23時54分に反逆のプレリュードを掲げろ
白雪れもん
第1話 永遠の23時54分
夜が深まり、時計の針が静かに23時54分を指した。その瞬間、勅使河原阿須間の世界は変わった。
阿須間は子供の頃から特別な存在だった。彼の家族は代々「時守師」として、世界の時間を正しく保つために活動していた。時守師の役目は、時間の狭間に潜む「鎌鼬」と呼ばれる存在を駆除し、時の乱れを防ぐことだった。しかし、その仕事は決して人々に知られることなく、誰にも感謝されることはない。それでも阿須間は幼い頃から父親の背中を見て、自分もその役目を果たすべきだと信じてきた。
だが、その信念は次第に揺らいでいった。毎日、誰にも気づかれないまま、黙々と鎌鼬を狩り続ける生活。成長するにつれて、その行為に意味を見出せなくなっていった。時守師としての使命感が薄れる中で、阿須間は心の中に疑問を抱き始めた。「なぜ、自分はこんなことを続けなければならないのか?」と。
ある夜、阿須間はついに決意する。時守師をやめると父親に告げたのだ。父であり、偉大な時守師である勅使河原守一は、その知らせを聞いて激怒した。
「阿須間、お前は何を言っているんだ!お前には時守師としての血が流れている。それを放棄するなど許されることではない!」
守一の怒りは凄まじかった。彼にとって、時守師の役目は生涯をかけて果たすべき神聖なものであり、何よりも重要なものだった。しかし、阿須間にとっては、それが重荷となり、未来を閉ざす鎖となっていた。
「父さん、もう限界なんだ。誰にも知られない、何の意味も感じられない仕事を続けるのは無理だよ。僕は普通の人生を送りたいんだ。」
阿須間の声には決意が込められていた。しかし、その言葉が守一の心に届くことはなかった。守一は無言のまま阿須間を見つめ、やがて冷たく静かな声で告げた。
「お前にはまだ、時守師の本当の意味がわかっていない。」
その瞬間、阿須間の周囲の景色が歪み始めた。気づいた時には、彼は見知らぬ場所に立っていた。空には月が浮かび、時計の針は23時54分を指したまま止まっていた。
「ここは…?」
阿須間は周囲を見渡したが、どこを見ても23時54分の世界から抜け出せない。時間は止まり、永遠に続く夜が彼を取り囲んでいた。そして、その夜の静寂の中から、どこかで聞いたことのある音が響いてきた。それは鎌鼬の気配だった。
「父さん、こんなことを…!」
守一は息子を23時54分という時の狭間に閉じ込めたのだ。反抗心に燃えた阿須間は、ここから抜け出す方法を考え始めた。だが、その方法はただ一つしかない。それは、鎌鼬と手を組み、父親に復讐を果たすことだった。
阿須間は鎌鼬に呼びかけ、彼らと取引を持ちかけた。
「俺と協力してくれ。勅使河原家を壊し、この永遠の23時54分から抜け出すために。」
鎌鼬たちは阿須間の提案に興味を示し、彼との取引を受け入れた。彼らは阿須間に力を貸し、彼が望む反逆を手助けすることを約束した。
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