第6話冬のトレーニングと言う名の…修行編スタート!

十二月が訪れていた。

寒さに挫けてしまいそうな朝がやってきていて…

ベッドから出るのも億劫な嫌な寒さが僕らを襲っていた。


それでも起きて練習に向かわなければならない。


早朝にアラームが鳴って俺はベッドから這い出た。

身震いするほどの寒さに凍えそうになりながら…

俺は階下に向かった。


「おはよう」


リビングでは暖炉に火が灯っており明らかに自室よりも温かさを感じていた。

父はメモ用紙とペンを片手に何かを記入している。

俺はそれを横目に椅子に腰掛けていた。


「まずはスープで温まりなさい。すぐに朝食を配膳するからね」


母親はマグカップにスープを注いでくれており僕の前にそれを運んでくれる。


「ありがとう。急に寒くなったね…」


「そうね。慣れるしか無いわ」


母親は俺に微笑みを向けてくれて…

そのままキッチンへと戻っていった。


「父さんは何を書いているの?」


俺はマグカップに息を吹きかけて軽く冷ましながら問いかける。


「あぁ。具体的なトレーニングメニューを考えていてな。

起きた瞬間に良いメニューが思い浮かんだんだ。

忘れない内にメモに残しておこうと思って…」


それにウンウンと頷きながら俺はマグカップの中身を口に運んでいた。

暖かなトマトスープが体全体に染み込んでいくようだった。

具材に玉ねぎや人参やじゃがいもや鶏肉が入っている。

おかずになってしまいそうなスープを口にしながら…

俺の空腹感は一気に増していた。

母親は朝食をテーブルに配膳してくれて…


「冬は特に沢山食べないとね。トレーニングの毎日になるんだから。

食トレを本格的に同時並行して効果的に体作りに努めましょう」


母親のありがたい言葉を受け取って…

俺は挨拶をすると食事に手を付けていくのであった。





食事を一時間ほど掛けて完食すると身支度を整えていた。

いつものようにユニフォームに着替えるとリビングで寛いでいる俺は父のもとに向かう。


「一先ず柔軟とストレッチを行おう。食休みを兼ねてしっかりと身体を整えよう。

今日は球場までランニングで向かう。

丁度10km程の距離だ。俺も付き合うからな。


帰りも同様にランニングで帰宅することになる。

この冬で一気に体力をつけるのと下半身を重点的に鍛える。


かなり苦行に感じる時間が続くことだろう。


だが冬の寒い時期はこれからもずっとこういう生活が続くと覚悟しておけ。

オーバーワークにならないようにしっかりと観察と管理を怠らない。


この冬でもう一回り大きくなろうな」


父の言葉を受けながら俺は早々に食休みがてら柔軟ストレッチに努めていた。




現在時刻が朝の7時を超えた辺りだった。

本日は9時〜10時までに球場集合とケインに言い渡されていたが…

冬の集合時間は曖昧だそうだ。


住んでいる所によっては約束の時間に間に合わない選手もいるそうで…

俺達も10時過ぎに到着するぐらいを目安にしていると思われた。


8時辺りまで十二分に柔軟ストレッチに励むと…

俺と父は外に出る。


「準備運動を行う」


父の言葉を合図に俺達親子は準備運動を追加で行っていた。


「後で車で行きますね。二人共気をつけてください」


母親は玄関から外に出てくると僕らに笑顔を向けていた。

父はそれに返事をして…

準備運動が終了すると俺達は球場に向けてランニングを開始するのであった。






父親はいつもより明らかにスピードを上げていた。

俺からしたら軽いダッシュぐらいのスピードで…

ずんずん目的地に向けて走っていく。

引き離されないように俺もどうにか食らいついていくのだが…


多分だが3kmも走った辺りで体力の限界が訪れていた。

膝に手をついてゼーハーと息を切らしていると…

父は少し先の地点で足を止めていた。


「まだまだ先は長いんだぞ。ここで体力切れしてどうする。

九回まで戦い抜く体力が無いと本当の意味で活躍など出来ない。


この間の紅白戦も良い例だ。

一打席目と二打席目はしっかりと深く集中していただろう。

けれど三打席目からのあれは何だ?


