ハンバーグ作り

飯田さんと買い物に行った翌日、僕達は再び家庭科室を訪れていた。


今日は深雪さんに作る料理の練習を行う事になっていた。

飯田さんは杉崎さんに借りたピンクのエプロンを着て、気合い十分といった様子だ。


「まずは、手を洗って、それから野菜を切っていこう」


飯田さんは、「はい、先生!」と、言うと手を洗うと、包丁を手に取った。

飯田さんはたまにお母さんの手伝いをしていると言っており、スムーズにじゃがいも、人参、玉葱を切っていく。


「次は切った物を皿に移して、電子レンジで温めよう」


飯田さんが切った物を電子レンジに入れると、僕は次の指示を出した。


「その間に、豚ひき肉、塩、胡椒、片栗粉、そして卵をボウルに入れておこう」


飯田さんが作業をしている間に、先程切った物が温め終わった。


「そうしたら、それらを入れて混ぜます」


飯田さんは、「よいしょ」と、言いながら、ボウルの中に野菜を入れると混ぜ始めた。


ある程度、混ぜ終わると僕は口を開いた。


「次はハンバーグの形にしていこう」


「よーし、いよいよだね!」


飯田さんはそう言うと、とんでもない量をボウルから掬い取った。


「千尋、その量では生焼けになってお腹を壊してしまいます」


それまで、静かに見守っていた杉崎さんが慌てて飯田さんに声を掛けた。


「ごめん、ごめん。少し大きくしすぎちゃった」


その後、飯田さんはテンポ良くハンバーグの形にしていった。


「よし、後は焼けば完成だ」


飯田さんは頷くと、ハンバーグを焼き始めた。



「完成したよ〜」


飯田さんが作ったハンバーグは良い具合に焼き色が付いていて、とても美味しそうだ。


「美味しそうだね」


「うん、自信作!」


僕の言葉に笑顔で返すと、飯田さんは席に着いた。


三人で手を合わせて、「いただきます」と、言うと食事を開始した。


「初めて中に野菜が入っているハンバーグを食べましたが、食感が新鮮で美味しいですね」


頷きながら感想を言う杉崎さんの隣では、飯田さんが良い笑顔でハンバーグを食べていた。


「うん、我ながら渾身の出来だね!」


「うん、これなら深雪さんも気に入ると思うよ」


僕の言葉に飯田さんは、「そうだと良いな」と、言って微笑んだ。


「後は、どうやって深雪さんに食べてもらうかだね」


僕が腕を組みながら呟くと飯田さんが、「はい! 提案があります」と、言って手を上げた。


「千尋、提案とはどの様なものですか?」


「私と深雪は時々、互いに弁当を作って交換して食べていたんだ。それぞれの好みのおかずを入れたりして、とても楽しかったんだ。だから、お弁当にして、深雪に食べてもらいたい」


飯田さんの真剣な表情を見て、二人がまた笑ってご飯を一緒に食べて欲しい、と心の底から思った。


「うん、お弁当にしよう」


「ハンバーグの作り方を今日教えてもらったから、深雪と会う前日に他のおかずと一緒に私が作るね」


「分かった。何かあったらいつでも言ってね」


「倉橋君、ありがとう! それでね、当日は倉橋君にも来てもらえると嬉しい」


飯田さんの言葉に僕は大きく頷いた。


「勿論、行くよ」


「よーし、後はお弁当作りを頑張るぞー!」


飯田さんのその姿を見て、全力で支えようと僕は思うのだった。

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