異世界人のニート事情

@jfyjdfgs

第1話 異世界人ニート記録 種族・人間

「真人おおおうぉぉ―――!!!!」

「昼間っからうるせあああ―――!!!」

「お前はド深夜にうるさいわ‼」


 親父が真っ昼間から強行突破してきやがった。

 人には最低限の人権が保障されているはずだ。特にこの国では。

「引きこもり」「NEET」「自宅警備員」etc.

 だが親父は昼間から人権を侵害して来た。この聖域を。


「お前は真人間と書いて真人という立派な名前を付けて貰いながら何という体たらく何だ!」

「名前ごときで立派な人間になれるなら誰も教育に金かけないわ!というか今どきそのロジック昭和か!」


 この聖域の主人である俺の名は神堂真人。目の前にいる神堂正人の実の息子だ。

 高校を卒業し、大学に進学せず、就職せず、夏休みに突入したのが俺の現状。


「親ならもう少し温かく見守る事もできないのか?」

「5年10年には『親の言う「見守る」っていうのは何もしてないのと一緒だ』と言いそうだな」


 ギクッ


「さて、そんな親不孝な愚息に仕事を持ってきてやった」

「断ああああある!!!」

「まあ聞け。仕事っていうのは政府から依頼された仕事だ」


 そう言って親父は俺の部屋に座り込んだ。


「政府からの仕事なんか俺にできるわけないだろ」

「だから聞けって。真人、異世ゲートっての知ってるか?」

「20年前にこの町に現れた異世界へのゲートってやつだろ?捜査しても結局何もなく、今は政府が管理してるっていう。まさかゲートから異世界に行く危険任務じゃないだろうな?」

「俺としてはそれでも構わないが、ゲートを通って異世界に行くことを政府が禁じているからな」

「じゃあ何だよ」

「実は異世界からこちらの世界に来た人たちがいるんだよ」

「本当に⁉」

「ああ、今まで秘密にされていたからな。そこでお前に任せたいのは、こちらの世界に来た異世界人と仲良くすることだ」

「引き…高校を卒業したばかり人間に任せることではないのでは?」

「そこは大丈夫だ。引きこもりのお前に適任の仕事だ」

「引きこもりに適任な仕事って何だ」


 親父は真面目そうな書類をテーブルの上に置いた。


「ええと、ここに直筆のサインと印鑑を・・・」

「こわ!何本人の同意なく話進めてんだよ!」

「何だ、お前はこのまま無銭飲食するのか?」

「だから怖いって!・・・分かったよ。仮に失敗しても罰則とかはないよな?」

「ない、安心しろ。だが真面目に取り組む事がお前の為になる事を忘れるなよ」


 そう言って親父は部屋から出ていった。

 書類は数枚あった。任務に具体的な期日はなかった。書類には五つの住所が書いてある。

 俺はここが異世界人が住んでいる住所かと思った。


 数日後   自宅の居間 


 テーブルを挟むように俺と親父は向かい合っている。神堂礼子こと母さんは親父の隣に座っている。


「お前に政府から与えられた任務は、異世界人を説得し異世界に帰らせることだ!」

「まあ!遂にうちのごくつぶしが政府からの直々の任務を任せられる日がこようとは!」

「酷いな母さん!って異世界人を帰らせる?仲良くするんじゃないの?」

「異世界人と仲良くし、自主的に帰ってもらう。異世界人は帰りたくないようなんだ」

「だったらしばらくこっちの世界にいてもいいんじゃないの?」

「どうやら向こうの親御さんが心配しているらしくてな、俺たちもごくつぶしの息子がいるから気持ちが痛いほど分かるんだ」

「親御さんに対しても酷い言い方じゃないか⁉」

「だってそりゃあそうだろう。五人ともニートなんだから」

「へ?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 22:00 予定は変更される可能性があります

異世界人のニート事情 @jfyjdfgs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る