第8話 不可思議な願い、少し斜め上の答
『――ひとまずは2Dモデル、その後次第で3Dモデルを無料で作ってもいい。
だけど条件が一つある……【アストラ】を、源光莉を叩き潰せ』
「えええええぇっ!? なんでそうなるんです!?」
パソコン画面内の
少なくともかつては純粋に推していたはずのVTuber・
しかも今現在進行形で光莉ちゃんのきぐるみ着てる人の発言だから、シュールというかなんというか。。
正直全く理解出来ないんですががががが。
ちなみに、アストラ、というのは光莉ちゃんが所属しているVTuberグループの事です。
その中のトップにしてVTuber内でもトップクラスの人気を誇っているのが我らが光莉ちゃんなんですよ(ドヤァ。
あ、はい、本題に戻ります。
現役ヒカジューとしても、これは流石に訊ねずにはいられませんね、ええ。
「あの、その、ほ、ほほほ、本気、なんですか?」
『冗談で言える事じゃないだろう』
「その、えと、どうしてなのか、お聞きしても?
さ、さすがにヒカジューとして、迷惑かけるガチアンチは通報せざるをえないんですが。OKですか?」
『いやいやいやいやいやNOだ、NO。
通報はやめてくれ、マジで。
……まあ、そうだな』
PC画面越しに私の本気を感じ取ってくれたんでしょうか?
『彼女も今の位置に辿り着くまで、紆余曲折があった。
その途中、俺も1人のクリエイターとして関わりそうになった事があったんだ。
その時に……いろいろあってね。
俺は当時の彼女が出したある答に納得がいってない。
だけど、今の彼女は紛れもないVTuberのトップ、五天衆の1人になっている』
光莉ちゃんを模した頭部の内側から響く声。
それは何処か、単純な憎しみとも悲しみとも取れない感情に満ちていた。
『昇りつめれば絶対という訳じゃないが、
現状では、彼女の出した答えが正しいと考えるものが多いだろう。
俺は……それにどうしても我慢がならない』
「えっと……だ、だから霞さんの作るVTuberの身体で、光莉ちゃんやアストラを上回って証明したいって事ですか?
その、霞さんが正しいと思ってる何かについて」」
『有り体に言えばそう言う事になる』
「う、うーん、それで勝った事になるんですか?」
『……少なくとも、俺はそう思ってる。
おそらくは彼女にもそう伝わるだろう』
うーん、全く分かりません!
二人の間にあった意見の相違と最終的な答えも、
何故霞さんの作る『姿』を使えば証明できるのかも。
でも……分からないからと言って、こと光莉ちゃんに絡んでいて、
同じヒカジュー(かつてなのか今もなのかはさておき)の願いが籠った事柄を無視したくはないな、と思う。
正直『身体』を作ってほしい気持ちはある。
その為に霞さんに気に入ってもらえるような答を選ぶべきだって考えが頭を過ぎる――だけど。
『さあ、どうするんだ?』
問い掛けて来る霞さんに、私は逡巡の末小さく手を上げた。
「あ、あああ、あの、いいですか?」
『なんだ?』
「えと、その、叩き潰せば――光莉ちゃんを上回ったんだって、証明すればいいんですよね?」
『……ああ』
「な、なら、その過程はどうでもいいですよね?」
『なに?』
「光莉ちゃんを尊敬したままでも、推しのままでも……仲良くなっても、えと、いいですよね?」
『……』
「あ、はい、すみません。
ななな、仲良くは無理ですよね、そもそも初めてもない今はそれ以前の問題なのに。
えっと、その、つまり何が言いたいのかというとですね……」
私がそうして伝える言葉、決断に迷っていたその時だった。
『ふ……ぷっ、はははははははははは!』
霞さんは笑った。大いに笑った。
いや、その、すごく気持ちよさそうに笑ってますけど、それってどういう意味なんです?
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