選択




 ピッ…… ピッ…… ピッ……


電子音が聞こえる。俺はゆっくりと目を開ける。

目を開けると、真っ白な天井と点滴が見えた。


「ここ……は……?」


祭りの時とは比べ物にならないくらい低い声にひどく驚いた。

すると、横からさっきの聞き馴染みのある声が聞こえる。


「な……燕翔なりとが起きた!!!!うわっ、まじか!?ちょ、え、どうしよ。とりあえず先生ぇ~!!!」


大輝だいき……な、何がどうなってんの……?」

……大輝だいきって、俺、何でこいつの名前知ってるんだ…?


「あ、わりぃわりぃ!そりゃこんだけ容体ひどけりゃ記憶も飛んでるよな。」


 この後、俺は1ヶ月前に事故に遭って、そっからずっと寝たきりだったことを伝えられた。大輝だいきは俺の幼馴染で、この1ヶ月間、母ちゃんと一緒に俺の看病をしてくれていたそうだ。俺の容体は大分ひどかったようで、意識が戻ったと大輝だいきから聞いた時、医者はひどく驚いていた。


「……そういや俺、意識がなかった時、変な夢みたいなの見てたんだよな。」


「変な夢?」


「あぁ、何か夏祭りに来てて、俺自身もすっげぇ小さい頃の見た目になってて、挙げ句の果てにはツバメに変身したっていう…」


「な、なんか、えらくファンタジーな夢だな。」


「だろ?でその後何か閃光弾みたいな、花火みたいなのに当たって瀕死になってたところで、お前の声が聞こえて目が覚めたって感じでさ。今考えたらすげぇ夢見悪かったわ。」


「瀕死か……確かにさっきまでお前本当に危なかったからな…脈もどんどん低くなってて。

もしかしたらその祭り、三途の川的な場所だったのかも知れねぇな。」


俺は少しどきっとした。あの時、大輝だいきの声の反対側で俺を手まねく声も聞こえていたのを思い出す。

あの手をとっていたらどうなっていたんだろうか。


俺が無意識に思い詰めた顔をしていたのか、少し慌てた様子で大輝だいきが話し始める


「にしても、お前がツバメに変身かー。実際お前色んなことにすーぐ首突っ込むし、まさにお前を表してるって感じだよな!」


「おい、それ褒めてないだろ」


 大輝だいきがにししっと笑い、「わりぃわりぃ!」と言った。ふと、あの時の飴売りの言葉を思い出す。


『"飴が現すはまことの自分"…その飴細工は君にとって重要なものだから、大事にするんだよ。』


「………そういうことだったのか。」

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