公式は料理で解こう
現在、僕と飯田さん、三島さんの三人は僕の部屋でクッションの上でそれぞれ座っていた。
「じゃあ、まずはそれぞれ勉強して分からない事があったら質問するようにしようか」
僕の提案に三島さんは、「うん、頑張るよ!」と気合いの入った声を上げて、飯田さんは、「ご飯を美味しく食べる為に沢山頭を使うぞ〜」とまたもや少し本来の目的とズレているような目標を言葉にしていた。
勉強会が始まってすぐ三島さんが手を上げた。
「三島さん、どこか分からない事があった?」
僕がそう聞くと三島さんが教科書の問題を僕に見せてきた。
「この因数分解が難しくてどうしても理解出来ないんだよね。教えて!」
すると、横から教科書の問題を見ていた飯田さんが口を開いた。
「若菜、これはね、料理が何の材料で出来ているのかを考えれば良いんだよ。この問題だと、カレーだね。カレーは、人参、玉葱、ジャガイモ、カレールウで出来ているから、こうしてこうすれば、ほら、解けた!」
答えを確認すると確かに正解していた。
「な、なんだ、そりゃ」
その滅茶苦茶な問題の解き方に僕は思わず呟いていた。
「ちょっと待って、飯田さん。そうしたら、この問題は解ける?」
僕は応用問題と書いてある先程より難しい問いを指差した。
飯田さんは軽く頷く。
「これは麻婆豆腐だね。豆腐とひき肉とにんにくと唐辛子が入っているから、こうしてこうすれば、はい、出来た!」
答えを確認すると見事に解けていた。
驚いて固まってしまった僕を見て、三島さんが頬を掻きながら口を開いた。
「千尋はね、どの教科でも問題を解く時は料理に例えるの。全部合っているから凄いんだけど、誰かに解き方を教えるのには絶望的に向いていないの」
「滅茶苦茶だけど、もう天才って言って良い気がするな」
「まぁ、私は皆と同じように問題を解いているだけなんだけどね」
そう言って僕の手元を見た飯田さんが、「あっ」と声を上げる。
「倉橋君、その問題、唐揚げなのに牛肉が入っているよ。鶏肉を入れないと」
僕は空いた口が塞がらなかった。
結局、飯田さんは天才という事が分かったが、教える側になるのはどうしても難しかった為、三島さんが分からない問題は僕が解き方を教えた。
「聡太君、お店の手伝いをしているのに頭良いんだね」
「成績が落ちて店を手伝えなくなるのが嫌だから、毎日予習と復習はしてるんだ」
「偉いね。頑張っている人がいるから、部活が忙しいって言い訳して勉強をサボらないように頑張ろうっと!」
そうして、僕達は長時間勉強に取り組むのだった。
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