第4話巨人の一歩並みの歩幅で…!

「ミート力向上のためにフェニックスでは木製バットを使用しているだろ?

振り負けている選手が少ないことは驚きだが…

メジャーに行けば当たり前のことだからな。

今の内に完全に慣れておくことを勧める。


重さなどで不安を覚えている選手はとにかく素振りの回数を増やすこと。

フォームが崩れる心配をしている選手は自重トレのメニューを少し増やす。


効果的で新しいトレーニングを調べてきた。

色々と試して自らにフィットしたメニューを行うように。


しっかりと振れていない選手は…

はっきりと言って少ない。


だが…アレックスは少しだけ振り負けているように思える。

打撃センスとバットコントロールで安打を量産していたが…

将来的には長打を打てる二番打者になって欲しい。


一番打者の吹雪と二人で一点以上をもぎ取れる。

そういう一、二番であってほしい。


今から過大な期待をして申し訳ないが…

お前たちなら出来ると信じている」


練習前にケインは俺達を集めるとミィーティングを行っていた。

俺はこちらに来てから一ヶ月ほどが経過していて…

少しの日常会話は同じ言語で出来るようになっていた。


「アレックスが振り負けている?皆んなもそう思うか?」


彼の後ろの打順を任されているフォルテは首を傾げて仲間たちに尋ねていた。


「俺もそれが疑問だった。そんな風には思えない。フブキはどうだ?」


四番打者を任されているカイザーも静かに口を開いて最終的には俺に尋ねてくる。


「そうだな…振り負けているんじゃないと思うな。

ミート重視のスイングと言うか…

守備の合間を抜くような…

完全にバットコントロールに重点を置いたスイングだと思うけど…

アレックス…実際はどうなの?」


俺達の見解を耳にしたアレックスは軽く苦笑して口を開いていく。


「そうだね。フブキが言った通りだと思うよ。

けれどケインが言っていることも本当だよ。

木製バットに振り負けないほどのパワーがないのも事実。


がむしゃらに振ったら…

きっと今みたいに安打を量産できないと思う。

上手く当たっても長打に出来る自信もない。


確かに俺の当面の目標は身体づくりとパワーの向上だと思う。


チームの皆んなが評価してくれているのは嬉しいけれど…

皆んなみたいに長打力を身に付けないとね。


そうじゃないと…

相手チームの投手に二番打者には大きい当たりがないって思われる。


フブキの後ろを任されているからね…

開幕いきなりフブキが申告敬遠とかされるようになるかも…


だから俺も長打を打てるような打者になるよ」


アレックスは今まで言わないでいたが…

心の中で抱いていた不安を吐露するように…

仲間たちに思いの丈を口にしていた。


「そんなことで悩んでいたのか…アレックスにはアレックスの強みがあるんだ。

自分の強みを消す意味はないだろ?」


五番打者のマイケルが呆れるような表情でアレックスの肩を叩いていた。


「いいや。皆んなもメジャーを見越しているだろ?もちろん俺もだ。


そして俺はタイトルも狙えるような選手になりたいんだ。

そんな気持ち理解できるだろ?


打率だけでなく…色んなタイトル争いに絡みたいんだ。

皆んなもそうだよな?


だから強打者にもなりたいんだよ。

分かってくれるだろ?」


アレックスは自分の望みを恥ずかしげもなく口にして…

チームメイトもそれに納得の表情で頷いていた。


「だよな。じゃあ今日は俺と自重トレ中心にしないか?

ケインの話を聞いていた時からずっとその気だったんだ」


八番打者のミラーがアレックスを誘うような言葉を口にしていた。


「ミラーもらしくない事言うんだな。

お前だって足を生かした選手だと認識していたんだがな…」


六番打者で正捕手のマルスが訝しんだ様な表情を浮かべて口を開いていた。


「アレックスと一緒の意見だよ。俺だって足だけの選手で終わりたくない。

今はマイナーリーグやメジャーリーグの選手相手ではないからな。


投手のレベルだって内野手のレベルだってまだまだ低いだろ?

