恋人は妖怪! 選び放題!

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

「ふふふ」


 探偵事務所兼超常現象解決所を営む黒沢影夫は笑いをこらえ切れなかった。


「わはははははは」

「どうしたの? あなた。何がおもしろいの?」

「喜べ、操! もう貧乏とはおさらばや! もう内職なんてしなくてええぞ」

「どういうこと?」

「ビジネスチャンスや! 儲けるアイディアが浮かんだんや」


 黒沢は人間と妖怪のマッチングサイトを立ち上げた。イケメン妖怪とのマッチングが出来る、イケメン妖怪を選びたい放題! ということで、スグに登録者は増えていった。


「ぬりかべがかわいそうだったからなぁ、真っ先に登録させたで」

「それで? ぬりかべさんを気に入った女性はいるの?」

「まだや、しゃあない、だって壁やもん。マッチングするまで時間がかかるかもしれへんな」

「マッチングしてるの?」

「ああ、カラス天狗がマッチングした。カラス天狗を“かっこいい!”っていう女性がいたんや。意外やけど、このサイトでマッチング出来ることは証明されたで」

「あら、それは素敵ね」


 ピンポーン!


「あら、お客様よ」

「誰やろ?」


「……」

「どうしたんだ?」

「こっちが聞きたい、どうしたんや?」

「相談に来たんだ」

「お前、豆腐小僧やろ? なんやねん?」

「何人もアタックしているのに、会うことも出来ずに断られるんだ」

「えーっと、お前のプロフィールは……職業、豆腐を運ぶこと……これじゃあ、無理やろ、もっと何か考えろや、年収の所も空欄になってるやんけ。お前、金は無いんか? こういうところは大事やぞ」

「小判なら沢山あるんだ。江戸時代くらいから生きているから」

「そういうことを書いたらどうや? いや、資金があるなら商売を始めたらどないや? 豆腐料理の専門店を経営するとか」

「それはいい考えだ、やってみる」


「どうした? 暗い顔して。豆腐料理専門店は繁盛してるんやろ?」

「うん、それで相談に来たんだ」

「なんやねん」

「年収2千万になったんだ」

「すげーな!」

「プロフィールに、飲食店経営、年収2千万円って書いたんだ」

「ええ感じやんか」

「そしたら、沢山の女性からアプローチされたんだ」

「それで、なんで相談に来るんだ?」

「明らかにお金が目的の女性だと思うんだ」

「ええやんか、お金も魅力の1つやで」

「これって、本当の愛じゃないと思うんだ」

「ほな、どないしたいねん?」

「お金じゃなくて、本当の愛情がほしいんだ」

「ほな、プロフィールを元に戻したら? お前、顔は結構いい感じやし、待ってたら今のお前を好きになる女性もいつか現れるやろ」

「本当か?」

「ああ、プロフィールを戻して様子を見ろ」


 ピンポーン!


「また誰か来たわよ-!」

「誰や? 誰や?」

「ぬりかべー!」

「なんやねん、ぬりかべやんか、マッチング出来なくて相談か?」

「彼女が出来た。だから挨拶に来た」

「えー! 壁に? 壁に彼女?」

「渚です、今、幸せです」

「壁と付き合ってもええの?」

「私、大工なんです。壁を作るのが好きで、ぬりかべさんって理想の壁なんです」

「まあ、幸せやったらええんとちゃう? おい、豆腐小僧、壁でもマッチング出来るんやから、きっとお前もマッチング出来るで、頑張れ!」

「わかった、頑張る!」


「っていうか、最近の来客、妖怪ばっかりやねんけど」







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恋人は妖怪! 選び放題! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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