第11話ボイコットをする上級生。残されたチームメンバーの覚悟
休日練習の早朝のことだった。
平日の授業後の練習は恙無く行えていると思っていた。
カウンセリング明けの週から少しの違和感を感じていたのは部員全員が理解していたことだろう。
何か言いようのない変化を感じ取っていたのは僕だってそう。
あまり他人に関心が持てず敏感に心の機微を感じ取れる方では無いが…
それでも確かな違和感を感じ取っていたのだ。
それが本日の休日練習で唐突に顕になったのだ。
「集合時間五分前だが…人数少なくないか?」
主将の不知火はベンチ前に集まる部員を眺めながら少しだけ複雑な表情で口を開く。
今現在ベンチ前に存在している選手は20名程しか存在していない。
二年生は殆ど存在しておらず…
目視では物延の存在ぐらいしか確認できなかった。
「物延…大半の二年はどうしたんだ?」
不知火に問いかけられた彼は帽子を取ってからなんとも言えない表情を浮かべて事実を伝えていた。
「二年は…俺と茂木以外ボイコットをするそうです…」
「は?なんで?それに三年も殆ど存在しないが…
稲葉は何か知っているか?」
「噂程度にしか知らないが…二年と同じでボイコットをするらしい」
「は?皆んな何があった?一年は14名で二年が2名三年も2名…
マジで最少人数しか居ないじゃんか…
どうすんだよ…もう少しで夏の予選だって言うのに…」
「まぁ…仕方ないと一言では言えないが…
一年に簡単に席を譲った指導者陣に不満があるそうだ」
「は?そんなの仕方ないだろ…勝負の世界なんだからさ…
実力がある方がスタメンやレギュラーになるのは当然だろ…
何を子供みたいに駄々こねてんだよ…
ボイコットなんてしても現状は変わらないだろ…」
「そうだな。でも無駄な抵抗だとしても…そういう行為に縋りたいんだろ。
奴らの行動は匙を投げてしまった意思表明でもあるんじゃないか?
どうしようもない現状に嫌気が差して…
全てを投げ出すようにボイコットしてしまったんだろう」
「これって少しの間だけの話だよな?」
不知火が稲葉と物延と茂木に問いかけており…
彼らは首を左右に振って応えていた。
「は?じゃあ殆どの奴が退部するってことか?」
「その可能性は捨てきれない。戻ってくるやつもいるかも知れないが…」
「なんだそれ…夏の大会前にあり得ない…なんでチーム一丸になれないんだよ…」
「………」
かなり嫌な雰囲気が流れており…
一年は皆んな黙って状況の変化を待っているようだった。
好機が訪れたら口を開こうと数多くの一年が虎視眈々と待ち構えているように思える。
「じゃあ今日の所は一先ず…
この18名で夏の大会を乗り切ることを想定して練習に向かおう。
皆んなはそれで良いだろうか?」
不知火からの質問に一年生達は今が好機と言わんばかりに口を開いていく。
「そうしましょう。居なくなってしまった人の事を考えるよりも…
今は限られたメンバーでどうやって切り抜けるか。
どうやって夏の大会を少ないメンバーで制覇するか。
そちらに注力したほうが良いでしょう。
この様な問題が起きたからと言って…
優勝できなかった時の言い訳にはならないはずです。
主将も意識を完全に切り替えてください。
先頭を切って僕らを引っ張ってくれる主将にしっかりとついていきたいし…
絶対についていきますから」
須山が好機を見逃すわけもなく…
しっかりと盤面を掌握するようにコントロールして…
不知火はそれに頷いて応えると…
「じゃあこのメンバーでアップにいこう。
いつも以上に張り切って全力で行くぞ!」
「「「おぉー!」」」
選手たちは掛け声を上げるとそのまま限られたメンバーだけで外野に向かいアップを行うのであった。
18名と言う数少ないチームメンバーでアップを終えるとグラウンドで全体練習を行うことになる。
指導者陣は事務所にて現在の状況に頭を悩ませているようで…
しかしながら予期していた状況なのだろう。
特にこれと言って選手を集めて全体ミィーティングが行われる予定もなく。
不知火は指導者陣に本日のメニューを聞きに行き…
俺達はそのままシートバッティングの用意を始めたのであった。
概ねスタメンに固定されたメンバーが発表されていた。
一番センター不知火
二番ショート神田
三番キャッチャー須山
四番セカンド物延
五番レフト峰
六番ライト根本
七番サード柏木
八番ファースト丸尾
九番ピッチャー稲葉
スタメンが発表されていたが…
投手の稲葉と茂木がシートバッティングの投手を務めてくれて…
スタメンが先攻でシートバッティングは始まるのであった。
稲葉が先発投手としてマウンドに立っていて…
準備投球中に不知火はタイミングを合わせて素振りを行っている。
俺も同じ様に素振りを行っていると…
「今の状況…お前が望んだ環境か?」
意味深な言葉を俺に投げ掛けてくる不知火の言葉をどの様に受け止めれば良いのかわからずに…
軽く首を傾げて応えていた。
「そうか…お前が望んだ環境ではなくて一安心だ」
「どういうことでしょうか?」
「ん?俺が何も感じていないわけが無い。これでも一応主将だからな。
多くの新入部員が二、三年の実力に懐疑的で物足りなさを感じているのは分かっていた。
一年の中でも抜群に実力が長けている吹雪が先導して二、三年を排除する運動を行ったのかと思ったが…
どうやら俺の予想は外れたようで一安心だ。
今からチームの中心である吹雪がその様な行動を取っていたらショックだし残念で仕方がなかっただろう。
でもお前じゃなくてホッと胸をなでおろしている」
「そうですか…排除する運動って…そんなこと可能でしょうか?
