第16話 ヒトにはそれぞれ触れてはいけない領域があり
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色仕掛けでもして安く作ってもらったんですね、わかりますwww
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「……は?」
私・
そんなチャット欄でのコメントが視界に入って――直後、プッツ―――――ンッ、と自分の中で何かがキレるのを、私は感じていた。
「あー……ぁぁ――ぁあ……――――ごめんなさい、その発言は許せません」
私の中の理性的な部分は落ち着くように言っていた。
それまでもそうしていたようにスルーするべきだとも。
初配信で大失敗して、2回目配信で視聴者様に喧嘩を売るような事は賢くはない、と。
だけど、どんなに馬鹿だと言われても、その発言をスルーはできない。
八重垣紫遠としても、クロス・ユカリとしても。
「私の事は構いません。
色仕掛けだの色ボケだの、どマゾどS、無駄乳、牛女だの好きに言ってください」
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いや、誰もそこまでは言ってないが
やけにスラスラと自分への罵倒が出てるんですが
もしかして思う所でもあるのか?
ユカリんに悲しい過去……
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皆様からツッコミが入っておりますが、今はあえてスルーさせていただきます、すみません。
自分の欝側から湧き上がった感情に背中を押される私は震えを忘れていた。
そしてそのまま、心のままに言葉を解き放った。
「ランスロット先生は、私なんぞの色仕掛けでどうこうなりませんから!
私如きで陥落するなんて決めつけ、先生への侮辱です!」
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他の誰かの色仕掛けならどうにかなるってことか?
それはそれで失礼で草
ええ……?ホントにどうこうならないの?(ユカリんの胸部装甲を見ながら)
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……。
し、しまったぁー!? 言葉足らずだったぁぁぁ!?
これではランスロット先生(
「あ、いや、そのっ!
わ、私が言いたかったのはですね。
先生はそもそもそんな色仕掛けで仕事を決める人じゃないって事でですね……」
霞さんへの誤解を解こうと、私はそうして慌てて弁明したんだけど……。
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必死過ぎて草。やっぱ色仕掛けしたんだろwww
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最初に色仕掛け云々言い出した人が再度コメントでからかってきて、私は自分の顔がピキキッと強張るのを感じていた。
ぐぐぐ、これもしかして煽られてる? 挑発されてる?
これは純粋な悪意による嫌がらせなのかも。
そうだとしたら……いやいやいや、待ちなさい、
勝手な決めつけは良くない。うん、良くない。
も、もしかしたら好きな子をからかいたい小学生男子的思考かもしれないよね、うん。
なんせ、画面に見えている私は霞さんによる超絶可愛いクロス・ユカリ!
いやマジでかわいいですよ……私にはめちゃ勿体ないくらいに……霞さんには足を向けて眠れません、ええ。
なので、本来の私はともかくとして、ユカリなら一目惚れは十二分にあり得る。
ふふふ、ユカリは罪な女だなぁ(
その辺りを探る意味でも、余裕のある対応をしなくちゃね。
冷静になれ、私……今の私はユカリ……元スーパー変身ヒロイン、クロス・ユカリ……どんな時も冷静に戦えるクールな女……クールクールクールクールクールクールクールクールクール――。
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コイツブロックなり通報なりでいいんじゃね?
構うから付け上がるんだ、無視が一番なんだ
感情的になるなとは言わないが、なり過ぎるのはマイナスだ
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そんな中、皆様からのアドバイスがチャット欄で流れてくる。
ううっ、皆様、なんてあたたかい……ありがたいです、ええ。
実際、ブロックや通報はあり寄りのありだと思います。
でも、それはあくまで最終手段。
本人がからかってるだけのつもりなら、きっと話し合いは、歩み寄りは可能なはず。
その為の一歩として、大人の対応をせねば。深呼吸深呼吸。
「あの、なんだか、そちらの方が必死に見えるんですが。
えっと、その……も、もしかして、私の気を引きたい、みたいな感じです?
ランスロット先生が形作って下さった今の私の姿は素敵ですからね。わかります。
でも、そういう方法はちょっとデリカシーに欠けてるんじゃないか、と……」
ちなみに、VTuber的には『先生』より、
生みの親の表現たる『パパ、ママ』のほうが良かったかもとは思いますが、今回はなんとなく先生とお呼びしております。
さておき、そうして私が軽ーい牽制的な言葉を放った次の瞬間。
私をからかっていた(?)コメント主が反応するも――それは私の言葉への解答じゃなかった。
一言で説明すれば――コメントの連投。
アイコンを意味なく限界まで並べたり、英語やら外国語やらの長文を連続でコメントしまくっております。
ちなみに長文過ぎて意味はさっぱり分かりません!(ドヤァ
URLは貼れないように設定してるから、これ以上変なことにはならないのは不幸中の幸い……じゃなくて!
十分変なことになってるじゃないですか、やだぁぁぁ!?
チャット欄が怪奇極まりなない状況にっ!?
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あーあ、結果的に煽っちゃったな
図星さされたキッズかな?
いずれにせよ、対応としてはマイナスだ
これは大草原
ようやく面白くなってきたなw
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いやいや、こういう面白さはノーサンキューですよぉぉ!?
「み、みみみ、皆さん、ちょ、ちょっと待ってくださいね!
こらぁ! もうこうなったらブロックするしかないじゃないですかー!?
うう、私はただ、みんなで仲良くお話がしたかったのにぃー!?」
最終的に、私は涙目になりながら件のコメントの主をブロックさせていただきました……うう、色々な意味で悲しい。
その後は、視聴者の皆様に謝罪、どうにかこうにか配信を終了した――んだけど。
この2回目配信は、私が気づかない内に大騒動へと発展していく事になるのです。
うふふ、なんでこうなるんでしょうね……うふふふ、あははははは――笑うしかないです、はい。
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