第7話 制御された力

 ひび割れた工事現場に広がるのは倒れた前衛たちと吹き飛んだ工事車両たち…

その片隅でボロボロの盾を構えた桜木さんが立っている


 その後ろには泣き叫ぶ少女が一人…

彼女は逃げ遅れた少女に気付き、攻撃から守ったのだ


「大丈夫…だから、必ず守るからね…」


 そこにゆっくりと、怪人が近寄ってくる。


「はぁぁ!」


 半壊した盾を前に怪人に突進を仕掛ける

しかし盾は掴み、砕かれ、桜木さんは地面に叩きつけられる


「ギュルルぅん」

「いっやぁ…!」


 すでにボロボロの桜木さんの腕を掴み、怪人はニタニタと笑みを浮かべている


 チュンっ!鋭い音と共に放たれた弾丸を怪人は軽々と避けてしまう


「手ぇ離さんかいワレ」


 再び狙撃隊が狙いを定める

だが怪人は桜木さんの首に手を回しこちら側に向けてきた


 遊んでいる…人の命をこうも簡単におもちゃみたいに扱うなんて…!


「ぐっう…がはっ」


 キリキリと首に力がかかっていく

少女も恐怖で立ち上がることはできない…


「ギュルルぅん」

「こいつっ…手出せへんやないか…」


 よく見ると怪人の表面の傷が少しづつ塞がっていることがわかる

このままではまずい…人質が取られている上、時間をかければ回復されてしまう


 銃撃はできない。近接部隊は壊滅状態…今動けるのは…


「僕が二人を助けます…」

「ぉ、ぉぃ!ゆゆ、ゆうき!何をっ!?」

「ごめんなさい!髙木さん、、」


 立ち入り禁止となったエリアに走る

 万が一のことを考えて腕の装置から信号を送る

 

「おい何者だ!?止まれ!近づくんじゃぁない!」


 他の隊員の静止を振り切り地面のひび割れた工事現場に入る

 そのまま怪人の目の前まで走る!

 僕の目的は注意を引くこと!そして…!

 

「ギュリュリュん?」

「ゆう、きくん…」


 怪人は嬉々とした表情で武器を構え始める

まるで新しいおもちゃで遊べることを喜ぶ子供のようだ


 こうなったらやるしかない…

 怪人の足元に滑り込んで少女を抱き抱えた

 

 遠慮なく武器は再び地面に向けて、僕に向けて振り下ろされる


 今だ


「変身っ!!!!」


 さっき送った信号に反応して目にも止まらぬスピードで衛星が飛んでくる

一瞬で分離した衛星は僕の体に装着され、砂埃を上げながら一気に加速する


 ブウぅぅぅぅん 


 音を置き去りにしたその衝撃はひび割れた地面を襲い、打ち砕く

二度の攻撃に耐えかねた地面は崩落し、凄まじい音を立てながら落ちていく


「大丈夫だった?衛星?」

「はい。変身時に使用するパーツの一部を少女の救出のために使用いたしました。

彼女は無事に救助され、パーツも直に戻るでしょう。

救助用のドローンとでも誤魔化せばZ-GEARが公にされることもないでしょう。

あと、私は人工知能Ζ(ゼータ)ですユウキ様」


 人工知能のいうとおりパーツはすぐに飛来し、仮面となって装着された

 暗い下水道に落ちたようだが仮面のおかげで周囲の状況を認識することができる


「桜木さん!」


 気を失っているが、息はある


「ギシャオォォ!!!」


 しかし、その前には怪人が立っている。しかも傷はほとんど治っている。

右手の大槌も健在だ


「ユウキ様。あの攻撃を何度も受けるのは危険です。補助しますのでできるだけ避けてください」

「わかったよ!ありがとう」


 睨み合い、少しづつ近づいていく


「グリュううる!!」


 怪人の大槌が振られる!避け…


「ぐっ!」


 すんでのところで防御が間に合った。なんだ!?前と比べて体が重い?


「ユウキ様。現在Z-GEARはユウキ様の身体の状況を考慮し、力を制御したセーブモードでございます。運動能力に違いはありますが、耐久面に差はないのでご安心を」

「先に言ってよ!」


 よく見ると胸部のパーツに黒いバツ型の装甲がつけられている。


 再び振るわれようとする大槌、、


 これは少し、まずい状況なのでは…

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