僕らは最下級生ですし立場はそれほど高くないですよ」
「いやいや。入部してすぐにスタメン入りした一年が二人も居るんだ。
そこから実力を証明して…四人、六人に増えていき…
それだけでも一年が態度を大きくして幅を利かせようとしても可笑しくない」
「そんなことは…」
「スタメン入りしたお前らはそうかもな。
だけど勘違いして自分までも強くなった気になる選手が居ても可笑しくない」
「じゃあスタメン入りしていない一年がそういう運動をしていると思うんですか?」
「どうだろうな。可能性は捨てきれないが…無いとは思っている」
「では誰が…?」
「うーん。正直な話をすれば…検討もつかない。
一年がプレイ外で生意気な態度を取った場面を知りもしないし報告も受けていない」
「ですか…」
「まぁとにかく今は気がかりだったことが解消して安心したところだ。
これでシートバッティングに集中できるが…
練習が終わったら全員でミィーティングにしよう」
「はい」
「じゃあ新打線で今日も投手をコテンパンにしよう」
それに返事をしたところで準備投球は終了して…
一番不知火が左打席に入っていった。
須山ではない一年生控え捕手がマスクを被って稲葉にサインを送っている。
しかしながら稲葉は何度もサインに首を振り続けていて…
「おいおい。事前に打ち合わせしておいてくれよ。
夏の大会まで時間は限られているんだぞ?
無駄な時間は少なくしてくれないと困る」
不知火は一度打席を出ると一年生控え捕手に言葉を掛けていて…
捕手はマスクを取って謝罪をするとそのままマウンドに向かっていった。
バッテリーは話し合いをしっかりとするとサインは決まったようで…
お互いの思考なども少しはすり合わせることが出来たようだった。
「控え捕手は少ないんだ。お前も試合に出る可能性がある。
ちゃんと事前準備はしておいてくれ。
具体的に言わないとわからないとは思わないが…
各投手と沢山話をして配球や思考をすり合わせておくこと。
捕手のリードを完全に信じることが出来れば…
投手は余計なことに悩まずに投球に集中できるだろ?
同じ一年の須山は稲葉に既に信用されている。
お前に須山と同じことが出来ないとは思わない。
だから全ての準備を怠らずに試合に望んでくれ。
今のチームの状況からしてメンバーは限られている。
この少数で勝ち抜くには全員の意識を高いものにしておく必要があるんだ。
一人一人が今までの意識を切り替えて練習に臨んでくれ」
控え捕手は返事をするとそのまま定位置に座る。
サイン通りに投球が開始されて…
初球に何が来るか予想していた不知火は左打者のアウトコースにシンカー気味に沈んでいくチェンジアップにしっかりと照準を合わせて…
サードとショートの間を抜けるレフト前ヒットを放っていた。
「サード!一歩目が遅い!
ショート!投手の投球に合わせて守備位置を修正することを怠るな!
今の当たりを確実に捕れとは言えないが…
捕れるように努力してくれ!
吹雪が登板している時に守るのはきっとお前なんだぞ?
その時に三遊間を狙い撃ちされるつもりか?
これは全員に言えることだがしっかり意識を切り替えて練習に臨んでくれ!
