第12話 初配信反省会、そして思わぬ反響
『いやぁ……やっちゃったわね』
「うぅぅ、やっちゃった……」
私・
ネット会議ソフトでパソコン上に表示されている友人・
同様に表示されている彼女の
というのも数時間前行った、私のVTuberとしての初配信がボロボロだったからでございます。
ミス連発!
リスナーさん達に逃げられる!
半ば逆ギレで泣き喚く!
これはもうダメじゃないですかね、ええ。というかダメです。
配信が終わった後生気を失って、晩御飯の時は大いに家族に心配かけました。
で、現在は、私を心配してくれた二人と一緒に反省会中でございます。
ちなみに、わざわざ配信にも来てくれたというこの2人は、コメントせず、静かに見守っていたとのこと。
今回に限らず自分で何とかしなくちゃいけない事だしね、納得です。
まあそんな2人の前で完全自爆しちゃって申し訳ないんですがががが。
「ううう、ホントすみません、私はゴミムシです……」
『ご、ゴミムシは言い過ぎよ、紫遠。こう、えっと、ゴミケダモノ?』
「さして変わってないと思いますがそれでもいいですよ、ええ、うふ、うふふふ……」
『……で、どうするんだ? VTuber、もうやめるのかい?』
「あ。い、いえ、そのつもりはまだないです。続けます」
私達のやりとりの区切りを見計らって、ポツリと呟いた霞さん。
その問い掛けに、私は思ったまま素直に応えた。
「ま、まだはじめたばかりですから。
最初に転んだからって止めるのは違うかな、と。
でも、もうリスナーさん来ないかもですけどね、うふっ、ふふふ……うひうふふふ!」
『うーむ。
繊細なんだかタフなんだかよく分からないな、君は』
『こういう子なのよ、紫遠は』
「あ、でも、その、せっかく作っていただいたお姿をまたしても醜態で汚してしまうかもしれないんですがががが」
『そこは気にしなくていい。
そういうのも踏まえて君に託したんだよ『ユカリ』を』
「か、霞さんっ……」
『まあそれにいざって時は、全責任も紫遠に託して逃げればいいしね』
『それも事実だな』
うぅぅ、容赦ないっス。
でも、実際その場合はそれでいいと思うので、私は何も言わなかった。
『ユカリ』……死ぬ時は一緒だからね、うん。
私の脳裏には闇の中に沈んでいく私と『ユカリ』の姿がありありと浮かんでおります。
深く深く誰もいない闇の中に……八重垣紫遠というゴミムシが消えていき、それをもう一人の私が看取ってくれる――』
「ふふふふ……それはそれで美しいよね……ふふふふふふ」
『……なんか色々変なこと考えてないか?
まあ、冗談はさておき。
実際の所、それほど悲観的に考えなくてもいいと思うよ』
「――――え? そ、そうなんですか?」
思わぬ言葉に正気を取り戻した私が尋ねると、霞さんが、うん、と頷いて見せた。
『VTuberのファンは良くも悪くも流動的で、行き来が激しい。
最初の配信からずっと応援し続けているリスナーは、そう多くないだろう』
『つまり初回配信でミスっても、それが致命的なことにはならない、と?』
『まあ、そういう事だね。
あと、VTuberに限らずだけど、どんな事も最初から上手くいくはずがない。
それにめげず、冷静にこつこつと実績を積み上げていくのが大事なんだ。
そういう観点で見れば、まだ何も積んでいなかったからダメージは少ないはずだ』
『紫遠の精神的ダメージはさておいてね』
「うう、おっしゃるとおりでございます、色んな意味で」
『それに――』
霞さんは光莉ちゃんマスクの隙間にストローを差し込み、器用にお茶でのどを潤してから言った。
『今回の初配信、インパクトって意味では悪くない、むしろ良いものだと思う。
やっぱり、持ってるね、君は』
「は、はあ? そういうものなんです?」
『ああ。次の配信は明日の夜を予定してたっけ?』
「そ、そう、ですけど。それが何か?」
『それだけ時間があれば、可能性は広がるかも、って話だよ。
まあ君は今回に懲りず、明日の配信の準備を忘れないように』
困惑する私に向けての、何処か笑みさえ含んだ霞さんの言葉。
そこに込められた意味や思惑を私が理解するのは、翌日のことだった。
「え、えええっ!? 何でぇ?」
翌日、VTuber『クロス・ユカリ』第二回配信開始時刻の少し前。
予約投稿した配信待機枠には、初回よりも幾分多い、60人ほどが集まっていたのだった。
うーむ、これは一体どういう事なんだろう……というか人数増えて緊張してきたんですががががが。
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