第3話 始末
「応援部隊福本、到着しまし…た」
その光景を目にした福本蒼太は絶句した。目の前には謎の銀の装甲に包まれた人型が一体と重傷を負った上司、西宮の姿がある。
その上地面はひび割れ、怪人が絶命した際に落とす『黒い鉱石』が転がっている。
「西宮隊長!ご無事ですか!?」
「私は大丈夫だ、、鉱石の回収と彼の保護を頼む」
「あの仮面は一体?」
「それについては後で説明する…まずは保護だ」
それだけ言うと西宮は気絶してしまった
正直頭が混乱している。これは一体どういう状況なんだ?
説明してくださいよ…その言葉をどうにか飲み込み、後輩たちに命令をする
蒼太兄ちゃん、来てくれたんだ…。そうか、ここの近くに配属されてたもんね、
安心すると勇気はその場に倒れてしまった
***
目を覚ましたのは病室だった。身体中が痛い、ところどころ包帯が巻かれていて動きもしない。
「起きたか…?」
「あなたは…」
目の前には骨折したのか片腕を固定した女性の姿があった。
間違いないこの人は僕を助けてくれた人だ
「自己紹介がまだだったな。私はMCIの第八部隊隊長をしている西宮響歌(にしみやきょうか)だ。よろしく頼む」
「僕は高校1年の佐藤勇気です。やっぱりMCIの方だったんですね」
「あぁ、君は福本の知り合いらしいな。君の顔がわかった時、福本はあまりに驚いてな、、毎日見舞いに来てるよ」
「毎日…って、僕いったい何日…」
西宮さんは心底申し訳なさそうな顔で教えてくれた。
「一週間だ、」
「そんなに…」
衝撃だった…。戦っているあいだは何も負担を感じなかったのに…
次の瞬間だった西宮さんは僕に対し、深く頭を下げた
「すまない」
「どうしたんですか!?頭を上げてください」
「民間人の君を先頭に巻き込んだのは私の責任だ…。しかもこんなに大怪我をさせてしまって」
「僕は西宮さんに助けられました。それに、忠告を無視したのは僕ですから」
「……そのおかげで私も助けられた。感謝している」
「は、はい!こちらこそありがとうございます!」
少し砕けた雰囲気の中ドアからけたたましい音と共に涙を浮かべて蒼太兄ちゃんが入ってきた
「勇気ぃぃーー!無事でよかったぁぁ!」
「い、痛いよ蒼太兄ちゃん」
抱きつかれた痛みが温かくて嬉しかった。
「すまん、すまn、って西宮隊長!?」
「お邪魔している」
兄ちゃんがあたふたしているところにもう一人、
「「!?」」
スーツにハット、金の腕時計といういかにもな風貌の男は杖をついて部屋に入り、椅子に腰掛けた。二人の表情がこわばったことから、立場がわかる。
「風間総司令…」
「水をさしてすまないね…。勇気くん、君のこれからの話をしにきたんだよ」
「僕の、これから…?」
白髪だが、一切隙のないガタイのいい体。僕でも名前を知っているこの人は、
怪獣対策黎明期時代の英雄…風間竜一。この人がMCIを統べる人…。
「早速だが本題に入ろう。君が使用した新兵器『Z-GEAR』だが、我々が秘密裏に開発していた戦闘用変身システムだ。
この兵器に適合した者がMCIにはいなくてね…君が初めての適合者ってわけなんだ」
「僕が初めての適合者…」
「そうだ、つまり、君は我々が喉から手が出るほど手に入れたい人材ってわけなんだ。どうだい?MCIに入らないかい?」
「待ってください!」
突然の誘いに声を上げたのは蒼太兄ちゃんだった
「俺は、勇気を戦闘に巻き込みたくありません…そんな危険なことを勇気に」
「失礼ながら私も同意見です。彼は民間人ですし、その上訓練の経験もありません」
二人の発言に少々驚きながらも風間は冷たく言い放った
「じゃあ、西宮くん…この二人をこの場で消せるかい?」
「!?」
一瞬にして凍りつく空気。
僕らを、消す?
「総司令…それは何故…」
「西宮くん、伝えていただろう?Z-GEARは極秘の研究だ。その情報を班長クラスの職員や外部に漏らすのは、ねぇ?」
「脅迫ですよ?」
「こっちも急いでるんだ、手段は選べない」
何億秒にも感じる刹那がすぎた…。
「僕、MCIに入ります…」
「勇気!危険なんだよ、お前を戦いに巻き込みたくないんだ!」
「そうだ少年!時間が経てば君以外の適合者だってきっと見つかる」
「蒼太兄ちゃんのいう通り危険かもしれない…。西宮さんのいう通り他の適合者がいるかもしれない…。でも、僕が使えるこの力から逃げちゃいけない気がしてるんだ…」
「素晴らしい心掛けだよ勇気くん!」
風間は恍惚な表情で立ち上がるとそういった
その歩みを止めるように蒼太兄ちゃんが叫ぶ
「でも、でも反対です総司令!あまりに危険すぎる」
「……何もいきなりとは言っていない。西宮の部隊に入れ、訓練生として経験を積めばいい。無論、手続きは済ませてあるがね」
「最初からそのつもりで…!」
「なぁに、消すこともできたよ…」
高らかに笑いながら風間は部屋を去ろうとする
「待ってください」
「なんだい?勇気くん」
風間は時計を見つつ目線をこちらに移した
「一つだけ質問を」
「いいとも」
「なんでZ-GEARを公表しないんですか?」
「…」
風間の表情から笑みは消え、鋭い眼差しで僕を見てきた
「公表すれば、強大な抑止力として国民を安心させられたんじゃないんですか?
何故秘密裏に開発を?」
「くっ、、はははは!」
風間はまたも高らかに笑い出した。
「私は君をみくびっていてようだ。謝罪しよう」
「…教えてください」
「いいだろう、特別に教えてあげよう」
風間は耳打ちするように答えた
「世間には公表されていないが、知能の高い、つまり人間のように喋ることのできる怪人が発見されてね…。残念ながら戦闘能力も高く、うちの部隊が1つ全滅したんだよ」
「!?」
「他の怪人と違って知能がある以上、こちらの手札はできるだけ見せたくないんだ。対策を講じられたくないからね、わかったかい?」
「は、はい…。」
「君には期待しているよ、勇気君」
そう告げると風間は部屋を後にし、嵐のように去っていった。
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