好きになってしまったみたい
次の日、登校し自分の机に教科書等を入れている時だった。
「倉橋君、おはよう!」
教室に入ってから真っ直ぐに僕の机にやって来ると飯田さんは元気に挨拶をしてくれた。
「飯田さん、おはよう」
「倉橋君、昨日は本当にありがとう」
「いやいや、気にしないで」
「気にしない訳にはいかないよ! それで、昨晩、お礼を一つ思い付いたの」
そこまで言うと飯田さんは恥ずかしそうに視線を逸らせた。
「私にとっての得の方が大きいかもしれないけど、どうしても忘れられなくて…… 私、倉橋君が好きになってしまったみたい」
…‥何か今、とんでもない事を言われた気がする。
そんな混乱状態の僕に少し遅れて、周りもざわめき出した。
「えっ、告白? 突然?」や「私達、何に巻き込まれているの?」と、少し騒ぎになっている。
しかし、飯田さんはそんな事にはお構い無しでさらに言葉を続ける。
「だから、昨日のお礼に倉橋君のお店で沢山食べる事にしようと思うの。勿論、お代はちゃんと払うよ」
色めき立っていたクラスメイト達は、飯田さんの言葉に混乱したような顔をしている。
今がチャンスだ、と僕は思うと口を開いた。
「飯田さん、僕の料理が好きになったんだよね?」
周りによく聞こえるように料理の部分を強調した。
それにしても飯田さんは天然なのかと僕は少し思った。
「うん、チャーハンが美味しくて、他の料理もあるのかと思うと、また倉橋君のお店で食べたくなってしまったの。だから、もし良ければ、放課後に食べに行きたいんだ」
周りでは、どうやら告白ではないぞ、という空気になっていた。
誤解解けたようで安心した。
僕は飯田さんに向き直った。
「勿論、大丈夫だよ。放課後に一緒に行こうか?」
「うん、ありがとう。放課後を楽しみにしているね」
飯田さんはそう言うと自分の席へ向かった。
「聡太、一体いつ飯田さんと仲良くなったんだ?」
飯田さんと入れ替わりでやって来た男子は僕の友達の佐田和也だ。
「ただ僕の家のお店の料理を気に入ってくれただけだよ」
「そうなのか? まぁ、確かに聡太の家のお店の料理は美味しいからな」
どうやら納得してくれたみたいだ、と僕は一安心だ。
「それよりも、テストではいつも一位、しかも他の生徒から美人と評判の飯田千尋と仲良くなれるなんて運が良いな」
「まぁ、仲が良いというより、お店の味を気に入ってくれたお客さんって感じだけどね。また満足してもらえるように努力するだけだよ」
「聡太は相変わらず変わらないなぁ」
そんな僕に和也は感心したのか呆れたのか、何とも言えない表情を浮かべるのだった。
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