今は簡単に塁に出られるけれど…

その内…きっと難しくなる。


だから今の内にパワーを付けて打ち負けない打者になりたいんだよ。


スタメンを任されていてこんな事言うのは失礼かもしれないが…

俺だって八番打者で満足して落ち着いているわけにはいかないんだ。

上位打線に組み込めるような強打者になりたいってわけ」


「そうか?フェニックスは下位打線だって十分に強打者だと思うがな…

出来ないことに目を伏せるような歳では無いけれど…

強みを消すようなことはしないでくれよ?」


投手のハリスが全体を見越した言葉を口にして…

俺も思わず頷きかける…

だが瞬時に過った考えを否定するように頭を振った。


「上位打線を目指すことは非常に良いと思う。

健全的な思考な気がするな。


下位打線が駄目ってわけじゃない。

でも理想とする己の姿を追い求めることは悪いことじゃない。


結果的に何処を任されても自分が上位打線だと…

自分は強打者だと認識できるようになるまで…

好きにトレーニングや練習すれば良いんじゃないか?


絶対に同じ打順に二人座ることは出来ないだろ?

俺達も打順を奪い合うように切磋琢磨するのが健全的な思考な気がする。


皆んなが理想とする打順を奪い合おうよ。


その結果…定着した打順なら誰も文句や不満がないだろ?


