第2話 不死
不死 1 後日譚そして次なるプロローグ
埼玉県の水穂市にある
僕は今、この病院にいる。
僕の体は意外と丈夫だったようで、検査の結果、内臓に損傷はなく、切傷などの外傷も化膿せず、ほぼ回復しているとのことだった。
ただ、それでも体力の消耗が激しく、あと1週間ほどの入院となるらしい。
初日、二日目の僕は、漫画で見るような全身包帯ぐるぐる巻き男だった。
最初、医師の所見では、回復には長い時間を要するだろうし、後遺症もあるだろうと言われていたそう。
それがたった二日で、動けるまでに回復するなんて、驚きの回復力だ。
というか、異常だ。
正常じゃないことは、僕にだって分かっている。
例えば、過去に包丁で指を切ったとき、転んで膝を擦りむいたとき……治る時間は人並み程度の速度で、特別回復が早いなんてことはなかった。
多分、未だ包帯でぐるぐる巻きの右腕に原因があるんだろうと思う。
包帯の下には、黒い2本の線が螺旋状に交叉した痣があって、漆原先生という怪異の専門家が用意した御札が貼られている。
「何とも厨二心をくすぐる状態ね」とは、睦さん談。
この回復力や、厨二心をくすぐる右腕の包帯や御札を受け入れる下地が、この病院にはあるらしい。
道理で僕の入院している建物は別棟で、患者が僕1人なわけだ。
この病院は漆原先生の息がかかっているのだ。
あの大学教授は本当に謎な人だ。
漆原先生は魔王ルシファーに違いない。
などと睦さんに冗談を言えることが出来るくらいには回復しているのだ。
そう、睦さんといえば、彼女から
大学の教務課の職員さんで、半年前から行方不明になっていて、捜索願も出されていたらしい。……そして彼女の遺体は、廃工場の敷地内で発見された。
彼女は、睦さん曰く、土地神の力を借りて「正しく眠りについた」らしい。
それだけが、僕にとって救いだった。
未熟な僕が出来なかったことを花守さまはやってくれたのだ。
後日、お礼に行かなければと思うが、気が引ける。
でも、葵さんの形見の本と「言葉」を届けてくれたのも彼だ。
実際に届けてくれたのはアヤちゃんだったけど。
そう言えば、馨くんとアヤちゃんは頻繁に会いに来てくれる。
友達の少ない僕にとっては、とてもありがたいことだ。
ここに来て、2人は色々な話を聞かせてくれる。
古本屋に居候している2人には、色々な問題が舞い込むらしい。
その一つが僕らしいのだけれども……。
これから話すことも、2人から聞いた話だ。
多少は僕の想像で補っているところもあるけど、概ねあっていると思う。
優しい気持ちで聞いてもらいたい。
それは、4月の雨が降る日の午後だった……。
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