体力が切れているから深い集中に潜れない。

二打席連続で三振と不甲斐ない結果だっただろ?


そうなりたくなければしっかりと体力をつけろ。

体力があれば集中も続く。

加えて言うと暑い日だともっと早く体力を奪われるんだぞ?


そんなんで打席守備共に全力で出来ると思っているのか?


もっと自分を追い込みなさい。

今の地点が限界点なわけ無いだろ?

もっともっと成長の余白はあるぞ。


自分に厳しく。

もっと上を目指して全てのことに取り組みなさい。


厳しいことを言うようだが…

小学生だからと甘えるんじゃない。

その甘えがいつか自分を苦しめると思いなさい。


今が踏ん張る時。

苦しくても苦しくても止まること無く一歩を踏み続けなさい」


父は息切れしている俺に厳しい言葉を幾つも投げ掛けていた。


発破をかけられた俺は…

完全に父の血だとは思うが…

誰よりも負けず嫌いな俺は肩で息をしながらも…

もう一歩…もう一歩と足を踏み出していた。


父にも…自分にも…他の誰にも負けたくない。

俺は負けるわけにはいかない。


そう自分を奮い立たせるとランニングを再開するのであった。






長く苦しい時間がいつまでも続いていくようだった。


現在は何km地点なのか…


悔しいがその様な思考が脳内を占拠しているように思える。

本来の思考であれば様々なことに意識をして走るべきなのだろう。


しかしながら今は…

この苦しい時間から早く開放されたい。


悲しいがその様な思考が胸を覆い尽くしていたことだろう。


ランニングハイ状態になることもなく…

横っ腹を中心に内蔵を抉るような苦痛が全身を苛めているように思える。


呼吸が浅い気がして…

正しい呼吸に意識を向けていた。


父は俺よりも先を走っていて…

まだ目視できる位置にいるため…

とにかく食らいつくように走り続けて…




家を出てからどれぐらいの時間が経過しただろうか。

8時過ぎに家を出て…

現在時刻が非常に気になってしまう。

どれだけの時間を掛ければ目的地にたどり着くのだろうか。


ただただ雑念だけが脳内を覆い尽くしていて…

周りから見たら見苦しいほどの表情で…

とにかく目的地を目指したのであった。





置いて行かれないように父に食らいついて走り…

眼の前に球場が見えた瞬間に俺はギアを一段階上げていた。

その瞬間に俺は自らの思考に嫌気が差していた。


「この瞬間まで一段階ギアを残していたってことだよな…

それが無意識だったとしても…


俺は本能的に…

今までの距離を少しずつサボって走っていたということ…

明らかに本気を出し切って走っていなかったんだ。


それではこのトレーニングの意味が無いというのに…

見せかけの体力だけついても…

意味がない…


100%に近い力で走り切るトレーニング。

そうすれば体力の限界を底上げできる。


試合中も集中が切れない。


父の言う通り…

試合中に深い集中を切らせないために…


今日の帰りからは今以上に全力で走り続けよう」


俺は自らで自らを叱責するとすぐに思考を修正していた。

脳内では幾つも言葉が流れてきていて…

まるで限界を迎えた俺に幻聴を聴かせているかのようだった。


やっと球場の入口まで到着すると俺は膝に手をついて息を切らしていた。

父は先についており俺を待ちながら一人でストレッチを行っている。


「結構な時間を掛けてしまったな。もっとタイムを縮めるように心掛けよう。

今日はかなり遅いペースで先導していたが…

これについて来られないようでは…まだまだだぞ」


それに返事をするように頷くと俺も父の真似をするようにストレッチを始めていた。


「ストレッチが済んだら室内練習場に向かうぞ。

水分補給をしたら二人で出来る柔軟を行って…

十分休憩。

その後はトレーニングだ。


俺は先にケインに挨拶をしてくる。

今日は…と言うよりも冬は個人練習が主だと思う。

吹雪と二人で室内練習場にてトレーニングしていると報告してくる」


それに返事をして俺は父が戻ってくるまで入念にストレッチを行っていた。




数分後に父は戻ってきて…

俺達はその足で室内練習場を目指す。

父に手渡されたドリンクで水分補給を行いながら中に入るが人の気配はない。


「皆んなは?」


ドリンクを飲みながら…

俺は疲労の溜まる頭で適当な言葉を父に投げかけていた。


「あぁ。アップをしていたぞ。その後は素振りに専念すると」


「へぇ。素振りか…良いなぁ…」


思わず羨むような言葉が漏れると父は苦笑気味に微笑んでいた。


「吹雪に感化されたんだろ」


「どういうこと?」


父の返答を待ちながら俺はドリンクをベンチに置いていた。

そのまま柔軟を行うために床に腰掛けると前屈の姿勢を取って…

父は俺の背中を押し続けてくれていた。


「この間の二塁打に本塁打。あんなものを見せつけられたら誰だって触発される」


「今までだって打ってきたけど…?」


「そうじゃない。誰から打ったか。それが彼らの闘志を触発したんだろ」


「父さんから打ったから?あれは自分で言うのも悔しいけど…

たまたま思考が読めて…


父さんとは付き合いが長いでしょ?

