第四話『労働』

——クローン三原則の導入の目的の一つには、『労働人口の安定』もある。


 兵士供給の場合と同様に、大前提として、クローン三原則後の世界は少子化を解消し、人口そのものが増加するため、労働人口も増加、安定する。

 そして、クローンによる妊娠・出産・子育ての代行及び、妊娠・出産・子育て期間中の労働代行により、生物学的女性がキャリア構築する上での問題点は解消される。

 また、クローンによる兵役代行及び、兵役期間中の労働代行により、生物学的男性がキャリア構築する上での問題点も解消される。

 こうして、クローンの存在が、社会に労働人口の安定化をもたらすのである。労働生産性は、クローン三原則導入以前と比べて大幅に向上し、世界は経済的豊かさを享受する。

 しかしさらに厳密に言えば、クローンによる代行は、『繁殖』と『兵役』のみにとどまらない。

 傷病などにより、労働が困難なやむを得ない状況に陥った時、それが公正な手続きを経て認められれば、これをクローンによって代行できる。また、労働可能な程度まで回復が見込まれない場合や、慢性的症状により永年に渡って安定的な労働力提供が極めて困難な場合は、クローンによる労働代行が、終身の保障となる。

 なお、クローンによるあらゆる代行がオリジナルから必要とされない期間に関しては、クローンは専門知識を必要としない公営施設の単純労働作業に強制的に従事させられる。また、オリジナルとそのクローンは、クローンの強制労働に対して、一切の決定権及び責任を持たない。


〈第五話『反乱』に続く〉

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