第21話 激突!? ライジング☆アワーズ!

 気を取り直し、私・八重垣やえがき紫遠しえんことVTuber『クロス・ユカリ』は、配信を見ている視聴者の皆様に告げる。


「えと、その、はい!

 そ、そそ、それではここからは、皆さんと一緒にゲームをプレイしていこうと思います……!

 わ、私、誰かとゲームなんてあまりしたことないから楽しみです……うふ、うふふふ――」


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笑い方少しキモいぞw

ユカリん……辛い、辛い人生だったんだね……

目算が甘過ぎる。誰も来なかったらどうするんだか。

おい、馬鹿やめろ

誰か来てくれるといいな、うん……


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「うう、キモくてすみません……

 あ、はい、来てくれるとマジで嬉しいです、マジで。

 それで、今日、みんなでプレイしようと思っているゲームは、エックスターで事前告知した通りライジング☆アワーズです」


 ライジング☆アワーズ。

 デフォルメ頭身のキャラクターを操作、様々な妨害を潜り抜けてゴールを目指していくゲームだ。


 操作は基本単純。

 大まかな操作は、走る、ジャンプ、何かを掴むの三種類。

 あと、別枠としてプレイヤー同士で交流する為のジェスチャー機能かな。


 このゲーム、極論『走る』と『ジャンプ』だけでもクリアは出来る……ゴールすればいいからね。


 でも、操作の最大の売りは掴むこと、にあると思います。

 掴んでからどうするかが、ボタンや掴んだもの次第で変化するのです。


 例えば、タイミングさえ合えば落下するプレイヤー仲間を掴み、上に放り投げて助ける事が出来る。

 逆に周囲に転がっている様々なものを投げつけてゴールを妨害することも出来ちゃうんだよね。


 うん、その辺りがこのゲームの面白いところ。


 ライジング☆アワーズは、1人でも単純な3Dアクションゲームとして楽しめる。

 だけど最大30人同時プレイで、ゴールを目指すこともできるんだよね。

 その際、協力も妨害もプレイヤーそれぞれの自由。

 なんだったら、ゴールを目指さずプレイヤー同士でフィールドから落とし合う決闘めいた事も出来ちゃう。


 パソコン、ゲーム機、スマホ――遊ぶための手段が豊富で、視聴者と気軽かつ一緒に遊べて、それぞれの配信の色も出やすいので、VTuberのみならず配信者全般に人気のゲームなんだよね。

 配信する事に特に制限もないし……権利関係とか深く考えずに済むのはありがたいです、はい。

 

「今回は、オンラインかつパスワードを知る人達だけ参加可能なモードで遊びます。

 仮に誰も来なくても、一人でプレイはできるから安心ですよ、ええ……ううう、出来れば誰か来てほしいなぁ」


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ったくユカリんは俺がいないとダメだな(後方理解者面)

まあ可哀想だから今回は参加するか……やれやれw

想定より考えていた褒美に協力しよう

皆上から目線過ぎるwww


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「ううっ、上から目線だとしてもありがたいですよー!

 感謝、感謝でございます」


 私は主催として表示されている私のキャラクターのジェスチャー機能で土下座した。

 腰低すぎて笑うwとか、プライドないのかwとか言われておりますが、正直これでも感謝としては足りないですね、ええ。


「あ、その。

 一応、私もそれなりにこう、ラインというか、そういう一線的なものはございますよ、ええ。

 でも、それはそれ、これはこれ、と言いますか、譲れないものの為なら私は躊躇いなく靴でも舐めて見せますともっ!」


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うわぁw

プライドがないんだかあるんだかw

かっこわるいけどかっこいいような気もするのが不思議だww

品性を少し疑うので言葉は選ぶべき

むしろ俺がユカリんの靴舐めていい?

↑おい馬鹿止めろw


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 そんなやりとりをしている内に待機画面の状態で参加者が埋まっていく。

 えっと――おお!? 30人いったー……と思ったら下がっていく――うう、冷やかされてるなぁ。


 うぐぐ、これ以上は……伸びない、っぽいかな。

 うん、一先ずここまでにしようか――そう判断して、私は参加者11人時点で募集を打ち切った。


「えー、それではまず、私含めた12人でゲームしていこうと思います。

 プレイしてる人も見てくれてる人も楽しめるよう頑張っていきましょうね」


 フィールドに降り立った11人に向けて、私は拳を振り上げるジェスチャーを指定。

 それに対し、皆それぞれのジェスチャーで答えてくれた。

 いやーサムズアップしたり踊ったり多彩だなぁ……この中に『彼』も来ているのだろうか。


 ――先日私をからかった『彼』も。


 まあ、なにはともあれ、全力でプレイを楽しんでいこう、うん。




 ――――余談になるんだけど。


 この時集まった11人の内7人はとは縁が続いていって、クロス・ユカリわたしと相互に影響を及ぼし合っていく事になるんだけど……この時の私達全員がそんな事になるなんて夢にも思わなかったよね、うん。


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