第2話本番を想定した打撃練習。次回より投球練習が本格的に始動する!
登校初日。
物珍しい転校生にクラスメートは群がるようにして話しかけてくれる。
しかしながら言語はまだまだ理解できていない僕は身振り手振り多めで受け答えしていた。
彼らは俺を快く受け入れてたか分からない。
俺達は何処に居ても軽く煙たがられて来たのだから。
僕らチームメイトは平日も集まることを約束していた。
何故ならば僕らの全てを理解できるのはチームメイトしか居ないからだ。
必然的に仲間と一緒にいる時間が増えるのはおかしな事ではなかった。
平日の昼過ぎから僕らは専用グラウンドに訪れている。
もちろん父親達も集まれる人は積極的に集まっていた。
「まさか打席に立った時に来た球を打つだけなんて思考の人間は居ないよな?」
ケインが打撃練習を観ながら思わず口を開いていく。
現在はハリスがマウンドに立ち捕手もマスクを被って座っている状況だった。
「マシーンでの打撃練習はフォームや調子の確認でしか使いたくないんだ。
どの球が何処に来るか。
それが概ね予想できるマシーンを使うのを俺達はあまり好まない。
しっかりと生きた球を投げる投手に…
一球一球サインを要求する捕手が居る。
そういうバッティング練習じゃないと勝負感が養えないと考えている。
そんなわけで打者は一球一球考えて打席に立たないといけない。
捕手の要求する球を…
投手が投げたがっている球を…
しっかりと考えて打席に立っているだろうな?」
現在打席に立っているのは…
紅白戦で五番を打っていたマイケルだった。
「当然考えているよ。
それでも捕手のマルスの方が思考能力で勝っている場合もあるだろ?
投手が捕手よりも思考力に長けている場合もある。
捕手のサインに首を振った投手が本当に投げたい球を放ったとして…
打者は何処まで読み切れる?
少しぐらいの山を張って…
来た球を打つ場面だってあると思うんだが…
ケインはこれが間違いだって言うのか?」
マイケルは一度打席から出るとディスカッションするようにケインと向き合っていた。
けれど彼らは対話を大事にしているだけで…
何も言い合いをしているわけではない。
とても素晴らしい意見のぶつけ合いと言う名のコミュニケーションだ。
「それは試合の打席に限った話だろ?現在は打撃練習だ。
打つことが全ての練習ではないだろ?
思考力を養う練習でもあると思って欲しい。
投手と捕手の思考を完全に読み取って…
答えが合った時に打つべきではないのか?
一応打者は一打席ごとに交代しているんだ。
一打席一打席意味のある練習にするべきじゃないか?
打ったから上出来。
ではなく…狙った球がしっかりと来て…
それをしっかりと仕留めた。
それに意味があるんじゃないか?
来た球を偶然打つのとでは全然わけが違うと思うんだが?
そういうことをどれぐらい考えて打撃練習に望むか。
意味や意義のある打撃練習にしないと時間がもったいない。
そう思わないか?」
「確かにケインの言っていることは自らの能力を根底から上げる練習だろう。
けれど考えすぎて打てなくなっては元も子もないだろ?
調子を崩してまでする練習とは思えない。
打者としての感覚を損なわれる練習こそ無意味だ。
それに来た球を打つっていうことこそ試合を想定しているように思えるのだが。
それは俺だけの感覚だろうか」
「そうだな…ではマイケルは追い込まれた時に限り…
来た球を打つ。
そういう練習にシフトして欲しい。
追い込まれるまではしっかりと思考を回して配球を読んで欲しい。
必ず将来のマイケルの為になる。
お互いこれぐらいの譲歩でどうだろうか」
「ふっ。ケインが言うんだから意味のある練習なんだろうな。
俺には難しく思えて仕方ないが…
お互い譲歩しないとな…
分かった。
俺もしっかりと配球を読むことを心がける。
追い込まれたら好きに打つ。
これで良いだろうか?」
「もちろんだ。他の選手も意見があったら沢山交換しよう。
俺でなくとも…父親陣に何でも相談するように。
俺達は多くの経験値がある。
教えられることは沢山あるはずだ。
きっと役に立てる。
沢山コミュニケーションを取ろう」
選手たちはそれに適当に返事をして打撃練習を再開した。
次の打者であるクリスがバットを持って一度素振りを行う。
そのまま右打席に立ちルーティンを行う。
ハリス、マルスバッテリーとの勝負に燃えているクリスはかなり集中ができているように思える。
投手、捕手以外のポジションには父親達がついてくれていた。
俺達は打撃練習に全力を注いでいる。
一球目から右打席の胸元を抉るようなスイーパーが投げられていた。
クリスはまるで反応を示さない。
きっと狙っていた球でもコースでもなかったのだろう。
紅白戦でクリスは七番打者だったがかなりの好打者に思える。
二球目を放るハリス。
フォーシームがきれいにアウトハイへと収まる。
審判を兼任しているケインがストライクをコールして…
クリスは一度打席を離れる。
ストライクゾーンをしっかりと確認するようにバットでホームベースを叩くように確認していた。
「入っていたか?」
遅れて納得がいかなかったクリスは静かに声を出す。
「アウトハイギリギリだった」
「ちなみにケインのコール成功率は?」
クリスは捕手であるマルスに問いかけるように口を開く。
「ん?90%ぐらいじゃないか?
俺のフレーミングで10%ぐらいは騙されてくれているな」
「なるほど。10%しか騙されていないんだな。で?今のはストライク?」
「あぁ。俺もストライクだと思うぞ。打者からしたら遠く離れているように思うが…
左投手のハリスのフォーシームがアウトハイに収まるんだ。
右打者のクリスからしたらかなり遠くのボール球と思っても可笑しくない。
次に同じ様な球が来たらカットすることを勧める。
打てるなら打つほうが良いな」
「そうか。参考にする。中断して済まない。ありがとう」
クリスは感謝を告げると再びルーティンを行って右打席に立つ。
三球目に放られた球がインコースを襲撃する。
クリスがバットを出したのはかなり低めのアッパースイングだった。
「かなり低い位置からバット出していないか?」
隣で素振りをしていたアレックスがチームメイトに向けて声を掛けている。
チームメイトもそれに同意するように頷いたり返事をしたりしていた。
俺はそうでもない気がしていたが…
どの様な言葉で伝えたら良いのか迷っていた。
「スプリット!」
そう伝えるので精一杯だった。
クリスはスプリットを狙っているとどうにか伝えて…
チームメイトはその言葉で何かに気付いたのか…
クリスの打席へ再び目をやる。
次の瞬間の出来事だった。
ハリスが放った球は手元で急激に落ちて…
低い位置からバットを繰り出していたクリス…
木製バットの真芯をきれいに捉えていた。
打球はかなり高く速い速度で飛んでいく。
レフトスタンドへと真っ直ぐと飛んでいった打球はそのまま柵を越えていった。
クリスは満足そうにそれを眺めるとベンチに戻ろうと打席を外れた。
「そうだ。今のが配球を読む練習と言えるだろう。
よくやった。
最後の三振を取りに来た決め球のスプリットをしっかりと予想して捉える。
これが意味のある打撃練習と言えるだろう。
とにかく今のは良い打席だった」
ケインはクリスに称賛の言葉を送っているようで…
クリスも適当に手を持ち上げてそれを受け取っていた。
ベンチに戻ってきたクリスにチームメイトは声を掛け続ける。
「なんで最後の決め球がスプリットだって分かったんだ?」
「完全に狙っていたよな?」
「ベンチではかなり低い位置からバットが出ているってあきらめムードだった」
「フブキだけだぞ?スプリットを狙っているって理解していたの!」
「フブキもフブキだ!なんでハリスとマルスの思考が読めた?
対戦した数はかなり少ないはずだが…」
チームメイトの言葉を理解しようとしっかりと聞く姿勢を取る俺だった。
先に答えたのはクリスだった。
「今日の打撃練習で気持ちよく投げていたのがスプリットだった。
二球目のアウトハイの後だ。
インコースにスプリットが放られると簡単に予想した。
思った通りにことが運んだのはかなりラッキーだった。
けれどしっかりと予想が的中して一安心した。
フブキも読んでいたのか…
同じ思考力で嬉しいが…
少しだけ悔しいっていうのも本心だな。
打席に立っている俺にしか感じ取れない勝負感だと思いたかった。
流石にこの思考は傲慢すぎる考えだな。
直ちに修正する」
クリスは称賛を受け取った後に感想を口にして…
最後にはしっかりと反省する言葉を口にしているようだった。
「続けて次のミラーの打席も皆んなでしっかりと研究しよう」
クリスがチームを纏める言葉を口にして…
俺達はベンチ前で素振りをしながらハリスの投球にタイミングを合わせていた。
それと同時に打者のことも観察、研究して過ごしていた。
ミラーは紅白戦で八番打者を務めていた技巧派の選手だ。
足が早く本番ではセーフティも絡めるような…
投手としては非常に厄介な打者と言えるだろう。
それだけでなく選球眼に優れておりフォアボールも狙うような…
本当に投手としては面倒な打者である。
しかしながら根底の部分ではしっかりと好打者であるから…
これまた厄介だ。
甘い球を放れば確実に打ってくる。
塁に出れば足を絡めてバッテリーを翻弄する。
下位打線にこんな好打者が存在しているため…
バッテリーはずっと気を抜けないだろう。
フルカウントまで追い込まれていたミラーだったが…
そこから粘った数は十球を越えていた。
ミラーに対して投げた投球数は十七球を越えていた。
明らかに苛ついてきているハリスをどうにかなだめるマルスだった。
マウンドに集まった二人は一度しっかりと打ち合わせを行っていた。
きっと決め球について相談しているのだろう。
ミラーは思考を止めないように深い集中に入っていた。
目の奥に宿る闘志が他の選手にも視認できるような…
そしてチームメイト全員にその熱き闘志が伝播していくようだった。
ミラーのお陰で僕らはハリスの投球やマルスの配球を把握しつつ合ったことだろう。
彼は本当に好打者だとベンチ前で素振りをしている全員が思っていたことだろう。
マウンドから戻ってきたマルスはマスクを被って座る。
ハリスは打ち合わせ通りの球を全力で投げるようで…
決意の表情から繰り出された球は…
明らかに高めに浮きすぎている。
幾らこちらのストライクゾーンだったとしても完全にボールだった。
ミラーはそれを確認して…
試合だったらしっかりと見送っていたことだろう。
だが現在は打撃練習だった。
試合本番を想定した打席。
そういう打撃練習だが…
いくら本番を想定してもこれは打撃練習なのだ。
フォアボールを選択する意味を感じなかったであろうミラーはバットを強引に出した。
悪球打ちの要領で繰り出したバットの真芯に…
偶然当たってしまい…
打球は前打者と同じ様にレフトスタンドに向けて飛んでいく。
レフトを守っていたクリスの父親であるネスはフェンスまで一直線に全速力で走っていた。
「やれやれ。二者連続でホームラン打たれているようでは…
お前の投球練習にならんだろうに…
マルスもこの場面で変化球を要求するとは…
すっぽ抜けて大きな当たりを打たれているじゃないか。
打たれるのは嫌だろうが…
ストレートを放らせる場面だろ。
投手の能力を今の時点から信じ過ぎなのだ。
こういう場面で守備が援護しないとな…
投手はどんなきっかけで一気に崩れても可笑しくないっての…!」
フェンスギリギリに飛んでいく打球。
しかしながらこのまま入るのは明白な当たりだった。
クリスの父親であるネスは右手でフェンスを掴むとよじ登り…
華麗にジャンプをしていた。
左手のグラブの中にしっかりと収まるミラーの打球。
「ちっ!ネスのやつ…年甲斐もなくはしゃぎやがって…
俺達の打撃練習でもあるんだっての…」
ミラーはボールの行方を見送ると打席を離れてベンチに戻ってくる。
かなりの悪態をついているように思えるミラーに仲間は声を掛けていた。
「仕方ないさ。このままハリスの調子が崩れたら…
打撃練習にも投球練習にもならないだろ。
ネスが本気を出して取ってくれなければ…
練習は終了していた可能性もある。
とにかく今のは仕方ないと割り切って…
練習継続できることを感謝しておこう」
「分かっている。だからベンチで愚痴るだけで抑えているんだ」
「それにハリスだってまだ…
俺達と同世代の十二歳の少年だぞ?
二者連続ホームランなんて打たれたらメンタルが折れる。
今のは本当にネスに感謝しないと」
チームメイトの会話をしっかりと聞いていると…
「え!?ハリスって十二歳なの!?」
思わず聞き返していた。
アレックスは意味がわからないような表情を浮かべた後にウンウンと数回頷いてみせた。
「すげぇ…十二歳であの完成度…本当にすげぇ…」
俺は思わず感嘆のため息を吐いて感動していた。
「感動している場合じゃないぜ。次の打者はフブキなんだから」
異なる言語で俺に言葉を投げかけるチームメイト達。
それに笑顔を浮かべて頷くと俺はバットを持って打席に向かった。
ハリスは左投げであり今回も右打席に入るつもりでいた。
「フブキ!ハリスとの対戦だけど…左で勝負したほうが良いよ!
左投手が苦手なのか分からないけど…
レフトはネスが守っているんだ!
甘い打球ならさっきみたいにキャッチされる!
左打席に立ってインコース狙いで捉えたほうが良いと思う!
右打席でもフブキならスタンドまで持っていけるかもしれないけど…!
万が一のことも考えて…!」
ベンチからアレックスが身振り手振りを交えてアドバイスをくれていた。
しかしながら俺はそれをなんと無しに理解していたが…
首を左右に振って応えていた。
「どうして…強情になる場面じゃないだろ…!?」
アレックスの嘆きの言葉を背中に受けながら…
それでも俺は右打席に立っていたのだ…
その理由も簡単なものだ。
今は打撃練習。
練習で出来ないことは本番では絶対にできない。
何度も何度もまぐれがあるような世界ではないのだ。
だから練習の間に全てのことを出来るように心掛けたかった。
左投手との対戦は出来るだけ右打席で練習しておきたかった。
本番で左右を自由に選択できるように…
練習で完全に出来るようになっておきたかったのだ。
アレックスの言いたいことも理解できる。
本番を想定した練習だからこそ…
味方同士でアドバイスをしあって結果を残すことに重きを置く。
どちらもリアリティのある考え方だと思うが…
向かうベクトルが多少違うだけだと思っていた。
俺達チームメイトは本質的な思考も似通っている。
各々が練習に対する姿勢の違いはあれど…
全員が本番をしっかりと意識して練習しているのだ。
俺はそれがかなり心地よくて仕方なかった。
打席に入った俺は帝位高校正バッテリーとの勝負の時ほどの余裕がなかった。
球速はハリスのほうが10km/hほど遅い。
しかしながら長い手足から繰り出されるダイナミックな投球。
優れた柔軟性が可能としている多彩な変化球。
肩関節や手首や腕や体全体。
全ての柔軟性が今までのどの投手よりも優れているように思える。
もちろん父を抜いたすべての選手だが…
高い握力が可能としているスプリット。
左投げではかなり珍しいスプリットの使い手だ。
しかもその変化量は打席に入ると驚くべき落差だった。
簡単に打てる投手ではないことは確か。
変化球のキレや変化量は驚きの一言だ。
打席に入ってルーティンを行うと守備位置を確認していた。
レフトはかなり後ろを守っているように思える。
ショートはサードよりでセカンドはセンターよりだった。
ファーストとサードはしっかりとライン状を閉めていた。
今の守備陣から抜けるような当たりを繰り出すのは難しく感じていた。
センターは左中間よりでライトもセンターの方へと数歩移動していた。
何を狙い何処に打つか。
それをまずイメージして…
後は投手の投げたがっている球と捕手の要求する球。
それらを全て感じ取りながら…
ちゃんと読むようにして思考を高速回転させていた。
一球目が放られて…
インハイに絶好な球が放られる。
ストライク先行で調子を取り戻したいハリスと…
それをしっかりと理解しているはずのマルス。
インハイギリギリにフォーシームだ。
それを理解していた俺はバットを出すのだが…
打者の手元で一気に落下する。
空振りをした俺は思考を逆手に取られたことに気付く。
「ハリスもマルスもやるな…」
一度打席から外れると今の球をイメージして素振りをする。
イメージがしっかりと定着した俺は打席に入る。
もう一度心を落ち着かせるためにルーティンを行う。
二球目もインコースに攻められていて…
連続でスプリットはないと読んでいた俺は…
今度こそフォーシームだと読む。
きれいなスイングの下を通るスプリット…
「二球連続かよ…このままだと調子付かせることになるな…」
独り言のように口にして再び打席を外す。
思考の裏を完全に読まれている俺は深呼吸をして天を見上げていた。
三球目の投球モーションに入るハリス。
明らかに自信のある表情で投げられていることがわかる。
三球連続でスプリットはない。
「いいや…でも…マルスのリードなら…」
などと言う思考に陥っている次点で俺の負けなのだ。
思考を一気に切り替えて…
クサイところはカットすることに切り替えていた。
三球目から七球目まで粘って繋ぎ止めた俺は冷静さを取り戻していた。
思考の切り替えが成功したお陰で…
打席でも完全にリラックスしていた。
放られた八球目。
2-2と平行カウントの現在…
どちらかと言うと俺のほうが不利に思えてならなかった。
それでも…
俺はこのバッテリーの思考がやっと分かってきていたのだ。
この読みで俺の勝ちだ。
そう確信して出すバット…
「ここはスプリットだろ…フブキはここで三振だな…」
「フォーシームで勝負する場面ではない。勝負を急ぐ必要もないしな」
「でも…その思考の裏を読まれていたら?」
「確かにな。俺もフォーシームを狙うだろう」
「お前らはどっちだ?」
ベンチでは配球予想をしながら俺の打席の行方を眺めていた。
俺はフォーシームだと予想していた。
殆ど確信に近いイメージで…
放られたコースにきれいにバットを出していた。
木製バットの真芯をしっかりと捉えていた。
力負けしないようにフルスイングで振り抜いた打球は…
きれいなアーチを…
と言うよりも弾丸ライナーの様な当たりで左中間に飛んでいき…
レフトもセンターも追いかけるのをやめるほど…
圧倒的なホームランでこの勝負に幕を引いたのであった。
そこからも俺達は何度も対戦を繰り返して…
ハリスとマルスが打席に立つ時は紅白戦で父の後に投げた投手が担当していた。
俺達は守備について生きた打球をしっかりと処理する守備練習を兼ねていた。
練習が終わり…
まだ日が落ちていない時間だった。
チームメイトは素振りをしたり柔軟やストレッチをしたり…
中には自重トレに励んでいるものもいる。
俺はマルスに釣れられてブルペンに来ていた。
もちろん父親も一緒に。
俺は左投げの練習をしており…
「もっと下半身を意識して。投球も腰の回転を意識に入れて。
全身の体重移動。手の指先から足の指先まで全身に意識を集中させて。
今まで対戦してきた投手をイメージするな。
俺の現役時代のイメージが頭にあるだろ?
それを参考にして投げるんだ。
わからない度に聞くこと。
とにかく今は鮮明にイメージの中にある俺を参考にするんだ。
細かい注意は後でまとめてする。
あまりにも外れている場合は逐一言うからな」
父親の指導により…
俺は日が暮れるまで投球練習に努めるのであった。
練習が終わって俺は初めて両肩にアイシングをしていた。
父の車に乗りながら俺達親子は帰宅していた。
自宅では母がたくさんの料理を作っており…
俺達はかなりの空腹感から一気に食に手を付けていた。
「吹雪。先に言っておくが…今はまだ変化球を投げようとするな。
遊びでも決して投げるな。
投げ方にクセが出来る可能性があるし…
正しい投げ方が定着する前だと肩や肘の故障にも繋がる。
とにかく今は如何にして真っ直ぐをコースに放るかを意識しろ。
球速面は下半身のトレーニング。
それに全身の柔軟やストレッチ。
ハリスの柔らかさを打席で理解したはずだ。
肩甲骨を意識した投げ方。
肩や腕や手首の使い方。
生まれ持ったものもあるが…
今までどれほど柔軟やストレッチをしてきたか分かっただろ?
投手にとっても柔軟性どれだけ大切か理解できたはずだ。
明日以降も少しずつ投げさせる予定だ。
練習後はしっかりとアイシングも怠るな。
そしてしっかりと栄養を取るんだ。
俺に負けないぐらいな」
父親は最後の言葉をジョークを言うように微笑んで言う。
俺は真に受けて返事をするとしっかりと食事を取るのであった。
翌日からも行われる投球練習…
何故だかわからないが…
俺は打撃や守備練習と同じぐらい…
心が踊って…楽しみに…
思いながら眠りにつくのであった。
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