現状はケインが練習の様子を見て考えた打順に過ぎない。

全員で希望する打順につけるように全力で練習やトレーニングに取り組もうよ」


俺の少しだけ長いお気持ちを耳にしたチームメイトは表情を崩していた。


それが笑みだったのか嘲笑だったのか…

それとも呆れていたのか…

一瞬で判断できるものでは無かったが…


「フブキの思考は正しいと思う。俺達が今ここで話し合っても埒が明かない。


皆んな未来の自分の姿を想像して…

理想の姿を思い描いてプレイしているはずだ。


だから本人では無い他人が否定的な言葉やアドバイスをしても無意味だ。


皆んな理想の自分を諦めるには早すぎるし諦める必要もない。

だから各々が目指すべき場所を見据えて練習に取り組もう。


フブキ…いい判断だった。


先に言われたのは悔しいが…

皆んなの意識をまとめてくれてありがとう」


感謝を告げてくるのは七番打者でレフトを守っているクリスだった。

俺は感謝を受け取ると軽く笑みを浮かべて見せる。

全員が納得の表情を浮かべて各々の場所へと向かっていた。


本日は個人練習を推奨されていて…

俺はハリス、マルスバッテリーとともにブルペンマウンドに向かっていた。

もちろん父も一緒に…


ケインが中心になって自重トレの新メニューを提案していた。

数名のチームメイトがケインに教わる形で自重トレに励んでいた。

素振りやトスバッティングをしている選手もいる。

どちらかと言うと打撃メインの自主練に励んでいるものが殆どだった。

先程の話し合いの後だから仕方がないと言えば仕方がない。


俺は父親と正バッテリーに誘われる形で投球練習に励むのであった。




「中々要領得ないのは当然だ。

自分にとって正しいと思えるフォームを見つけるのは容易いことではない。

様々な原因でフォームが崩れてボールに力が伝わらなくなった投手も沢山いる。

怪我だったり打たれるようになって考えすぎて崩れてしまった選手もいた。


俺は選手時代の早い内に自分にとってベストなフォームを見つけられたから幸運だった。


吹雪は投手になると色々と考えすぎてしまうようだな。


ではまずは野手投げでないキャッチボールから始めよう

指先に意識を集中させてスピンをしっかりと掛けるように意識して投げてみなさい。


縫い目に人差し指と中指をしっかりと掛けて…

強くスピンを掛けることだけに意識を持っていきなさい。


もちろん野手投げではなくな。


まずはここから始めよう。

打者の時の急成長の経験があるから…

俺も焦って教えてしまった。


まずは純粋にキャッチボールだな」


ブルペンマウンドでは正バッテリーが投球練習をしていた。

俺と父親は外野に向かうと少しずつ離れていくキャッチボールを開始する。


父に言われた通り…

縫い目に指の掛かりを意識して…

上から投げていた。


スピンを意識して…

打者の時に打席で観ていた父の投球を思い出していた。

父の球の回転数をイメージして…

リリースする瞬間に指先に集中して…


ビッと指を離れる瞬間に変な音がして…

ボールは今まで見たこと無い程の回転で父の構える胸元に飛んでいく。


「何だ。指先の感覚は難なく掴めたんだな。その意識を忘れること無くな。

もう一球投げてみろ」


父は高スピンを掛けて俺に返球する。

俺のスピンよりも回転数は明らかに多いことを感覚的に理解する。

グローブに収まった瞬間の轟音がそれを物語っているようだった。


父の今の投球を意識するようにボールを握ると…

縫い目に指先を掛けるように意識していた。


「手首を柔らかくして…スナップを効かせるように…

リリースする瞬間に指先に全力で集中…

縫い目に掛かっている二本の指で押し出す様に…?

引っ掛けるように…?


さっきのイメージを反芻して…


指先の本当に先端を意識して…

ぶっ放すように…スピンだけに意識を集中させて…


だけど…力み過ぎないように…」


一つの行動に意識を向けているようだが…

本質的なところでは様々なことを意識し考えている。

脳では尋常じゃないほどの思考が回転しており…

様々なことに意識を向けていた。


二球目も高回転で父の胸元に収まるボール。


キャッチボールの時から必ず相手の構える場所にボールを投げる。

それはグローブとボールを手にした時から父に言われていた事だった。

その意識を失った瞬間は一度もない。

練習の時からそれを徹底することで試合でもしっかりとスローが出来るということだろう。


その一つの行動をとっても僕らは高いレベルで練習に取り組んでいると言っていいだろう。

理解し徹底していることが増えれば増えるほど…

高いレベルで野球をしていると言っても過言ではないのだろう。


「うん。二球連続で高回転数だったと思うぞ。

次はブルペンに立たずに投球モーションも混ぜて投げてみろ。

もちろんスピンの意識を忘れること無くな。


何度も言うようだが下半身の体重移動は投球に大事なピースだ。

下半身で溜めを作ることも腰の回転も…

一連の動作を全て一級品にして初めて豪速球と言える球が投げられるようになる。


俺はそう信じている。


たまに無茶苦茶なフォームで凄い球を投げる投手もいるがな…

今はまだそれに意識を向けるんじゃない。


そういう投手もいるが自分はそうじゃないと思って練習すること。


最終的にそういう投手だったら…

独学で投球を深堀りしていくしか無いな。


とにかく意識をしっかりと持って投球に望みなさい」


「父さん…何度も言うようだけど…俺はショートをマスターしたいんだけど…」


「言葉を返すようで申し訳ないが…お前はいつか必ず投手を求められる。

それは運命のようなものだ。


俺の息子に生まれたからには…確実に求められる。

お前が望まないとしても…その時は必ず訪れる。


遅れて投手の練習をするよりも今からやっておく方が良いだろ?