だから本当に偶然読めただけで…

限界の俺の脳に幻聴が聞こえて打てたに過ぎない。


タイミングもバッチリと合って…

放られた場所にきれいにバットが出て…

しっかりと真芯を捉えてくれて…

それをフルスイングで振り抜いたに過ぎない。


一言で片付けるなら本当にまぐれと言っても過言ではない」


そこまで言って前屈を強く行っていた。

父は俺の返答を聞くと何が可笑しいのか軽く声を上げて笑っている。


「それの何処が偶然やまぐれだって言うんだよ。

色々な事を考えた結果打てたんじゃないか。


自分のことを過大評価するのもあれだが…

過小評価するのも大概にしたほうが良いぞ。

そういう過小評価が味方を苦しめることに繋がる時もある。


自慢して横柄な態度を取るのはもっての外だが…

こちらの選手に謙遜ばかりしていると煙たがられるぞ。


褒められたら感謝を伝える。

それぐらいが丁度いい。


過度な謙遜は敵を生むからな。

覚えておきなさい」


父の返答に本質的な意味が分かっていないにしても…

俺は返事をして柔軟の続きに取り組むのであった。






柔軟を終えて十分休憩に入った俺は筋肉を使用しすぎたのか…

膝が笑っているようで小刻みに震えていた。


「朝からいきなり10kmを全速力に近い速度で走ったんだもんな…

疲労を感じていても可笑しくない…

しっかりと休憩して次のトレーニングを疎かにしないように…」


脳内では次のトレーニングに意識が向いていた。

現在の自らの非力を軽く恨みながら…

俺は父が戻ってくるのを待っていた。


何処に行っていたのか…

父は室内練習場に戻ってきて…

そのまま道具倉庫の鍵を開けていた。


事務所に鍵を取りに行っていたことを理解した俺は軽く体を捻ったり伸ばしたりしていた。

父は道具倉庫から様々なトレーニング器具を取り出して…


「早速始めよう。かなりの距離を走って膝が笑っているだろう。

今日はまだあまり使っていない筋肉を中心に鍛えよう。


これはメディシンボールと言って…

怪我のリハビリで使うことが多いそうなんだが…

普通に効果的なトレーニングとして使用できる。


ダンベルとは違って形状がボールだからな。

投げたりして肩に刺激を与えたり…

体幹など様々なトレーニングに効果的なんだ。


一つずつ手本を見せるから。

それを参考にやってみなさい。


間違ったやり方でトレーニングすると怪我や故障の原因に繋がる。

正しいトレーニングで無かったら…

その都度注意するからな」


それに返事をすると俺は父の手本を参考にしながら…

体全体に刺激を与える…

メディシンボールを使用したトレーニングを開始したのであった。





肩から上半身…

体幹や下半身を含めたトレーニングが終了すると俺は一畳程のマットに寝転んでいた。

父は俺の全身をマッサージするように疲れ切った筋肉を軽く解してくれていた。

疲労感から来る眠気のようなものを覚えていて…

俺はマッサージを受けながら十分ほど眠ってしまう。


父は黙って俺のマッサージに努めてくれて…


「起きなさい。次はチューブを使用したトレーニングに入る。

投球フォームを意識して肩のインナーマッスルを鍛えたり…

繰り返すことで球速アップにも繋がると言われている。


冬のトレーニング時期や雨の日でグラウンドが使えない時はチューブトレーニングをもっと取り入れよう。


野球はチューブ一つで沢山のトレーニングが出来る。


一つ一つ教えていくからな。

身体に染み付くまで繰り返し行おう」


それに返事をした俺は起き上がって父からチューブを受け取っていた。


「早速始めよう。まずは…」


そこから父は先程と同じ様に詳しく手本を見せくれていた。

俺は再びそれを真似るようにトレーニングに取り組むのであった。





様々なチューブトレーニングが終了すると俺は再びマットに横になっていた。

父も同じ様にマットに寝転ぶと体を伸ばすようなストレッチの手本を見せてくれる。

