お腹を空かせた女子にご飯を作ってあげたら、僕の家の食堂の常連になった

宮田弘直

少女達との出会い編

お腹を空かせた女子高生を見つけた

「うぅ、お腹が空いたよー」


その日、僕こと倉橋聡太は路上でお腹を空かせた女子高生を見つけた。

その女子には見覚えがあった。

僕のクラスメイトで名前は飯田さんだ。

ギュルルとお腹の鳴る音が聞こえてきた。

飯田さんとはあまり関わりが無かったが、お腹を空かせている人は放っておけない。


「飯田さん、こんばんは」


僕が声を掛けると飯田さんはビクッと肩を震わせると恐る恐るこちらを見た。


「……えっ? もしかして同じクラスの倉橋君?」


「そうだよ。それよりも大丈夫?」


僕が聞くと飯田さんは少し迷った後、恥ずかしがりながらお腹をさすった。


「恥ずかしい話なんだけど、今日お弁当と財布を忘れちゃって、しかもよりよって今日は塾の日で休む訳にもいかず、そのまま授業を受けてきたんだ」


「朝食べてから夜まで何も食べてないの!?」


「友達にお昼ご飯を少し分けてもらったけど、全然足らなくて…… だからといって、お金を借りるのも申し訳ないし、我慢しようと思ったけど駄目だったよ」


「それは大変だったね。でも、もう大丈夫だよ。こっちへおいで、ご飯を作るよ」


そう言って、僕は看板を指差した。

その看板を見て、飯田さんは驚いていた。


「えっ、倉橋君と同じ名前? しかも、倉橋君のその格好、もしかして倉橋君の家って……」


「そう、僕の家は食堂なんだ。さぁ、入って? ご馳走するよ!」


僕の両親は小さな食堂を営んでおり、僕も手伝いをしていた。

今もゴミを外に出していた時に飯田さんを見つけたのだ。


店に入った瞬間、「いらっしゃいませ!」との声と共に僕の両親の視線が僕らに注がれる。


「ん? 聡太、その子はどちらさんだ?」


僕と一緒に入ってきたのが不思議だったのだろう。

父の智和が声を掛けてきた。


「僕のクラスメイトで飯田さんっていうんだ。朝食以降ほとんど何も食べていなくて、お腹が空いてしまっているみたいだから、何か作っても良い?」


「何もってもう20時近くよ? それは大変だったわね。聡太、早く何か作ってあげな」


奥から母の静江が許可を出してくれたので、僕は、「分かった」と言って、厨房へ向かおうとした。

しかし、それを飯田さんが慌てて止める。


「倉橋君、待って! 気持ちは嬉しいけど、私お金を持ってないからいただけないよ」


「お嬢ちゃん、倉橋食堂はお腹を空かせた人を放ってはおけないんだ。お代は要らないから、座って待ってな。すぐ作る」


「えっ、でも」と、飯田さんは渋っていたが、母が「座って、座って」と、飯田さんを座らせた。


僕は厨房に入ると飯田さんに声を掛けた。


「飯田さん、何か嫌いな物ある?」


飯田さんは遠慮がちに首を横に振る。


「い、いや、嫌いな物はないよ」


僕は頷くと調理に取り掛かった。



「はい、お待たせ!」


お腹空かせた飯田さんを待たせてはおけないとスピード重視で僕はチャーハンを作った。


「わあ、美味しそう!」


飯田さんは目を輝かせている。

手を合わせ、「いただきます」と言うとさっそく一口食べた。


「すごい美味しい!」


スプーンを動かす手が止まらない。

あっという間に平らげてしまった。


「美味しかった〜 ありがとう、倉橋君」


飯田さんはとても満足そうな顔をしている。

料理を作る身として、この表情を見れる事が本当に嬉しい。


「本当にありがとうございました。お代は必ず払うので」


飯田さんが言うと父は首を横に振った。


「チャーハンはうちのメニューにないから、賄いだ。だから、お代は取れないよ」


「だから、飯田さんは気にしなくて良いよ」


僕が笑顔で言うと、飯田さんは、「ありがとう」と言って頭を下げた。


「気にしないで。それよりも、もう夜だから送っていくよ」


そうして飯田さんを家まで送っていくと、飯田さんは、「必ずお礼をするね」と言って、手を振ると家の中に入っていった。

僕は帰りながら、美味しそうに食べている飯田さんを思い出し、これだから料理を作る事は止める事が出来ないと思うのだった。


☆☆☆


ここまで、読んで下さってありがとうございます!


新作を投稿したので、宜しければ読んでください!


「可愛くて内気な幼馴染がある日、俺に積極的にアピールをしてくるようになった」


https://kakuyomu.jp/works/16818093084275883535/episodes/16818093084275990395



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