今まで以上に気を引き締めて練習に臨むこと!
以上…練習再開!」
主将の不知火の喝を受けて全員が気を引き締めると…
シートバッティングは再開される。
二番の俺が打席に入ると捕手はすぐにアウトコースギリギリに構えている。
俺も余計なことだとしてもアドバイスをしたほうが良いのだろうか。
いいや…余計なことを知ってバッテリーに迷いを生じさせるのは愚策だろうか。
控え捕手の彼にも経験を積ませるほうが良いのだろうか。
俺は様々な悩みを抱えながら打席にてルーティンを行った。
初球からアウトコースにボール一個分外れていくツーシームが投げ込まれていて。
残酷なようだが海外でのストライクコースが頭から離れていない俺にとって打ち頃な球でしかなかった。
しっかりと右足を踏み込んで…
左中間に向けて打球を飛ばすようにフルスイングしていた。
練習中に使用している木製バットの芯を捉えると爆発音の様な轟音が鳴り響いていた。
高く飛んだ当たりは遠くを目指して大きく伸びていく。
一塁ベースに居る不知火は既に軽く走ってダイヤモンドを周っている。
一目で本塁打だと理解しているチームメイト。
俺も打球の行方を眺めながらダイヤモンドをゆっくりと周っていた。
左中間の深い場所…
フェンスを飛び越えてスタンドに放り込まれた打球を見送るとそのままホームベースに戻っていった。
「ナイスバッティング。本当に百発百中か?
お前を抑えることが出来るコースって何処だよ…
全く末恐ろしい打者だ。
マジでチームメイトで良かったぜ。
相手チームはここから三年間悪夢を見ることになるな…」
ホームベースの先で不知火が待っており俺達はハイタッチを行っていた。
三番打者の須山がネクストからこちらにやってくると口を開いていく。
「吹雪。控え捕手の斎藤にも教えておいてやれよ」
「あぁ。さっきのアウトコースだけど…
打ち取るためにボール一個分外すツーシームを要求していただろ?
あのコースだけど…
海外だとストライクをコールされるから…
俺にとっては打ち頃なコースなんだ。
先に伝えようと思ったんだけど…
しっかりと打たれてからじゃないと理解できないと思って…
他の強打者対策としては良い考えだったと思ったから先に余計なことは言わなかったんだ。
だけどきっとうちの打線はそのコースも打てるようになると思うから…
シートバッティングでは多用しないほうが良いと思う。
先に言わなくて悪かった」
「そうだったのか…
打席に入った吹雪が少しだけ悩んでいるような表情に思えたから…
何か考えていることがあったとは思っていたんだ。
良かった…
教えてくれてありがとうな。
これから修正するわ」
俺はそれに返事をして軽く右手を上げて応えていた。
不知火は先にベンチに戻っていて…
現在は俺達一年生だけの空間が出来上がっていた。
「須山…不知火さんが色々と勘付いているようだ。
探っているようにも思えたし…
あまり派手な動きは控えたほうが…」
「ん?何がだ?もう全ての準備は整ったんだ。
俺達はこれから何事もなくプレイに集中するだけさ。
今までに起きたことは全て闇に葬り去って…
本当に何食わぬ顔でこれからの三年間に注力するだけ。
だから吹雪も余計な心配はするな」
「わかったが…来年の新入生に同じ様なことをしないよな?」
「何を言っている?当然だろ?
来年から入ってくる新入生も…
九条監督やコーチが厳選を重ねた最有力選手しか入部してこない。
それこそ吹雪という絶対的な選手を中心にチームを構成していくんだ。
お前は神輿に担がれたと思って堂々としていれば良いのさ。
来年の一年は今年の一年以上に吹雪のことを神格化して扱うだろうよ。
今年の夏の大会で絶大な活躍をして優勝に導くお前をテレビで観て…
勝手にお前を野球の神様か何かと思って接してくる。
来年以降は今以上に自動的にやりやすい環境になるさ。
だからもう吹雪は余計なことを考えるな。
ただ無邪気に野球に集中しろ」
「わかった…」
俺は言いたいことがあった気がしたんだが…
プレイを止めるわけにもいかず…
返事をしてベンチに戻っていった。
「やっぱりあのコースは簡単か?」
ヘルメットを被ってバットを手にしようとしていた物延に声を掛けられる俺だった。
「ですね。海外の投手とは違ってストライクを取る意識ではなく…
こちらの投手は完全にコースを外そうとして投球しているので…
若干ですが無意識にも力を抜いて投球していると思うんです。
ですから完全に打ち頃の球になってしまうんですね。
だから今以上に意識を切り替えない限り…
例え稲葉さんだったとしても簡単に打てますね」
しっかりと自らの思考や意思を伝えてみせると物延は苦笑気味な表情を浮かべて頷いた。
「そうか。じゃあ相手チームの投手も同じ様に無意識に力を抜いた投球をしてくると思うか?