逃れられない運命なんだ。

割り切って受け入れる他無いだろ?」


父の言葉に俺は苦笑を浮かべて…

仕方なさそうに頷いて応えた。


三球目は投球モーションに入ってフォームをしっかりと意識する。

父に指摘されたことをしっかりと脳内で反芻して…

様々な項目にチェックを付けていくように…

一つ一つ全てのことを丁寧に意識して…


放られた球は明らかに今までで一番の速球だったと思われた。


「良い球だった。球速が全ての投球練習ではないが…

今のは130km/h後半辺りだっただろう。


自宅のブルペンで投げた時は120km/h後半辺りだったと思うから…

10km/hとは言わなくても…

それぐらい球速が上がっただろう。

投手としてフォームをしっかりと意識しただけで球速が格段に上がる。


今のスピンだったら…

打者は球速以上の球威を感じることだろう。


次の投球も指摘した点を全て意識して投げてみなさい。

意味ある投球を重ねることが投手としての経験値を高めるだろう。


加えて言うのであれば…

まずは紅白戦で少ないイニング数を投げることだ。


慣れてきたら練習試合と…

何度も投球を重ねて経験値を稼ごう。


強打者と対戦すればするほど…

それをしっかりと抑える度に投手として強くなる。


お前なら出来る。

もう少し投げたらブルペンマウンドに行こう」


そこから十数球しっかりと意識をして投球すると俺達親子はブルペンマウンドに向かった。



ハリスとマルスは配球やサインの相談を重ねているようだった。

意識のすり合わせがお互いのストレスフリーなプレイに繋がると言うことなのだろう。

投手もストレスを感じるリズムの悪い投球はしたくないだろう。

捕手としても投手が要求している球が何なのか…

いつでもツーカーの仲のように把握しておきたいはずだ。


投手のリズムが悪くなれば守っている選手全員の意識を切ってしまう可能性もある。

気持ちの良い投球リズムから守備のリズムに繋がり…

飛躍した考えかもしれないが打者のリズムにも繋がるということだ。

全てのプレイが繋がっている。

そういう考えは悪くないと俺も思う。


それなのでバッテリーの話し合いは非常に大切だ。

捕手は自らの配球能力を投手に包み隠さずに伝えて…

投手も自らの思考や投球能力…

ランナーを背負った時の心境や強打者と相対した時の考え方。

そういった全てのことをバッテリーで事前に共有しておくことが大切で…


その回数や濃密な話し合いがどれだけ行われたか…

きっとそれがバッテリーの絆や仲を深めるのだろう。


故に事前の話し合いがどれだけ大切か…

どれだけ行われたかでバッテリーのために…

チームメイトのためになるか。

そういうことを正バッテリーは既に理解しているようだった。


俺はチームメイトとして彼らを誇りに思うように微笑んでいた。


「なんだよフブキ…ニヤニヤして…」


俺の表情に気付いたマルスが思考に水を指すような言葉を口にする。

深く潜った意識が水面に顔を出して俺は自らの表情を切り替えるように首を左右に振った。


「いや…なんでもない。理想的なバッテリーだと思ってさ」


俺の正直な気持ちを吐露してみせると二人を顔を見合わせて苦笑する。


「そうか?普段は殆ど話さないぞ?」


「マルスとは野球を通したコミュニケーションしか取ったこと無い。

プライベートでは性格が合う様な間柄じゃないさ」


「そうそう。ハリスと普段遊ぶこと無いからな」


二人は自嘲気味な表情でお互いの存在を否定するような言葉を口にしていた。


「そもそもプライベートで遊ぶ機会なんて無いでしょ?

毎日野球しているんだから」


俺は核心を突くような言葉を口にして呆れた表情を浮かべてみせた。

二人は俺の言葉を耳にして苦笑するように微笑んでいた。


「確かにそうだな。プライベートなんてあるようで無いもんな」


「学校生活でって話だよ」


マルスとハリスは困ったような表情で俺に言い訳のような言葉を口にしていた。


「ふっ。二人は本当に良い関係だよ。羨ましい」


「そうか?フブキとアレックスの関係も良いと思うぞ?」


「そうだな。フブキはカイザーやフォルテに一目置かれた存在だしな」


「ん?カイザーとフォルテって長けた存在なの?」


俺の純粋な疑問に彼らは少し驚いた表情を浮かべていた。


「知らなくて当然か。最近こっちに来たんだもんな」


「フブキはカイザーやフォルテと同じぐらいの好成績を収めているしな。

二人がチームの中でも特別な存在だって気付けなくて当然だ」


「フブキも同じ様な存在になりつつあるしな」


「アレックスもフブキに追いつくために必死だろ?

さっきのスイングの振り負けの話だってフブキを意識しての発言だろう?

