第2話 変身

「適合者ヲ確認…衛生Z(ゼータ)起動シマス」

「ま、まさか!?」

「迎撃モード開始シマス」


 球体が変形し、上部から小型の銃による攻撃が始まる


「ギシャァァア」


 そんなバカな、、、MCIの隊長たちや優秀な隊員を募っても誰一人適性を示さなかった兵器だぞ?


「なん、だよこれ…」


 怪人は爪で球を弾きながら発狂している


「なぜ、民間人の中に『Z-GEAR(ゼータギア)』の適合者が?」

「え、それってどういう!?」

「説明は後だ!衛生が時間を稼いでいる間に早く!この装置を腕につけて!」


 有無を言わさずに無理やり装置とやらをつけられる。


 キュイーーーーン。不思議な音を立てながら装置は発光する


「!?」


 何かを悟ったように衛星は射撃をやめ、こちらに高速で近づく。


「適合者ヲ確認」

「民間人を戦闘に巻き込むなんて本当はしたくないんだがな…。少年!『変身』と叫ぶんだ!」

「ええ!?」


 何が何だか訳がわからない、いきなり下校中に怪人に襲われるし、守ってもらって

血まで流させてしまった…。

 挙げ句の果てに適合者ってなんだよ…僕は普通の高校生なんだぞ?


「ギィヤァァァ」


 怪人はすでにこちらに走り始めている

逃げたらお姉さんは愚か、他の人にまで被害が及ぶかもしれない、、

こうなったらできることをするしかない。


「変身!!」

 恐怖で裏返りそうな声をなんとか抑えて叫ぶ


「変身コードヲ確認」


 衛星は表情のない声でそう告げると、空中でさまざまなパーツに分かれる。

それぞれのパーツは関節を守るプロテクターとなり体に装着される。

球体は前後に分かれ片方は胸の装甲に、もう片方は仮面として顔に張り付いた。


 プシューーーー

顔や肩には飛行を補助していたマフラーがつき、凄まじい勢いで煙を上げている。

それぞれのパーツは繋がれるように光の膜で覆われてく。

 銀色の装甲に包まれたその見た目はさながら少年時代に見たアニメのヒーローのようだ


「いかん!少年前だ!」


 目の前から怪人の巨大な爪が襲いかかる。恐怖で体は動かない…


 はずだった…。


「グィエ?」


 体が、軽い?これなら!


自分の体は相手の爪を避け、伸びた腕を掴んで背負い投げていた。


「グィヤァァァァァ」

悲痛な叫びと共に怪人の爪が砕ける。


「今の僕が?」

「ご安心を、ある程度の攻撃、防御に関しましてはAIがサポートいたします」

「誰!?」

「先ほどの衛星Zです。今は人工知能Zでございます、適合者ユウキ様」


 この頭に流れた言葉は仮面から聞こえてるのか?


「ていうか、なんで僕の名前を?」

「…。ユウキ様、連続で攻撃を行なってエンジンにエネルギーを貯めてください」


 怪人は発狂し、立ち上がる。そして再びこちらに飛びかかろうとしている

今は問いただしている時間もないか…。仕方ない…


「行くよ!仮面の声さん!」

「人工知能Zです、ユウキ様」


 相手の拳をしゃがんで避ける。ガラ空きの腹部にパンチを二発叩き込んだ後、怯んだ相手に回し蹴りを打ち込む。

 攻撃を行うたびに、仮面に映し出された画面の数字は50%、70%、90%、と溜まっていき遂には100%を示した


「すごい…自分の体じゃないみたいだ…」

「ユウキ様、こちらを腕の装置におさし下さいませ」


 仮面の声がそういうと胸の装甲からUSBメモリのようなものが現れる

言われた通りに刺してみよう


『エネルギー充填率100%!必殺技コード検出!』


 仮面の声がそういうと同時に節々のパーツは煙をあげ、青いエネルギーを纏い始める


「ユウキ様、このように叫んでください………」

「………わかったよ仮面の声さん」

「人工知能Zです」


 怪人はよろけながらも発狂し、こちらに襲い掛かろうとする…

だが、伸びた拳が勇気に当たることはなかった…。

 勇気はとび上がり、すでに怪人の真上にいる


「「「インパクトリガー!!!」」」


 必殺技の名前とともに振り下ろされた拳は、怪人を撃ち抜き体を地面に叩きつけた。

地面はひび割れ、稲妻のような閃光と共に地響きが起こり凄まじい轟音と突風が巻き起こる。


 「これが、『Z-GEAR』…」


 西宮は新兵器に対しどこかで懐疑的な思いを抱いていた…

一向に現れない適合者、適合者がいなければ計算でしか示せない戦闘能力


 しかし今は違う。

この兵器があれば本当に怪人を根絶やしにすることができるかもしれない…

そう思えてしまったのだ


 MCIが怪人の殲滅のために秘密裏に開発した新兵器「Z-GEAR」その正体は、戦闘補助を行うパワードスーツであった。

 だが、この情報を知るのはMCIの上層部、ごく少数の人間のみである。


 それなのに何故、一般人であるあの少年がその適合者に選ばれたのか?

流血で朦朧とした意識の中、西宮は戦力として兵器に期待する反面、その謎に興味を持ってしまったのだった

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