それを真似ろと言っているようで…

俺も同じ動作を取っていた。

しばらく休憩すると…


「そろそろ下半身トレに入るか」


父はそう言うと再びメディシンボールを手にする。


「俺が下投げするから。それを沈みながら受け取って…

そのままスクワット。


かなりの負荷が掛かるトレーニングとなっているが…

1kg程度の負荷なら大した事ないだろ。


身体にも異常な負荷が掛かるとは思えない。


冬のトレーニングでは自重トレだけではなく…

少しずつ器具も使用していこうな」


マシーントレはまだ解禁されないようだが…

メディシンボールやチューブを使用したトレは解禁されたみたいだ。


「あくまで冬の間だけな。春になってグラウンドを使用した練習が再開されたら…

また自重トレ一本に戻そうな」


父の言葉に返事をするとメディシンボールの重みを利用したスクワットは開始されたのであった。






スクワットが終わると俺達は引き続き下半身トレを継続する。

ケインが用意していた平均台を使用した下半身強化。

それを限界を迎えるまで…

左右両方共に行うと俺は床に倒れ込んでいた。


肩で呼吸しながら完全な疲労感を感じていた。

父にドリンクを手渡されて…

十分な水分補給を行う。


膝が再び笑っていることを感じていた。

上手に力が入らないような不思議な感覚。

もみほぐすように太ももからふくらはぎまでを軽くもんでいた。

俺の苦行を耐え抜く表情を見ていた父は不意に笑顔で口を開く。


「この後は楽しい時間だぞ」


急にそんな言葉を投げ掛けられて…

俺は父に視線を向けた。


「タイヤ叩きの時間だ。木製バットでは折れる心配があるからな。

数本だけ倉庫に眠っていた金属バットを使用する。

ケインは本当に用意が良くて助けられている…


タイヤ叩きは初めてだと思うが…

バツ印が九箇所に記されていると思う。

これはストライクゾーンを表していると思ってくれ。

アウトハイからインローまで。

バツ印の上に1番〜9番までの数字が割り振られているな。


俺が番号をいうから…

そこを目掛けて打ち抜きなさい。


まずはバットコントロールの向上。


タイヤ叩きは初めてだから不思議な感覚に陥ると思う。

普通に叩くだけだと押し戻すように加えた力がこちらに返ってくる。


それを防ぐようにしっかりと押し込むことを意識しなさい。

捉えた瞬間にボールの威力に振り負けないように押し込む力を鍛えるトレーニングにもなる。


後は単純にスイングスピードの向上にも繋がるな。


少し古典的なトレーニングに思うかもしれない。

だがやってみると奥が深いぞ。


とにかく試しにやってみると良い」


父に言われた通り…

俺はバットを持つと左打席に入るように構えていた。


「まずは1番から。

アウトハイギリギリにフォーシームを差し込まれたとイメージしろ。

レフトスタンドポールギリギリに放り込むイメージを持ってスイングしなさい」


父に言われた通り俺はタイヤを全力で叩いて…

叩いた瞬間に反発する力がバットを通して腕全体に伝わっていた。

タイヤからバットが離れないように思いっきり押し込む。


「初めてにしては良いだろう。次は2番。

センターの頭を大きく越えてバックスクリーンに突き刺すようなイメージでフルスイング」


そこから父は番号を伝えた後に何処に打つべきかを注文してくる。

俺はバットコントロールと押し込む力とスイングスピードを意識して…

左右共に何度も何度も繰り返しタイヤ叩きを行うのであった。





集中しすぎてかなりの時間が経過していた。

室内練習場の時計を確認すると…

時刻は14時を指している。

腹の虫がぐぅ~と鳴った気がして我に返る。


「遅くなったが昼食にしよう。母さんが沢山のお弁当を持ってきてくれたぞ」


父はそう言うとベンチに並んでいる母親の手作り弁当に指を指していた。


「母さん来ていたの?」


「あぁ。タイヤ叩きに夢中になっていたから気付かなかったか?

