第4話
「ふあぁーよく寝たぁ。」
相変わらず朝は苦手だ。そう思いつつ私は洗面所に行き顔を洗う。
そしてベランダに出て、まだ全身が見えない太陽を見ながらお水を飲む。
この朝のルーティーンが私は堪らなく好きだ。
「やっぱり話すべきかなぁ。この身体の事。」
ここ最近よくそんなことを考える。数年前、私の体は急にこんなロリ美少女に変化した。
職場では陰が薄かったし基本誰とも喋らずとも仕事を回せていたので私の声を聞いたことのある人なんて殆ど居ない。要するに友達が居ないと言う事だ。それに両親共々私が小さい頃交通事故で亡くなった。後部座席に座っていた私だけ生き残った。だから話せる人も居ない。あの時から、あの両親が目の前で亡くなった日から自分の考え方が幼いながらに変わった気がする。そして、その頃から私はあまり自分の感情が動かなくなった。美味しいものを食べた時は美味しいって感じるしがっかりすることも悲しくなる事もある。でもそれら全てがどうしても他人事のように感じてしまう。
「まぁどうでもいっか。」
結局私は考えるのを辞める。どうせ働かなくてもダンジョンの収入だけで生きていける。確かに冒険者の職業に憧れは持っていたけれど別にそこまで心踊る物でも無い。生きていく上での最善策がこれしか無かったというか。
「もう六時か。そろそろダンジョンに行こうかな。」
毎日配信しているし今日で皆勤配信デーを終わらせてしまうのは勿体無いので面倒ながらもダンジョンに向かおうとする。
そこで私は思い出した、昨日の一件で私の注目度はかなり上がっている事にだ。
私のユニークスキル「二刀流」は殆ど確定みたいな感じでインターネット上では盛り上がっている。しかも私のチャンネルがバレてしまっている。配信を切っていなかった事が災いした。
目立ちたくは無いしユニークスキル持ちだとバレたらお国ギルドから「貴女のユニークスキルを調査させてください」とか言われるの目に見えてる。なるべく人と関わりたくない私にとっては地獄だ。というか面倒だし。
今日の配信をどうしようか考えていると
ピンポーン!とチャイムがなった。
あれ、ヒマゾンで何か頼んだっけと思い一応いつものフードを被って対応する。
「…はい…どちら様で…!?」
私は古いドアを開けた後後悔する。来客は大人な女性ともう一人。以前私が助けた百合島ルカその人だった。
「あ、あの!貴女が昨日私を助けてくれた人ですよね!」
「…いいえ、ひ、人違いです…」
なるべく声を掠れさせて言う。尾行は着いて無かった筈だしそれならどうやってこの住所を知ったのかも分からない。
「ほーう君がロイさん…かな?」
大人な人が私を下から上までじっくり観察してきた。私の顔殆どフードで隠れているしあまり見えない筈だが…
「…人違いです…から別の所を当たってください…」
私は会話を無理矢理切り上げドアを閉めようとする。
「ちょっと待って!そのお礼がしたいだけだから!」
彼女が切迫詰まったような声で言うので思わず聞こうとしてしまった。というかそんな大声だされたら近所迷惑だしやめてほしい。
「…ホントにお礼だけで…すか?」
「え、あ、あの…うん、それだけだとも言い切れない…かも…」
「…分かりまし…た、取り敢えず…入って下さい…」
出来れば人を我が家に入れたく無かったが
大声で泣きつかれそうだったので仕方なく入れることにした。
「お邪魔しまーすっと…」
「お邪魔します。」
二人は靴を脱ぎ私の部屋を観察する。
「あの…観察するのは辞めて欲しいのですが…?」
「あ、ごめんなさい!」
「すまない、つい癖で。」
二人とも真剣に謝ってくる。多分悪い人では無い…と思う。気のせいかもしれないがミカの私を見る目が何処か変に感じる。
「適当に座ってください…」
「声綺麗…じゃなくて、お気遣いありがとうございます。」
「君…何歳なんだ?後…出来ればフードを取って欲しいのだが…」
大人の人は私の素性をやけに知りたいらしい。
出来る事なら教えたくない。言ったところで信じてもらえる訳は無いし素顔を見られるのもなんか嫌だ。
「…すいません、…それは…できません。」
「そうか…いや、何から話すべきか…」
所長とミカに呼ばれている人は何か考え込むかのように黙る。
もしかしたら百合島ミカの所属している事務所の所長さんなのだろうか。そういえばこんな顔をどこかで見た事があるような気がする。
「そういえば自己紹介がまだだったね。私は百合島ミカ。昨日君に上級ダンジョンで助けてもらった女の子です。」
「私は…所長と呼んでくれ。一応ミカが所属している「Y&Y事務所」の最高責任者だ。それで君に話があってきたんだ、決して悪い話ではないと約束しよう。」
「話…ですか?」
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