第23話 敵か?味方か?謎の令嬢(?)登場
「す、すみません、お待たせしました。では、改めてスタートという事で」
私・
今現在配信中のVTuber『クロス・ユカリ』は何故か落ちたゲームを再起動、
再び集まった視聴者さん達と一緒にゲーム『ライジング☆アワーズ』をようやく開始した。
このゲーム自体は、デフォルメされたキャラクターを操作して障害を越えながらゴールに向かうだけ。
ええ、実にシンプルですよ。
問題は私、ユカリがこのゲームを得意かどうかですが……ズバリ言いましょう。
――えと、その、苦手ですね、ええ。
いや、そのVTuberになるにあたって、どういう配信したらいいのか研究して、色々ゲームもやってみたんですよ、ええ。
なんというか、私、基本的にゲーム全般が下手糞なんですよね……。
その中で特にファンシーなかわいいキャラを操作するようなゲームが苦手みたいで。
こう、なんと説明したらいいのか、挙動が噛み合わないというか。
数年前まで武道を少し齧ってた影響なのか、操作が今一つイメージできなかったり。
逆にFPSというか、人間を動かしてどうこうするんだったら練習すればまあどうにか、って感じなんだけどなぁ。
じゃあなんで『ライジング☆アワーズ』を、というと、やっぱり敷居の低さですね。
私が苦手でも、皆で楽しめればなぁと思ったんですけどね……ううう。
「ぎゃああっ!? ま、また落ちたぁぁぁっ!?」
ジャンプして谷を飛び越えようとした結果、
敵キャラの攻撃に撃ち落され私の操作キャラは奈落へと落ちた……って。
「い、いま、敵キャラと一緒に攻撃した人達いましたよね? いましたよねぇ!?」
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えー?そんな奴いたっけぇ?(棒
いや、それを抜きにしてもジャンプのタイミング合ってないw
もうゴールしたんだけどユカリんまだぁ?
視聴者を待たせるようプレイとゲーム選びはよくない
でも、リアクション面白いから俺は好きだぞ(暗黒笑
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「うぐぐぐ、そ、
くっ……いいでしょう、次こそはそれも踏まえて越えて見せますよ、ええ。
あ、す、すみません、お待たせしてる皆様も観てる皆様方も。
い、急いでここの谷を越えて、今度こそゴールを……ってあばぁぁぁぁぁっ!?」
このゲーム、谷に落ちたりしても特にペナルティはなかったり。
少し前までの地点に戻って再び挑む事が出来るのです。
そうして復活、再び飛び越えようとした私は、谷の向こうに立つプレイヤーの1人に岩を投げつけられて再び落ちて行きました。
ついでに視聴者も少し
「うう、やっぱり私は駄目ヒーローです……こ、こんな谷さえも越えれないなんて――
情けないゴミクズですみません……グズッズビッ(鼻を啜る音)」
ぐぐぐ、さっきから10回ぐらい同じ事繰り返してますよ……情けないですし、悔じい”でず。
地面に拳を叩きつけるジェスチャーで悔しさを表現する私。
うう、まさに今の気持ちにふさわしいジェスチャーでございます、ええ。
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卑下し過ぎてて草
ど、ドンマイ?
いや、その、あれだ、10回くらい落ちてもいいじゃん。
そうそう、もっと気楽に行こう、な?
自分の視聴者の事を考えられない発言はNG
ハァァ…まったく、仕方ありませんね。
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あれ?
何か今、ちょっと周囲とはなんか少し違う感じの視聴者の方がいたような……って、ええ!?
私がチャット欄やゲーム内を交互に確認する中。
ゲームの内の私が辿り着こうとしていた谷の向こうで、異変が起きていた。
さっき私を撃ち落とした灰色のキャラクターを、近くにいた赤色のキャラクターが拘束して……谷に投げたぁっ!?
当然灰色のキャラは復活するんだけど、それをまた赤色のキャラクターがガッシと掴んで動きを封じていた。
えええ? 何が起こってるんです?
困惑する私に、チャット欄でのコメントが飛び込んできた。
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見ていられないから手を貸します
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そのコメントのユーザー名には阿久夜澪@令嬢系Vインフルエンサーと記されている。
周囲とは少し違う感じのユーザー名は、さっきも見かけたのと同じだ。
「も、もしかしてど、どどど、同業者の方です!?」
驚きもあって動揺しまくる私。
他配信を見たりするVTuberもいるとは聞いていたけど、私みたいな配信3回目の木っ端の所に来てくれるなんて……!
良い人!? もしかしてめちゃくちゃに良い人なんです!?
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おお、なんか面白い展開になってるw
あれ?最近伸びてるVじゃね?
なんでもいいからさっさとクリアしなさい
そうだぞ、邪魔したやつは俺が制裁しとくからw
俺も俺もw
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ああっ!?
阿久夜さん(?)が羽交い絞め風に拘束しているキャラに、他のキャラがモノを投げつけてるっ!?
「ちょ、そういうのはよくない! よくないですよ!!
いい、い、急いでジャンプしますから! クリアしますから!
ど、どうかすぐにその人を解放してあげてくださいね!
というか、一度はその人と一緒になって私を妨害してた人もいましたよね!?
そ、それはその、なんというか、少しズルいんじゃないかなぁ!?」
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ナンノコトヤラ(棒
意外とツッコミ属性だな、ユカリんw
いや、ボケも多いだろ
他者に文句をつけるより上手くなるべきだ
そういう問題か?
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そうしてコメント欄もゲーム内も若干ヒートアップする中、私は慌てて谷を越え、他のプレイヤーに合流――無事ゴールする事が出来ました。
でも、そうして安堵してはいられないのです、ええ。
実はこの激闘、全7ステージある内のまだ第2ステージ目なんだよね……。
それなのに10分くらい時間をかけてしまったのですがががが。
※普通は遅くても3分でクリアできます。
「ちょ!?
け、喧嘩は、えっとその、ゲーム的にはしちゃ駄目じゃないですけど、レース、レースはじまってますよぉっ!?」
さっきの延長線なのか、第3ステージでいきなり喧嘩を始めるプレイヤーの皆様。
それを慌てて宥めつつ、あと5つステージあるけど……これ無事終われるかなぁ――結果として長時間配信にならないかどうかも含めて心配になる私でした。
「み、皆仲良くしましょう!? ね? 皆仲良くぅぅぅ!?」
※ゲーム画面内では変わらず大乱闘が展開されております。
いや、これホントにちゃんと終わるかなぁ……。
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