第2話 足跡


ーーー今から遠い遥か昔

この世界、フィルメーシュに突如として大厄災が訪れた

それはあまりにも美しくそしてそれは『世界の死』を表していた



「ルノ!早く早く〜!」


「お話が終わっちゃうよ〜!」


「まってよ〜!」



かつて古代龍という種族がルミネアという小さな国に住まう頃、彼らは「星護」と言う天命を女神アーシェス様から与えられていた

『星護』とは始まりと終わりを告げる星々を守り平和に暮らしていた



「ルノ!コハク!待って!」


「どうしたの?リコリス」


「これ、なんだろう…」



ーーだがある日、大勢の人間という種族がルミネアに訪れた

赤い光をその手に持ち、ルミネアを襲った。彼らの目的は古代龍そのものだった。古代龍は人間の手によって多くの犠牲をだしその多くが物が光となり消えていった



「動物の足跡…?でも不思議な足跡だね」


「僕たちの足の形とも違う」


「新しい動物がフルアの森に遊びに来たのかもしれないよ♪」


「…でも、どこから?」



大厄災『天魔の涙星』

光となってこの世界から消えた古代龍の涙とされる星々がフィルメーシュを襲い、地から這い出た魔獣たちによって世界に綻びが生じ、全てのマナを失い、フィルメーシュが枯れたとされた。

厄災は生きるもの全てをも飲み込み、そして

世界の本当の死が訪れる時



「えーと、『外の世界』から!とか……?」


「わぁぁ!『外の世界』!?いいないいな!

どんな動物さんなんだろう?お友達になれるかなぁ?」


「足跡が沢山あるね…、大きいから大人かなぁ…。『外』からきたならここは迷子になっちゃう。長老にお話しして一緒に探してみるのはどうかな?」



 その時、ここフルアの森にある創世の母「世界樹」が光り輝き、地から這い出た魔獣たちを消し去り大厄災を終わらせたーーー

そして世界樹はここにさらに大きな根を張り

新たな命とそして現在も尚、『世界の柱』とし

厄災を封じているのだ

今日の御伽噺はここまで。続きはまた明日話すとしよう






ーーーー


チチっとフルアの森に住む小鳥達が羽ばたく

御伽話を聞いていた子供達は、次はどんなお話なんだろうと周りの子達と花を咲かせながら木の実を食べる


「長老!あのね!」


「さっき、みたこともない大きな足跡を見つけたの!もしかしたら『外の世界』の動物さんかもしれないよ!」


「迷子になっちゃうと思って、みんなで一緒に探したほうがいいと思うの…。森は似たような場所が多いから」


キラキラした目でぴょんぴょんと長老の周りをくるくると飛び跳ねる、ルノとコハク

この世界樹と共に生まれたフルアの森の長老カルアは3人の頭を優しく撫でる

先ほどから森の木々が騒がしく痛々しい『悲鳴』が聞こえる

チチチと小鳥達が慌てて飛び立つ


ーーにげてにげて

ーーここは危ない

ーー怖い怖い


カルアの表情が険しくなる

フルアの森の動物達が慌てて逃げる

何かが倒れる音と地響きが森に鳴り響く


「みんな、わしの側にに来なさい。決して離れるではないぞ」


「どうしたんだろ…」


「逃げてって何から…?」


「長老、森が…」



フルアの子供達は不安に駆られ長老の周りに集まる。そしてガサガサと草を掻き分ける音と

けたけたと聞いたことのない乾いた笑い声と

逃げ惑う動物、草花、木々の苦しむ声が響く



「おい見ろよ!やっぱり、あいつの言った通りだ。こいつらがここを守ってるっつう奴らだ

みたところ、老耄1匹とガキ共しかいねぇじゃねーか」



ガサガサと草木を掻き分けてきた黒いフードを被った何かは

ニタニタとした笑みを浮かべ手には真っ赤に燃えた松明


「おい。古代龍はどこにいんだよ!

肝心なのがいねーじゃねぇかよ」


はぁと溜め息を吐く黒い人物

イライラした様子のそれは、草花を踏みしめる


「はぁ…。おい、ガキ共。お前らの大切な神獣ってやつはどこに居んの?お兄さん達、神獣…、つまり古代龍って奴を探してんだけど。ちょっとそいつに会いたくて、遥々ここまで来たんだよね」


「古代龍に会えれば俺らはここから出ていくからさ、ね?教えてよ。古代龍とお友達になりたいんだ」


ニヤニヤと黒いフードから覗き見る白い歯

顔は見えない


「お前さん達、ここには古代竜と言う生き物は存在しない。彼らは大昔にお主ら人間が滅ぼしたのだろう。血と肉を求め、不老を得ようとしようと無駄なことを。不要な争いをして何になる。ここから立ち去りなさい、ここはお前さん達がくるような場所ではない」


「はぁ、そうかよ…。わかったよ

無駄足だったな、おいお前ら帰るぞ」


「……」


じっと長老は後ろを向いた黒い人物達を警戒しつつ子供達の前に立つ


「なぁんて、帰るわけねぇーだろ!じじい!

俺らも仕事できてんだよ!!」


くるりと振り向いたそれは赤い光を踏み潰された花に付けると赤く大きく燃えあがる


「殺せ」


チチチと小鳥達が逃げ惑う音が聞こえた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

木漏れ日の唄~ボクと君と死んでいく世界~ @mii122508

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