パワーを上げて強打者の仲間入りしたいって…

フブキのバッティングを目の当たりにしてから感じたんだろうし。

悪い気付きじゃない…

二人も良い刺激を与え合っていると思うな」


俺は二人の話を耳にしてウンウンと頷いていた。


「そろそろ休憩は終わりにして…投球練習に入りなさい」


ベンチに座っていた父が声を掛けて俺達は再びブルペンマウンドに立つのであった。






投球モーションに入って投げたのは十球ほどだった。

自分なりではあるが中々の投球に思えたのだが…

父もハリスも浮かない顔をしている。


「ハリス。目に見えて気付いたことはあるか?」


父はハリスに問いかけていて…

急に声を掛けられたハリスは少しだけ驚いた表情を浮かべた後…


「軸足に体重を乗せる時…沈みが甘いと言うか…

下半身を強化しないともっと沈めないですね。

下半身から上半身…

最後の指先に全力で力を伝える為には…

俺だったらもう少し下半身強化に努めますね」


ハリスは思ったことをしっかりと伝えて見せて…

父はそれを耳にして何度も頷いている。


「ハリスは下半身を鍛えるためにどんなトレーニングをしている?」


「はい。ケインが近所の学校で使われなくなった平均台を貰ってきまして…

それを使っています」


「うん。軸足一本でで平均台に乗って…

そのまま沈み、ジャンプを繰り返すトレーニングであっているか?」


「はい。片方の足に負荷を掛け過ぎるのは良くないと…

両足ともにトレーニングしています」


「なるほど。ケインらしいトレーニングだな。

器具を使わずに効率的なトレーニングを推奨していると言える。


吹雪も今日から普段のトレーニングに加えてそれもメニューに追加しよう。


下半身トレは今まで少なかった様に思うからな…

向こうでは平均台を使うなんて発想が無かったからな。


そもそも持て余している様な学校に伝手がなかったし…

帝位高校の体育館や体育倉庫には眠っていた可能性はあるが…

俺もそんな発想が思いつかなかった。


柔軟な発想を持っているケインには脱帽だ。

色んな所から着想を得ているのだろうな…

現役の頃から変わらないやつだ…」


父は独り言を言うように自らの視野の狭さを反省しているようだった。

加えて言うのであれば元チームメイトを誇らしく思っていたことだろう。


「今日の投球練習はどうだった?指先の感覚は掴んだように思える。

体重移動や力の伝達も少しは掴んだはずだ。


如何にして下半身の力が大切か理解できたのも大きな収穫だと思う。


これは筋肉の構造の話になるだろうが…

太ももの前の筋肉が一番大きいんだ。

下半身から力が伝わることは当然といえば当然。


色んなスポーツや格闘技の選手が口にすることだが…

地面を掴むイメージとか地面を掴んで蹴るイメージ。


そういった言葉を聞いたことあるだろうか?


様々なスポーツで大事なこと…

きっと共通して言えることは下半身の強さや柔軟性。


もっと重点的にトレーニングやストレッチや柔軟に励もうな」


父の助言に返事をすると俺達はケインが用意したという平均台を探すのであった。





ベンチで自重トレの指導をしていたケインに尋ねた父は平均台の場所を教えてもらっていた。

俺は父の後をついていくと球場外の室内練習場に向かった。


「なんでこんなに良い施設があるのに誰も使わないんだ?」


父は室内練習場に到着すると辺りを見渡して感想を口にする。


俺も同意見で…

萬田シニアの選手はよく利用していたことを思い出す。


帝位高校一軍メンバーはあまり使用していたイメージがないが…

二軍以降はどうだったか。

部員数の多い帝位高校野球部ならきっと使用されていたはずだ。


「寒くなってから使うんじゃない?暑い中試合するわけだから…

暑さ対策として日中は外で練習しているとか?」


「いいや…ケインやこっちの仲間がそういう思考を持っているとは思えない。

熱中症で倒れるリスクを取るとは思えないんだ。

少しでも涼しい室内練習場を選択すると思ったんだが…

何か理由があるのか…?」


「なんだろうね。わからないけれど…空いているなら丁度いいでしょ」


「まぁ…そうなんだがな。早速平均台を使用した下半身トレを始めよう」


俺達は室内練習場の奥に鎮座している平均台に向かう。

そこから俺と父親は重点的に下半身トレに励むのであった。





本日の練習は個人練習のみだった。

たまにはこういう日があってもいいだろう。

少しだけ物足りなさを感じていた俺は…

帰宅すると左右両方の素振りを気が済むまで行うのであった。





明らかに様々なことが出来るようになり…

遊撃手としても投手(仮)としても打者としても…

俺は大きい一歩を何歩も何歩も重ねていたのであった。



次回へ!

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