまう、

「今日は美鈴の日なの!」

そんな一言を言われて少し期待してしまう自分がいる。優菜とおしゃべりしながらの登校は、あっという間だ。もっと学校が遠ければなんて、今までに20回は思っている。学校に着くと

「玲くんにおはようしてくる」

と言い残して、優菜は行ってしまった。最近は休み時間も一人でいることが増えた。別に寂しいというわけではないがつまらない。ふと窓の外に目をやると男子が10数人ほどグラウンドでサッカーをしている姿があった。その中心で走っている美青年には見覚えがあった。苑立?楽しそうに友達とサッカーをする姿は屋上で見せる姿とは違って活気に満ちていた。(あんなにもたくさんの友達がいるんだ)

「いいな」言葉が溢れでた。

昼休み、今日もぼっちで屋上に続く階段を登っている。屋上の扉を開けると、蒸し暑い風が吹いて来た。(屋上で会う必要ある?)なんて思いながら辺りを見渡したが、苑立の姿がない。いつもは先にいるのに、

結局昼休みの終わりを告げるチャイムがなっても姿を見せなかった。(自分から言っといて来ないなんて、今朝サッカーをする姿を見たから学校には居るはずなのに、)明日にはやって来るだろうと思ってその日は屋上を後にした。

それから1週間苑立は屋上にはやって来なかった。心配になって1年1組のクラスを何度か見に行ったが姿は無かった。(一応彼女のはずなのに。)連絡先も知らない為成すすべなく帰ろうと下駄箱に向かっている最中後ろから、

「先輩、今時間ありますか?」聞き慣れた声だ、振り向かなくとも誰の声かわかる。

「いいよ。どうせなら屋上にいく?」

  いつもは一人で登っている屋上に続く階段。今日は二人分の足音が響いている。前を歩く苑立の肩幅は広く、不意に意識してしまった。扉を開けると赤みがかかった空が広がっていた。この時間になるとさほど暑くない。むしろ心地良い位だ。苑立はこちらを向かずフェンスの向こう側を見ている。何も言ってこない。そのまま10分ほどたった。烏が遠くで鳴いている。話しかけようか迷っていると

「先輩、俺死ぬんだ。」

(また、飛び降りる気にでもなったのだろうか)

「何?飛び降りる姿でも見てて欲し」そんな私の言葉を遮るように

「俺、病気なんだ。来年にはこの世にいないんだってさ。まぁ、あと4、5ケ月位ってとこ」

何を言っているのか意味が分からなかった。でも苑立の声が少し震えていたことに気付いて、嘘ではないことが伝わって来た。

「先輩と初めて会った日さ、俺このまま弱っていく位なら今死のうかなって考えてたんだ。生きることを諦めた瞬間的な奴?それで良し飛ぼうと思った矢先、先輩がきた。そんでさ先輩見たらこの世の終わり見たいな顔してんの。それでさこの人、俺と似てんのかなって思った。けど先輩死のうとしてる俺に向かってどうでも良いとか関係ないとか言ってきてさ。なんだコイツ、ってなって興味を持ったんだよね、」

そこまで聞いて、何を言えば良いのか分からない。ただ一人で多くのことを抱えていたことは分かった。

「ねぇ先輩。あと1週間で夏休みでしょ?毎週俺と遊んでよ。二人で色んなところ行って夏休みenjoyしない?」

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