不死 7
どこから風が吹いているのか分からないが、流れるような金の巻き髪を優雅に
3人は突然の訪問者を三者三様の表情で見つめるが、示し合わせたかのように同時に視線を切り会話を再開させた。
「魂の……何だっけ?」
佐久間は足を組み直し、馨の方へ顔を向ける。馨のはるか後方に金髪女の立ち姿が見えたので、目だけをアヤに向け口を開く。
「魂とは何に宿るのか。ひいては、魂とはどこから生まれて、何処へ行くのか……」
佐久間の問いを受けてアヤが答える。
「悪魔が魂について分からないとはね……君たちの主食だろうに」
馨はこう言った会話が面倒な
馨の思考は、もう今晩の夕食の献立に移行していた。
「食べているわけではないからなあ……よく分からんモノをガソリンとして活用している、というのが正直なところだ。大妖怪、お前は魂の詳細が分かるのか? であれば是非とも教えてもらいたい」
( 「ちょっと……」 )
「ふん……悪魔よ、君は何か勘違いをしているね。ワシが賢そうなのは、この話し方のせいだよ。実際は大して賢くないんだ。ワシが知るわけがない」
( 「ねえ……」 )
「ああ、そうだった大妖怪。お前は大して賢くないのだったな。お前の話し方はいつも俺を惑わせる。だが、何故かな? 俺は思うのだ、お前が敢えて知性を放棄しているのではないかとね」
( 「ねえったら!」 )
「買い被りすぎさ。ワシなどより、よほど馨の方が賢い子だよ……多分」
「おい、そこは自信もって言えよ」
「ちょっと! いい加減にしなさい!
会話の合間、合間に入ってくる女の声に気づいていなかったわけではない。3人は無視を決め込んでいたのだが、テーブルの上に乗って叫ばれては仕方がなかった。
三者三様の非常に面倒くさそうな顔が女を見る。
注目を集めた女は満足そうにし、そして佐久間を指さす。
「貴方たち、騙されてはいけませんわ、この男は悪魔でしてよ!」
テーブルの上に立つ女のワンピースは丈が短く、馨は目のやり場に困る。アヤは普通に覗き込んでいた。
「あー……佐久間、知り合い?」
女の足の間から顔を覗かせた佐久間は気怠そうに、そして諦めたように答える。
「マデリーン・グレゴリー、鉄の魔女の異名を持つフリーの退魔師だ……何故かは分らんがな、執拗に俺を狙っている」
佐久間と馨を交互に見るマデリーンは、途端に何かに気づいたような顔をした。
「まさか……この男は悪魔の手下? ハッ!
馨は、とりあえず見えそうなのでテーブルから降りて欲しいと思いながら、「どうも」と頭を下げる。
「見ての通りの馬鹿だ。だが腕は良い」
佐久間に視線を戻すマデリーンは表情を引き締め、戦いの構えを取る。
「お馬鹿さんは貴方でしてよ、悪魔。私を異界に引き込んで、どうにかしようと思ったのでしょうが、そうは行きませんことよ!」
ああ、この人は馬鹿なんだなと馨は確信する。
佐久間は深く座り、足を組んだままマデリーンを手で制す。
「マデリーン、一つ確認なんだがな……」
「何ですの?」
「ここのルールを知っているか?」
「悪魔の決めたルールなど知らなくてよ」
食い気味のマデリーンを相手にし、佐久間にしては珍しく非常に面倒そうな顔になる。
疲れたように息を吐き、いつもの陰気さよりは少し声を上げ、佐久間は言った。
「違う、違うぞ、マデリーン。悪魔のルールでは……」
「問答無用ですわ!『T・B・O・E』74頁<緊縛の鎖>!!」
佐久間を遮り、マデリーンは何らかの術を使用した。彼女の手に「本」が現れ、ページが開かれる。そして彼女の足元に魔法陣が輝きを放ちながら出現した。
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