今の時点から本当に凄い集中力だ。

それを今の内からもっと養っておこうな。


辛くなると集中力が切れるのは…

どの世界でも共通して言えることだろう。


深い集中に潜る意識を今の内からしっかりと感じておこうな」


それに返事をして…

俺はすぐに昼食に取り掛かるのであった。






父とともに昼食を一時間近く掛けて取ると食休みがてら俺達はマットに横になっていた。

柔軟とストレッチを必要以上に行うと…

父はマットから立ち上がる。


「では投球フォームの確認を行う。タオルを使ってフォームの確認だけな。

冬は投手陣もスロー少なめで設定しているんだ。


特に吹雪はまだ投手として完成した投げ方が出来ているわけではない。

フォームを調整して完璧に投げられるまでノースローでいこう。


ボールを使用しなくても投球練習は出来るからな。

その意識を忘れずに」


本日の父は言葉数が多いように思える。


どうやら冬のトレーニングは長く続くようで…

父と一緒にいる時間はこれから長く続くみたいだった。


俺もそうだが…

父も少しだけ浮かれているようで…

俺達親子は沢山の会話を重ねて…

深いコミュニケーションを幾つも図っていたのであった。






その後は普段通りの自重トレを一通り行う。

全身にかなりの疲労を感じていたが…

それでも俺はまだ何かやり足りない…

物足りなさのようなものを感じていた。


時刻を確認すると16時を指している所だった。

これから暗くなるまで練習をするのか…

それとも暗くなる前にランニングをして帰宅をするのか…

定かではなかったが父は何も言わなかったので本日のメニューは終了だと思われた。

俺は再び金属バットを手にするとタイヤのある場所に向かっていた。


「タイヤ叩きするのか?帰りの体力も少しは残しておいたほうが良いんじゃないか?

ここら辺の夜は異常に寒いぞ?


途中で止まったりしたら…

朝とは違って汗が冷えて凍える思いをする。


やるやらないは任せるが…

帰りのことも考えてな」


父の指摘を受けながら…

俺は日が暮れるまでタイヤ叩きに集中するのであった。






室内練習場の道具を倉庫に片付けると…

俺と父は揃って外に出る。

一通り鍵をして戸締まりを完璧に行った父は…

そのまま鍵をカラビナに掛けてポケットにしまっていた。


「よし。本日最後のメニューだ。再び10km走って帰るぞ。

帰ったら食事をしっかりと取って…

風呂でしっかりと全身を解しなさい。

柔軟ストレッチの後…

マッサージを行う。

しっかりと眠って明日に備えような」


それに返事をすると…

俺と父は10kmと言う果てしなく思える距離をただひたすらに走って帰宅するのであった。






朝よりも景色が暗くハイになっていたのだろうか…

それとも父が走るスピードを落としてくれていたのだろうか。

俺は一度も止まること無く…

無事に完走していた。


軽くストレッチをすると俺と父は家の中に入り…

母が用意してくれていた夕食をしっかりと食べていた。

風呂に入る前に素振りを…

そう思って庭に出ようとすると…


「今日はやめておけ。オーバーワークになる。

それぐらいのメニューを考えておいたんだ。


帰宅後の自主練はやめなさい。

怪我や故障をしたら元も子もないんだからな。


冬は特に焦ること無く着実に毎日一歩進むことをイメージしなさい。


お風呂に入っていつもの日課をしたら…

もう寝なさい」


父に珍しく止められて…

俺は少しだけ驚いた表情を浮かべてバットをしまった。


そのまま風呂に入ると…

いつも通りのルーティンを行って…

早々に眠りにつくのであった。




冬はまだ続く…

苦行が続くトレーニング(修行編)はまだもう少し続くのであった。



いざ、次回へ!

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