第二話『繁殖』
——クローン三原則の導入の最大の目的は、『少子化の解決』である。
生物学的女性は、子供をもうけたいと考えた時、自身のクローンを母体として利用できる。そうした場合、生まれた子は、正式に母体であるクローンの『オリジナル』の子として、戸籍を得る。また、妊娠から出産、そして子育ての期間(子が成人年齢の一八歳になってから一年間経過するまでを最長とする)まで、その全てあるいは任意の一定期間を、自身のクローンに代行させることができる。加えて、生物学的女性のオリジナルは、卵子のみを自身のクローンに提供するなど、オリジナルの意思に応じた部分的な代行も可能である。もちろん、オリジナル同士での繁殖も従来通り合法である。
これらにより、生物学的女性は『繁殖』に伴うある種のしがらみを、一切無視することが可能になる。
また、生物学的男性の場合も同様であり、『繁殖』に対し、自身のクローンを利用した全面的な参画が可能となる。それは、相手の生物学的女性の妊娠・出産・子育てと、その期間が重複する、生物学的男性のあらゆる社会的活動を自身のクローンに一時代行させることで、実現される。加えて、生物学的男性のオリジナルが相手の生物学的女性のクローンに対し精子を提供することも可能であるし、逆に、自身のクローンに、相手の生物学的女性のオリジナルあるいはクローン、場合によってはその両方に対して、精子を提供させることも可能である。
つまり、『働いてキャリアを積み上げていきたい』という考えと、『たくさん子をもうけたい、育てたい』という考えの
なお、人間の『繁殖』の前提条件として少なからず生じる『婚姻』に関しては、オリジナルの男女のつがいに加えて、それぞれの対となるクローンを含む合計四者間で結ばれる。そのため、便宜上ではあるが、夫は妻と妻のクローンとの両方を愛し、同時に妻は夫と夫のクローンとの両方を愛することが義務付けられる。
〈第三話『兵役』に続く〉
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