第5話 理由
「あのね、私たちと一緒にチームを組んで欲しいの」
「え、えぇ!?」
想定外の申し出に大声を出してしまった
恥ずかしい!!
落ち着くんだ僕!ここは冷静に理由を聞かなくちゃ
「なんで僕なんかを…?」
「それはねぇMCIの隊員は4人1組で扱われるんだけど…」
確かに…周りを見てみると何となく4人でかたまりが別れているように見える。
それにこちらを見て少しあざけうような雰囲気を感じる…
「はっきり言うとあたしたちあまっちゃってるのよ!
あたしは防御役だけど小柄で信用されないし…、焔くんはみんなが不気味がって近寄らないし…、髙木くんはこんな感じでコミュニケーションが苦手だし…」
桜木さんの表情は本気で困っていることを物語っていた。
「不気味って酷いわァ、なぁ?楓」
「びゅひょう!へぇ、つん」
いつの間にか背後に立っていた焔くんに髙木くんは声にならない悲鳴をあげている
「こんな調子だしね、はは…もし、佐藤くんが良ければ、でいいんだよ」
訓練の経験や、MCIのコミュニティを持たない僕にとっては願ってもない申し出だ。
あの兵器、、「Z-GEAR(ゼータギア)」を使いこなして西宮隊長や風間総司令の期待に応えるためにも僕はすぐに実力をつけなくちゃダメだ…そのためには…
「お願い、します!足手纏いかもしれないけど、役に立てるようになりたいんです!僕を、チームに入れてください!」
桜木さんの不安げな表情は瞬く間にくしゃっとした愛らしい笑顔に変わった。
「本当!?ありがとう〜そうと決まったらチーム名決めようか!あ、でも自己紹介が先かな?したいことが山ほどあるよ〜!」
男性陣二人は少し驚いた様子で顔を見合わせていたけど、すぐに笑顔でこちらを見てくれた
「ほなよろしゅうな、これからの訓練も任務も4人でできるわけやし」
「あ、ある、gとうゆううき…」
「ハイっ!これからよろしくお願いします!」
***
僕たち4人がチームを結成し、和気藹々と過ごしていた頃。MCI本部関東基地に福本蒼太は呼び出されていた。
「失礼します…第三部隊の福本です、。ご用件はなんでしょうか、、風間総司令」
外からの光が入らない真っ暗な部屋に男が二人。風間のパソコンから漏れた光のみがその空間を形作っている。
「そんなに警戒しなくて結構、今日は勇気君に関して質問があってね。君を呼んだんだ」
「勇気、ですか?」
意外だ、と蒼太は思った。てっきり新兵器に関する口止めが行われるのだと覚悟していたからだ。
「あぁ、彼について少し調べさせてもらったが、、、幼い頃に家族を失っているそうじゃないか……」
「…!!」
「それ以来、君の家が彼を引き取ったそうじゃないか…明確には祖母の家か、君も両親が、、ねぇ?最近その祖母も亡くなったそうじゃないか。ご冥福をお祈りするよ。
若いのに勇気君の学費や生活費のためにMCIに早期入隊するなんて立派だよ蒼太くん!実に立派だ!並の覚悟じゃない…」
「ありがとう、ございます…」
「謙遜する必要はない、本気で感心してるのさ」
すでに蒼太は風間という男のもつ妙な迫力に気圧されていた。
無意識に後退りしているが、なざか風間から目が離せない…
「さて、、本題に入ろうか…何故彼の両親は亡くなったのかな?」
脂汗が蒼太の頬を撫でる…。部屋に緊張が走る…。
「か、怪人による殺害です…」
「やはり!そうだよねぇ!納得がいった!彼の人を助けようとする思いに一種の執着心を感じたんだよ!」
風間は椅子から立ち上がり人が変わったように言葉を吐き続ける
「なるほどそれが理由か!君が入隊を止めさせたのにもそういう意図があったわけだ。
そりゃ両親を殺害した怪人の相手なんてさせたくないよな!」
風間は気分が高揚したのか笑いを堪えきれないといった様子だった。
物腰の柔らかさに隠れた獰猛な本質…それを除いてしまった蒼太の足の震えは止まらない。
「いや失敬、笑う場面じゃなかったね…疑問の答えがわかるとつい嬉しくなってしまってね、私の悪い癖なんだ」
「……」
風間は一つ咳き込んでから人が変わったように鋭い目つきでこちらを睨んできた。
「一般隊員のなかで唯一Z君は-GEARを知っている、いや知ってしまった…
勇気君を思ってやまない蒼太くん?君に一つお願いがあるんだよ…いいかな?」
抗えない、争ってはいけない…朧げな輪郭から伸びる鋭い視線から蒼太は逃げることはできなかった…
この男には、勝てない
「私の計画に協力してもらうよ…、私の理想のために……」
蒼太は静かに「はい…」と答える、拒否権などない、あるはずないのだ
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