あのコースをしっかりと打てるようになったら…
打率は今以上に上がると思うか?」
「ですね。アウトコースはかなり得意になると思います。
ですが同時にここは日本ですから…
しっかりとインコースも打てないと対策されるでしょう。
一回や二回は偶然だと思われるかもしれませんが…
チーム全体がアウトコースが異常に得意だとバレてしまえば…
インコースをかなり攻められる様になるでしょう。
しかしそうなった時に問題なく打てれば…
相手バッテリーはかなりお手上げ状態になるでしょうね」
「そうか。ではアウトコースを今まで以上に打ち込む練習をして…
引き続きインコースも打つ練習を続けるしか無いな。
ありがとう。
アドバイス助かった」
物延はバットを持つとそのままネクストにてしゃがんでいた。
そのまま投手の投球を観察するように眺めているようだった。
「アウトコースに一個分外れるってすぐに理解できるものなのか?」
ベンチに戻ると不知火が声を掛けてきて…
五番以降を務める打者も興味深い内容を享受するように視線をこちらに寄越していた。
「先程も物延さんに言いましたが…
完全にコースを外して投球する様に捕手からサインを送られているわけです。
投手の意識は無意識にも力を制御する方向に少しだけベクトルが向いてしまうのでしょう。
普段は全力投球または八割ほどの力で投げていると思うのですが…
外すことに意識が向いていると五割から七割程度の投球になってしまうことが多いわけで…
ですから先程のツーシームは完全にアウトコースに外す投球だって理解できたんですね。
観た感じ明らかに球速が普段より遅いと理解できたので。
それに不知火さんがランナーで出ているわけですから…
コースを外しすぎて捕手が捕れなかったり態勢を崩していれば…
足の早い不知火さんが進塁してしまうでしょう。
ですから大体ボール一個分外すと予想が立つわけです。
それが理解できた後は…
思った以上に踏み込んでバットの芯を捉えることに意識を向けてフルスイングするだけです。
無理に引っ張る必要は無いですが…
逆方向からセンターに向けて長打を意識したスイングを心がけて打てば…
皆さんのパワーならほぼ確実に安打や長打に出来ると思います。
今までもアウトコースを打つことが得意な選手は居たと思いますが…
もうほんの少しだけ踏み込むことを意識して打つと良いと思います。
慣れてしまえば案外打てるようになります。
練習から意識的に狙って…
あ…でも控え捕手の斎藤には忠告したばかりでした。
ですから今日はあまり投げてこないかもしれません。
なので自主練などで意識的に練習するほうが良いかもしれませんね。
でも放ってきたら確実に打つようにしたほうが良いと思いますけど…
今までの意識を塗り替えるので数をこなすのが一番の練習になるかと…」
俺の長い説明に選手たちは何度か頷いて応えており…
不知火も同じ様に頷いて返事をすると口を開いていく。
「了解した。とりあえずチームメンバー全員がアウトコースの外れ球を確実に仕留めるようになったほうが良いな。
さっきの吹雪の言葉通りだとすれば…
外した球は力が抜けていると言うことだ。
球威のない球を叩くのは失投を打つことにも似ているはずだ。
もしもバッテリーが一球外そうとしたとして…
完全に大きく外すわけでもなく…
本当に引っ掛けさせるために外したボールを打てるようになれば…
うちの打線はかなり攻撃の選択肢が増えるわけだ。
よし!
