171.私の味方でしょう? ***SIDE王妃
ケンプフェルト公爵から届いた手紙をじっくり読み、宰相である兄に手渡す。驚いた顔でさっと目を通し、深呼吸した彼はゆっくり読み直した。
「わかった? 陛下ではもう無理なの」
「承知、いたしました……王妃殿下。事前の打ち合わせ通りに差配いたします」
差配は、権限の範囲内で仕事の割り振りを行うこと。宰相として与えられた権限だけでなく、ケンプフェルト公爵が持つ「王権代理人」も含まれる。
本当にバカな夫だわ。王権を代理する権利を与えるのは、公爵にこの国を譲るのと同じよ。おそらく署名が必要で回ってくる書類を裁くのが面倒になり、公爵一人で処理できるよう与えたのね。その意味を深く考えることもなく。
今回の騒動が起きるまで、私は王権代理人という呆れる名称を知らなかった。誰が聞いても王位が譲渡されたと受け取るわ。それを、血の繋がりもある公爵に渡す? 歴史あるケンプフェルト公爵家が、王を名乗れるほど大きな権力なのに。いっそ譲位する方がマシだった。
ほとほと愛想が尽きたわ。先代王は思惑が外れることでしょう。でも、私やケンプフェルト公爵を賢く育てたのは、先代王自身よ。すべてにおいて素質がなく能力不足の息子を補うため、私達に必要以上の権力と能力を与えた。犠牲にされた被害者が反旗を翻すのは、当然の権利だわ。
「……王を愛してはいない、のか?」
「愛せると思うの? 息子は放置し、娘に構いすぎて未来を潰すような男よ。仕事はしないし、できない。権力を振り翳して他者を傷つける。必死で隠していたみたいだけど、浮気も知っているわ」
「っ! 知って?」
「ええ、隠すのが上手だと思ったら、フェアリーガー侯爵家が絡んでいたのね」
ケンプフェルト公爵の人脈と権力、伝手を最大に利用させてもらった。王宮内にいては気付けない、平民との浮気。貴族では噂になるからと、わざわざ平民の未亡人を選んだ。それを隠した手段まで、すべて
「責任は取る」
覚悟はあると言い切った兄は、父に逆らえない。ずっとそう。気弱で大人しくて、でも私を愛してくれた。勉強ばかりの私に「一緒に遊ぼう」と手を差し伸べたのは、兄だけ。私を誘うと叱られるのは、兄なのにね。
「責任は取ってもらうわよ、フェアリーガー侯爵に、ね」
まだ嫡子でしかない、あなたではないの。それに、まだ若く未熟な息子を導くのに、有能な宰相は絶対に必要よ。だって、ケンプフェルト公爵は新婚だもの。
様々な理由を並べて、最後に妹らしい本音を口にする。
「お兄様は私の味方でしょう? 今までも、これからも……信じているわ」
きゅっと眉根を寄せて、ほろほろと涙を溢す。ほんと、私がいないとダメなんだから。仕方のないお兄様ね。取り出したハンカチで、兄の目元を拭った。
私の周りには情けない男ばかり。早くアマーリア夫人に会いたいわ。
*********************
新年、あけましておめでとうございます(o´-ω-)o)ペコッ
今年もよろしくお願いします。
きっと大量の書籍化やコミカライズが重なり忙しすぎるから、本業をセーブする一年に……・:*:・(*´▽`*)うっとり・:*:・夢見るのは自由です。アニメ化もしたいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます