第5話果てしない渇きを癒してくれる相手は現れるのか…?
優勝旗を持った選手たちが一度一軍専用グラウンドを訪れる。
大会を無傷で勝ち抜いた選手たちは優勝旗を持ったままグラウンドを一周する。
沢山の関係者が割れんばかりの大きな拍手を贈っていた。
主将である雪城がグラウンドの外に出てくると学校関係者に優勝旗を手渡していた。
そのまま優勝旗は学校に飾られるそうだ。
「皆様。本当によくやりました。
テレビで貴方達の活躍を毎日のように拝見しておりました。
投手陣は全試合無失点とまさに偉業でしたね。
打線は毎試合爆発。
全ての試合が観ていて気持ちの良いものでした。
本当にお疲れ様です。
では優勝旗はこちらで預かります。
本当に優勝おめでとうございます。
加えて春夏三連覇。
まさに偉業達成。
こちらも併せておめでとうございます」
帝位高校の校長先生と思われる男性に優勝旗を渡した雪城は帽子を取って深く頭を下げていた。
「多少早い気がするが…本日より新チーム新体制で練習を行うつもりだ。
大学、プロ、メジャー等々に声を掛けられており進路が決まりつつある三年生は…
道具を持って第六グラウンドに集合。
梅田、仙道…それに私からの熱い要望により…
二人の対戦相手を務めてもらいたい。
メジャールールで本気で勝負をしてもらうつもりだ。
新チーム新体制でいくと言った矢先に申し訳ないのだが…
捕手は真鍋に努めてもらう。
お前もU‐18の代表として招集を受けるはずだ。
だからお前も新チームとは別メニューで特訓だ。
実践の感覚をずっと鈍らせずに継続させておくぞ。
新チームは全ての一、二年生を集めてこい。
再び背番号を白紙に戻し…
帝位高校はここからリスタート。
また新たな可能性を追い求めて…
前チームよりも強いチームを目指すぞ!」
九条監督の言葉を受けて選手たちは大きな声で返事をする。
僕は進路が決まりつつある三年生と真鍋に混じって第六グラウンドを目指していた。
「吹雪。久しぶりだな。中継観てたか?」
真鍋が気さくな表情を浮かべて近づいてくると肩を組むようにして話しかけてくる。
「観ていました」
「どうだった?」
「えっと…どういう質問でしょうか?」
「うーん。吹雪から観て…もしも帝位高校相手に打席に入っていたら…
そう仮定して…大会本番中の俺達は怖い相手だと思ったか?
やり辛く相手にしたくないナインだっただろうか?」
「俺に聞いて…意味があるんでしょうか…」
「まぁ…なんというか…あくまで参考にしておきたくてな」
「ですか…あの球場に立って…真剣勝負をしていたわけじゃないので…
ですがあくまで俺もイメージの中での対戦の話をすれば…
やはりなんというか…四打席あれば一、二本は確実に打てていました。
本当にあくまでイメージでの対戦の話ですが…」
「………そうか。吹雪なら…そうだよな。
正直に言えば…もっと打てただろ?」
「………はい」
「そうだよな…この後の対戦で…きっとそれを証明するんだろうな…」
「そうかもしれませんね…どうなるかはわかりませんが…」
「大会本番でも吹雪以上に厄介な打者は居なかったよ。
梅田さんも仙道さんも…投手陣は全員口を揃えてそう言っていた。
吹雪と対戦した経験があったお陰で…大会本番でも気が楽な場面が多かったらしい。
「相手の打者は吹雪じゃないんだぞ」
そんな言葉を投手陣で掛け合って…
多くの場面を切り抜けてきた。
お前の御蔭もあって多くの相手打者は怖くなかった。
感謝する。ありがとう」
「いえ…実際に戦ったのは皆さんですから…」
「お前の御蔭も少しはあるんだよ。素直に受け取れ」
「はい…」
真鍋に感謝される言葉を受けて俺は返事をしていたのだが…
実際の所は早く勝負がしたくてウズウズしていたのだ。
この後…散々勝負をして打ち負かすつもりでいるのだ。
感謝されるような立場ではないし…
もうやめてくれって言われるほど打ち負かす気でいる。
俺は夏休み中に観た父の現役時代の映像のお陰で…
また一つ化け物じみた進化を果たしていたことだろう。
いつでもイメージの中で対戦する世界最高の投手。
そいつに勝ち越すことこそが俺の当面の目標であり…
とそこで俺はふっと気付いてしまう。
俺の中に存在する世界最高の投手はもう現役で存在しない。
そうなると…
俺は現実では誰を倒すことを目標にして打席に立ち続ければ良いのだろうか。
そんな疑問が浮かんでは…
ふっと父親の顔を見ると…
「眼の前の投手を倒し続けることだ。果てしなく…引退するまで永遠に…
そうだろ?それ以外に何がある?
ずっと打席に立ち続ければ…きっと吹雪も出会うだろう。
その時代の最高の投手という存在に。
その時に確実にそいつを負かせば良い。
眼の前の投手との対戦を一つ一つ楽しみ続けなさい」
父は俺の気持ちや不安を感じ取ったようで…
先んじて答えをくれた父に俺は心が救われたような気分だった。
笑顔を浮かべて頷いて応えると俺達は第六グラウンドに到着したのであった。
第六グラウンドにて俺達は丁寧にアップを済ませる。
帝位高校野球部一軍スタメン全員が集まっており…
梅田と仙道は肩をしっかりと作り終えていた。
今か今かと対戦を待っている僕らはベンチの前で固まっていた。
「梅田さんと仙道さんに気持ちよく投げさせるだけの練習ではありません。
メジャーと同じストライクゾーンで勝負する意味を打線も考えましょう。
皆さんも九条監督や指導者陣に期待されているのですよ。
二人に負けないほどの選手であると思われているのです。
簡単に打ち倒されることなく…
食らいついて…
打ち負かすぐらいの気持ちで挑んできてください!」
真鍋はベンチ前で素振りをしている全員に発破をかけるように声を掛けていた。
「ふっ。既に主将としての自覚があるようで何よりだ。
これで俺達が引退した後のチームもまとまったものになるだろう。
きっと良いチームが出来上がる。
元主将として一安心と言ったところだな」
どうやら僕がいない間に次期主将は決定していたようで…
雪城は真鍋の言葉に返事をして…
珍しく嬉しそうに微笑んでいた。
「吹雪。遠慮するな。打てると思ったらガンガン打っていけ!」
「はい」
返事の後に俺もバットを持って素振りをして過ごしていた。
その様子を一目みたレギュラー陣は…
思わず見惚れるように自らの素振りをやめてバットを下げていた。
それに遅れて気付いた俺はキョロキョロと全体を見渡していた。
「何ていうか…一段と威圧感あるスイングになっていないか…?」
元副主将の米良が驚きの表情とともに感想のようなものを漏らしていた。
俺はどの様な反応をするのが正しいかわからずに…
「夏休みを頂いたので…フォーム改造をしてもらいました」
「そうか…これはまた…神田コーチはやってくれたな…」
レギュラー陣の目の色が明らかに変化して…
闘志に無理やり薪が焚べられたようだった。
轟々と音を立てて燃え盛る炎にも似た剥き出しの闘志が…
僕らの前には存在しているようだった。
「よし。概ね用意は出来たな?
今日のルールは普段と多少変化する。
メジャーのストライクゾーンは忠実そのものだ。
詳しく言葉にするとわかりにくいんだが…
とにかくこっちでは無い高めの球もストライクとコールされる。
こっちではベルト付近から膝まで。
ベルトより上は殆どストライクをコールされない。
しかし梅田と仙道はメジャー志望を表明した。
それなので二人にはこっちでは高めのボールと思われる球を積極的に投げてもらう。
こっちでは明らかにボールと思う球だからこそ…
投手は投げることに抵抗を覚えるかもしれん…
それなので今の内から当たり前に投げられるようになってもらう。
そして打線は高めをどう打つか。
そういうことを試行錯誤して挑んでもらいたい。
去年から本格的に練習し取得したパームアップ打法をしっかりと意識して打席に望んでもらいたい。
高めに集まるからとスイングが乱れないように。
自らで思考を回転させて答えにたどり着くこと。
出来ない選手に答えを優しく授けてくれるコーチばかりがいる世界だと思うなよ。
一の助言で十も百も受け取って自らの血肉にすることを今から覚えておけ。
それでは梅田から投球を始めてもらう。
打順はいつも通り。
吹雪は九番に入りなさい」
九条監督のアドバイスや助言に大きな返事をすると僕らは早速高めに来るボールを意識したスイングを試して過ごすのであった。
投手と打者。
両者が得する特訓が始まっていた。
梅田から投げ始めて…
一番打者から九番打者の俺まで打者が一巡するまで投げる。
左投手である梅田との対戦で俺は早速右打ちを試していた。
右打席に入る俺を見て帝位高校野球部一軍スタメンは驚きの表情を浮かべている。
「付け焼き刃の右打ちで梅田さんから打てると思っているのか…?」
マスクを被る真鍋は多少の苛立ちのような感情を俺に向けている。
しかしながら俺が何も言わずに構えてみせると…
「多少は様になっているのかよ…
何か考えがあるようだし…色々試すのも練習だよな…」
真鍋はすぐに溜飲が下がったようで冷静さを取り戻していた。
梅田は一球目から早速高めにストレートを放ってくる。
ベルト付近に投げられたと感じていたストレートは一気にホップするように高めのストライクゾーンに収まった。
九条監督がストライクをコールして俺は一度打席の外に立つ。
深呼吸すると考えをまとめるために思考を高速で回していた。
「梅田さんに取ってメジャーのストライクゾーンは有利以外の何物でもないよな。
打者にとってこれだけ高めにホップするようなストレート…
完全に打ちづらいだろ。
今までは低めに制球することに苦しさを感じていただろうけど…
こんなに投げやすそうにしている梅田さんは初めて見たよ。
捕手としてもサインを出しやすくて…
お互いに気楽だ。
吹雪もどうやって打つかしっかりと考えろ」
真鍋は梅田に返球するとマスクを取って俺にもアドバイスのような言葉を送ってくれる。
それにヘルメットのつばを触って応えると再び右打席に立つ。
二球目はアウトハイから打者に向かう様に急激にインコースへ曲がり沈んでくるスライダーが放られる。
放られた球はインコースギリギリベルト付近に収まり…
九条監督はストライクをコールする。
簡単に追い込まれて多少の焦りを感じている俺だった。
しかしながら俺は夏休みに出会ったケインのことを思い出していた。
TVモニターで父親の過去の活躍を見ていると…
ケインの打席が何度も映ったのだ。
「この投手も左打者の天敵だった。簡単に打っていたのは業ぐらいだ。
うちのチームは左打ちが多い時代だった。
この投手が相手の試合は右打ちが期待以上の活躍を要求されたものだ。
そういう時に俺は業に質問を繰り返した。
サウスポーが嫌な右打ちってどの様な選手かを。
何をされると何の球種を狙い撃ちされると嫌なのか。
業が決まって嫌がったのは…」
ケインの言葉が急に脳裏に過っていた俺は…
狙いを定めていた。
その球種が放られたら確実に打ち返す。
それ以外の球はクサイ所含めて全てカットする姿勢だ。
三球目が放られて…
完全に打ち取るために放られたスプリットはベース付近でワンバウンドする。
思わずバットが出そうになったが…
回っていないことが告げられて俺は首の皮一枚つながった状況だった。
「審判によっては回ったと言っていただろう。もう少しで打ち取れたのにな」
真鍋は以前の勝負の時と同じ様によく喋る捕手だった。
俺を煽る技術の高さも全力で打ち取りに来ている証拠。
「このまま勝てるよ!」
真鍋は梅田に返球するとエールのような言葉を投げかけていた。
明らかに今日の梅田は調子が上向いている。
俺は完全に絞った一球が放られることを願いつつ…
次の投球を待っていた。
「今日決まっている球を打たれるのは本当に最悪の気分になるな。
特にその打者が全く手が出なかった球をもう一度要求されて…
絶対に打てないと確信して投げたのに打たれた時は…
流石にメンタルに来ることが多かった。
その日のその後の投球が一気に大きく崩れる投手だっているほど…
本日自信のある球を打たれるのが一番最悪だな。
そういうことに嗅覚鋭く反応する選手がいるんだ。
その球だけに的を絞って打ってくる。
投手のメンタルを的確に削り取ってくる好打者は多かったな」
父親は昔を懐かしむようにケインに話を振られて答えていた。
俺は父の投手としての貴重な言葉を脳裏に刻んでいた。
梅田が放った球は本日自信のある球。
真鍋が要求した確実に打ち取れると感じていた球。
バッテリーの意識や思考は確実に一致していた。
絶対に打ち取れる。
バッテリーが自信のある球を自信のあるコースに放られて…
その球は一球目に放られたホップするような高めのストレート。
まるで手が出なかった俺が苦手意識を感じていると思ったはずだ。
一球目は見の姿勢で…
右打席に立った時の左投手の見え方をリアルに感じていたのだ。
一球目をリプレイするような投球に俺はきれいにバットを出して…
真芯を捉えた当たりはセンター方向に強く高い当たりとなり勢いよく飛んでいく。
「嘘だろ…全く手が出なかったんじゃないのか…?」
真鍋の嘆きが聞こえてきて梅田は膝に手をついて項垂れていた。
梅田はすぐに顔を上げて打球の行方を祈るように眺めていた。
だが…そんな祈りも虚しく…
バックスクリーンに吸い込まれていく打球にバッテリーは顔を見合わせて苦笑している。
「U‐18の代表に招集されても…こんな好打者いませんよね…?」
真鍋はマウンドの梅田の下へと向かい苦笑気味に口を開く。
「さぁな…居たとしても驚きは覚えないだろう。
吹雪以上に苦手意識がある打者は今後現れる気がしない」
「ですね。俺も捕手として何を要求するのが正しいのか…
吹雪は対戦する度に強くなっています。
俺達だって全国で無傷で帰ってきたっていうのに…
かなりレベルアップして帰ってきたはずでしょ?
なのにいとも簡単に打たれる。
しかもあいつ…右打席に立っていましたよ?
多分ですけど実践で初めて立ったはずです。
なんで打てるんですか…?
相手は梅田さんですよ…?
本当に意味がわからない。
嫉妬などの醜い悪感情で押し潰されそうですよ…
思わず小学生の吹雪に大人気なく当たってしまいそうです…」
真鍋は珍しく本音を愚痴るように先輩投手に打ち明けていた。
「そういう気持ちも理解できる。でも乗り越えよう。
俺達もここで腐っていられないだろ?
吹雪に負けないように…
前に上に進み続けよう」
「はい…梅田さん…ありがとうございました…」
「なんてこと無い。俺は一応エースでお前の先輩でもあるからな。
悩みを打ち明けられたら…しっかりと応えるさ」
「はい…本当にありがとうございます…少しだけ気持ちが救われた気分です」
「そうか。次は仙道だ。切り替えて上手にリードしてやれよ?」
それに頷いた真鍋は気持ちを一気に切り替えてマウンドから去るのであった。
右投手の仙道がマウンドに立っていた。
打線も苦戦を強いられる中…
各選手が工夫をしてバッティングに務めている。
あっという間に俺の打順が回ってきて。
今度は左打席に立つ。
バッテリーの二人が苦い表情を浮かべていたが…
「ここをしっかり打ち取りましょう!
吹雪を抑えることが出来れば…
僕らのフラストレーションも解消できるはずです…!
大分後輩に対して向ける様な敵意じゃないですが…!
僕らの未来のためにここはしっかりと打ち取って終えましょう!」
真鍋は剥き出しの闘志を隠すこともなく…
仙道に向けてエールのような声を投げ掛けていた。
俺に対する完全なる敵意が向けられている現状で…
明らかに優勢を感じて…ニヤリとニヒルな笑みが溢れていた。
左打席にて仙道という投手の性格や球種など…
プロフィール込みのステータスを思い出していた。
だが以前の勝負とは明らかに変わった仙道。
彼は全国大会で一皮むけたと父が思わず溢していたことを思い出す。
「どういうところが?」
その質問に父は悪い笑みを浮かべて俺を試すように挑戦的な言葉を残す。
「再戦した時に自らで感じたほうが良い。その方が自分の血肉になるだろう」
父親の返事を思い出して…
俺は打席に立って…
仙道との再戦は始まったのであった。
一皮向けたと言う父の言葉の意味を確かめるように…
俺は追い込まれるまで見の姿勢で投球を確かめていた。
今のところ以前との違いに気付けない。
何が変わったのかと思考を回転させ続ける。
カウント2‐2と平行カウントの状況。
クサイ所に放られることは予想できる。
この状況でストライクを焦る様な投手ではないし…
真鍋もその様な捕手ではない。
今までの対戦経験がそれを確実に教えてくれていた。
ボール半個から一個分外すようなクサイ所に放ってくるだろう。
思わず手を出して引っ掛けて凡退。
今までの二人だったらその選択を取るはずだった。
投球モーションに入った仙道だった。
わざとらしく左打者のアウトコースへと移動して構える真鍋。
このままアウトコースに放られるわけがない。
インコースに曲がるスライダーが予想されて…
あまり踏み込まず溜めを作っていると…
向かってくる球の軌道は明らかにスライダーのものではない。
スプリット系の落ちる球がアウトコースギリギリに放られている。
このまま手を出さなければ三振で倒れる。
かなりの焦りを感じながら溜めを作る腰を気持ち早く回転させて…
どうにか間に合う形でバットが出てくれる。
気持ちよく真芯を捉えることが出来なかったが…
変化球が落ちきるギリギリの所でバットの先に当たってくれる。
手に尋常じゃない痺れが走り…
思わずバットを放りだした気分に苛まれる。
しかしながら今までで一番の我慢をして…
どうにか振り切ってみせる。
ボールはサードの頭を越えるか越えないかの微妙なライナーとして飛んでいっていた。
俺は完全に打ち取られたと感じ…
しかし今はあり得ないほどの手の痺れを抑えることに必死だった。
「サードライナーだな。ただまぁ…メジャーの選手の守備ならだが…」
九条監督の判断を聞いた俺もバッテリーの二人も複雑な表情を浮かべていた。
誰も納得のいかない勝負が幕を閉じて…
そこからも帝位高校打線と梅田、仙道の真剣勝負は長いこと続くのであった。
本日から練習が再開されて…
俺達は早速夜遅くまで夢中になっていた。
梅田、仙道との本日の対戦はどうにか勝ち越し。
「明日も頼んでいいか?吹雪…そろそろお前も俺の成長の糧にもなってくれ」
「俺も同意見だ。スタメンと吹雪と戦うのが一番レベルが上がる気がする」
「捕手として吹雪という好打者をそろそろ攻略したい。俺からも頼む」
三者三様の意見を聞いて俺は喜んでと言わんばかりに破顔して返事をするのであった。
帰宅した俺は食事をしっかりと取って入浴を済ませる。
湯船で疲れを癒やして…
上がったら日課の柔軟を行って早めに就寝するのであった。
俺は本日の吹雪のバッティングの動画を見直していた。
「わざと追い込まれているな…
もっと簡単に打てる球は何度も来ているというのに…
やはりまだ吹雪に俺の現役時代の映像を観せるのは早かったのでは…?
ケインよ…どう責任を取るつもりだ…
今の吹雪はどれだけ難しい球を打つかに重きを置きすぎている。
甘い球を放られても見ている…
あいつは…誰と対戦しているつもりなんだ…?
何を…何処を…誰を…目指し追い求めていると言うんだ…
我が息子ながら…果てしない貪欲さに…強者を渇望しているようだ…
吹雪の渇きを癒してくれる存在は…
本当にいつか現れると言うのだろうか…」
俺は親として…一人の元選手として…
吹雪のことが心配で仕方がなかった。
本日の動画をケインへと送信して…
翌日返事が来るまで…
俺は不安に包まれながら眠りにつくのであった。
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