全員意識して積極的にバットを振っていこう」
「はい!」
全員が共通意識を持ってシートバッティングに臨むことを決める。
そこからスタメンは稲葉すらも完全攻略するようにシートバッティングに挑むのであった。
その後もスタメンと控えメンバーは交互にシートバッティングを行って…
昼食を取り休憩をしっかりと挟むと…
午後は本格的に守備練習に従事していた。
俺は投手のポジションでもノックに加わり…
俺以外の一年生もショートの練習に参加して…
控えの一年生は自分が本格的に守るポジション以外も守備練習についていた。
チームメンバーが一気に激減したことにより…
全員でカバーするようにチームのために貢献する働きが求められていたのだ。
一時間に渡るノックが終了すると水分補給の休憩を20分。
そこから再び一時間のノック。
水分補給兼休憩20分。
これを完全に日が暮れるまで…
いいや…日が暮れてもライトを点灯させて長い事ノック練習は続くのであった。
全員がへとへとの状況でグラウンド整備を行った後ミィーティングが行われていた。
「正直な話をすれば今年は予想外の出来事が連発している。
だが限られたメンバーで試合に挑むことを既に覚悟した。
一度でも無断で練習を休み…
あまつさえ殆どの選手がボイコットをするとはな…
監督に就任してから初めての経験だ。
しかしながらその様な行動に出た選手をこの先使うつもりは毛頭ない。
だから彼らが戻ったとしても試合に出る機会を与えることはないだろう。
これは彼らが自らで選んだ選択だ。
俺の答えは今言った通り。
ここに居るメンバーしかこれから先使うつもりがない。
来年、再来年の一年生にはこういったことが無いことを願いつつ…
今年はこの18名で戦い抜くぞ!
全員が意識を切り替えて…
失った仲間のことは考えるな。
お前たちは自分のやるべきことに集中するんだ。
絶対に今年も夏の大会を制覇するぞ!
良いな!?」
残った選手たちは大きな声で返事をして…
九条監督や指導者陣はグラウンドを後にした。
「少しだけ残ってくれ」
主将の不知火の言葉でメンバーはそのまま残っていた。
「監督が言ったことは俺も同意見だ。
今日の練習前に少しだけ取り乱してしまったことを謝罪する。
此処から先…後一ヶ月もないが…
夏の大会予選に向けて日々全力で立ち向かうぞ!
相手は強大かもしれない。
だが俺達も負けていない。
絶対に勝ち続けるぞ!
俺達は誰にも負けない。
逃げて出ていったやつが悔しそうに表情を歪めることは目標ではないが…
ボイコットした連中を見返すためにも…
俺達が全力で活躍して勝利する姿を見せつけよう!
とにかく絶対に優勝するぞ!」
不知火の言葉に全員が大きな声で返事をすると…
選手たちは自らの道具を整備して片付けると早々に食堂に向かうのであった。
俺は普段通りに道具の整備をして…
ロッカーに荷物を入れるといつも通り自宅まで走って帰宅するのであった。
いつもより少ないメンバーで食事を取っていると…
「皆んなキツイと思うが今までの倍とは言わないが…
食事の量を増やすこと。
本日は果てしない守備練習を何度も繰り返しただろ?
今までよりも人数が少ない分…
沢山自分の出番が回ってきたはずだ。
体力はいつも以上に消耗しており筋肉も沢山消費したはずだ。
壊れた筋繊維を修復するのもそうだし…
純粋にぶっ倒れないように今まで以上に食事を沢山取ろう。
体力を何倍にも増やす意識で…
辛くても今は食べまくろう。
吹雪はあれだけ練習をしても肩で息をしていなかった。
それに加えてやつはこの後30km以上の道のりを走って帰宅するんだ。
最低でもあいつの体力に見劣りしないぐらいに鍛えようぜ」
不知火の言葉に全員が頷いて返事をして…
いつも以上に食事を摂ることに専念するのであった。
食事が終わり食休みをする。
そのまま疲労を癒すように風呂に入ると…
寮生全員が自主練に向かっていた。
アウトコースの練習を主に行っており…
単純にイメージをしながら素振りをする選手。
トスバッティングで意識を確認する選手。
ゲージに入ってマシーンを使用して実際に打つ選手。
本日の練習は守備中心だったので…
彼らは自主練を打撃練習中心で行うのであった。
「でも監督も不知火さんも簡単に覚悟を決めたな…」
一年のスタメンは固まって素振りを行いながら口を開いていく。
「そりゃそうだろ。ボイコットって…
今まで築き上げてきた信用を全部自らの手で崩す行為だろ」
「確かにな。未来を自らで手放したと言ってもいいな」
「だな。来年、再来年に入部してくる奴らに絶対に負けないように…
俺達も気を抜かないでいこう」
「よく分かってくれていて良かったよ。
吹雪を中心にチームを再構成出来て良かったよ。
全員やるからには絶対に活躍しような」
最後に須山が締めの言葉を口にして…
寮生はそこから深夜になるまで自主練に励むのであった。
次回へ…きっと練習試合です…!
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