第24話
「竹内さん、その注文書はミナモトコーポレーションの物ではないですよね」
「は、はあ?」
秀の指摘に竹内の顔が青ざめていく。
「その注文書は、株式会社竹内がミナモトの名前をかたって作った物では?」
もはや竹内の顔は白かった。秀がお構いなしにとどめを刺す。
「つまり、実際に不正な材料を注文したのは竹内さん、あなたじゃないのかと聞いているのです」
数秒の沈黙後、竹内が「馬鹿を言うな!」と大声で叫んだ。周りを歩く人たちが、何事かと秀や竹内に目を向ける。
「ボクが注文した? 証拠はあるのか!」
「あると言いました。――見ますか?」
秀が鞄からタブレットを出す。「こっちにバックアップを取っておいて正解でした」と、秀は葉月にウインクして見せた。状況を飲み込みきれていない葉月は、ハラハラしながら彼の行動を見守っている。
「まずはこれです。先日、竹内さんが俺宛てに送ってきた『ミナモト材料不正の証拠』とされる注文書画像。そのUSBメモリに入っている『証拠』と同じものですよね」
画面に注文書が表示される。表計算ソフトで作られたようなシンプルな形式で、ミナモトの社名が入っていた。
「そしてこっちが、実際のミナモトコーポレーションの注文書です」
そう言って表示された注文書は、明らかに別ソフトで作成された注文書だった。どちらもミナモト社の注文書だと言うのに、その二つは似ても似つかない。
「まったくの別物……よね?」
葉月の呟きに秀が頷く。秀はもう一度タブレットをタップした。
「ついでに、こちらが株式会社竹内が使用していた注文書です」
そこに現れた注文書は「ミナモトの不正の証拠」とされる注文書と同じ見た目だった。そこにはしっかりと「株式会社竹内」と社名が入っている。
「先ほど俺が『馬鹿なんですか』と申し上げた理由はこれです」
タブレット上に「不正の証拠」と「株式会社竹内の注文書」が並ぶ。
「これ、同一の注文書ですよね」
証拠を突き付けられた竹内の口がカクカク動く。
「いや、違う、これは……」
「これは株式会社竹内がミナモトをおとしいれようとした証拠です」
「違う! 違う! ミナモトだ!」
往生際の悪い竹内はうるさかった。大人の地団駄は見苦しい。
「じゃあ、いちから説明しましょうか」
秀が淡々と語り始める。
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