第3話 必要とされること

 お見送り。今の私が一番聞きたくない、ないしは見たくない文字列である。それがGmailを介して目に飛び込んでくると、心臓がぎゅうっと縮こまって、背中から冷や汗が噴き出る。一瞬現実が眼球で拒絶されて、ゆっくりと、一滴の墨汁を水の中に落としたように、事実が理解されてくる。私はこの企業にとって必要とされなかった、という事実が。

 私は転職活動をしている。今の会社は非常にホワイトで、人間関係も良好だ。しかし給与が足りない。

 私は誰もが知る名門大学を卒業している。しかし、その後に進んだ大学院で、ゴミのような教官に留年させられ、退学させられた。齢25歳にて既卒無職になり、複数の精神疾患を背負って一生懸命就活をした。

 ダメだった。就活をしても、書類落ちばかり。辛い、辛いと思っていたら、今のところに拾ってもらえた。こんな中退などという汚れた経歴の持ち主にふさわしく、給与は雀の涙ほどしかもらえなかった。

 それでも私は働いた。一生懸命働いた。それでも、発達障害が邪魔をして、休職も何度もしたし、研修中も何度も怒られた。

 もう働きたくない。せめて給料の高いところで働きたい。私はそう思い、転職活動をした。

 その結果、この体たらくだ。この大学に出たのだから、有名企業に入らないと馬鹿にされる。親戚中の笑いものにされる。その強迫観念が消えない。これは私の妄想ではない。うちの祖母も両親も、だれだれさんはどこどこで勤めてるんだって、せっかくいい大学に行ったのに情けないわけねえ、とよく悪口を言っている。その矛先に自分がなりたくない。けれど、必死こいてやればやるほどドツボにはまり、お見送りの連続だ。

 どうせなら、あの世へ見送ってほしい。もう疲れた。早く楽になりたいものだ。


 読み返したが、非常につまらない文章を書いてしまった。しかし、今の自分の心持ちを記録することになんらかのCBT的な効果があると信じて、書き残しておく。

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精神疾患および人生についての考察 色野はくし @irono8shiro

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