第7話
「今日からここが君の部屋だ。ミカ、色々案内してやってくれ。」
「はーい!」
事務所にやってきた。想像よりも大きくて少し気後れしてしまう程だ。しかも中も滅茶苦茶綺麗。あのボロアパートとは天と地ほどの差だ。
気付けば所長さんはいなくなっていた。何処かへと出かけたらしい。
「あの…ロイちゃん?」
「あ、あぁごめんなさい。ちょっと考え事を…」
いつの間にか私の顔を覗き込もうとしていたので咄嗟にフードでガードする。
まぁ正直意味は無いだろうけど…
「えーと、その…よかったらなんだけど…そのフード取ってくれないかな?」
「…え?」
「そのーこれからパーティー組むじゃん!?だからお互いの顔は見知っておいた方が良いだろうしもしかしたらこれからつ、おつ…」
「お、おつ…?」
何故か急に言葉に詰まるミカ。そんな態度に違和感を覚えつつ私は考える。
別にこれから有名になるかもなのだから今までのように顔を隠す意味は無いかもしれない。
長い付き合いになる人間に対して不信感を抱かせるのは良くないだろうし。
「分かりました。じゃあフード脱ぎます。」
「そ、そうだよね、流石にダメだよね…ってえぇ!?良いの!?」
「ええ、別に…どうせ顔出すことになりますし…」
そのまま私はフードを脱ぐ。
「お、おぉ……」
身長に合わない銀髪が宙に流れる。
その髪は煌めきを放ち、それを見た人間を魅了する。
「あの……ほっぺ触るの辞めて貰えません?」
私がフードを脱いでからミカはおぉしか言わずにほっぺたを揉みまくってくる。
何故か悪い気はしない。
「あ、あぁ!ごめんなさい!!余りにも…その…可愛かったから…」
……まぁ自分で言うのもなんだが私は可愛い。
それで騒ぎにならない様フードを被っていたんだし。
名残惜しそうにミカは私のほっぺから手を離す。
「そ、そうだ!案内だね!えっとここがベッドで…ここがお風呂!でここが……」
ここはやっぱり広い。迷子になりそうなくらいだ。
一時間ほどで案内は終わった。
そしてまた部屋に戻ってきた。
「ロイさん…その一つだけ言っておきたい事があって…」
お風呂に入ろうかと思っていた矢先ミカが話しかけてくる。
「あの時、私を助けてくれてありがとうございました。私あの時すごく怖くて…死んじゃうかもって思ったら体も頭も動かなくて…それで…」
「命は、大切にすべきですよ。二度と戻らない物ですし。」
私の声は私が思っていたよりもずっとトーンが低かった。
「ロイ…さん?」
「あ、いやなんでもないですよ。それよりお風呂に入るので今日はもうゆっくりさせてもらって良いですか?」
「は、はい。じゃあまた明日!」
「あ、これからはタメ口で良いですよ、一緒にパーティー組むんですし…」
「いや…ちょっとまだ刺激が強いというか…」
「し、刺激…?」
刺激って何。まぁ無理に強要するものでも無いけど。
「もう少し仲が深まったら!きっとタメ口にしますから!」
「は、はい。分かりました…?」
「それじゃ!また明日!」
そのまま足早に去っていく。
「なんか様子変だったなぁ。まぁそりゃそうか…」
死にかけてたんだし当然ことだろう。
ちゃんと気にかけてあげなきゃなと思いつつ私はお風呂に入る。
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