Z-GEAR

シダ植物

第1話 邂逅

 2XXX年。日本は、未確認生物「怪人」の出現により未曾有の危機に瀕していた。

全国各地で暴れ回る怪人たちの対応に追われた政治家たちは自衛隊怪人特別対策機関、通称「MCI(エムシーアイ)」を設置。MCIの職員たちは国民の生活を守るべく、日夜戦いに身を投じていたのであった。


***


「おばあちゃん荷物持つよ!」

「まぁ、助かるわぁ。若いのに偉いわねぇ」


 僕の名前は佐藤勇気。高校3年生だ


「本当に大丈夫?風呂敷にいろんなもの入れちゃったんだけど」

「ぐぬぬ。。だ、大丈夫!」

「本当にありがとうねぇ」


 大きな風呂敷を抱えてなんとか駅まで送り届けることができた。

やっぱり人に感謝されるの嬉しいな。


「朝から精が出るな勇気」

「蒼太兄ちゃん!パトロールお疲れ様!」


 蒼太兄ちゃんはMCIの隊員で小さい時から慕っている。

困っている人を見つけたら必ず助ける僕の憧れの人だ


「おうよ。けど勇気、、学校まにあうのか?」

「え、うそ!?急がなきゃ!兄ちゃんまたね」

「気をつけろよー…。さて、今日も頑張りますか」


***


MCIの本部、総司司令官の部屋にて


「西宮くん。君の役割は、この新兵器『Ζ-GEAR(ゼータギア)』の適合者を見つけ出すことだ」

「心得ております。総司令」

「我が国にか出現しない怪人に対し他国は興味を持たない。今は被害を最小限に抑えられているが、いずれ原因治療を行わねば国力は落ちる一方…。この問題は我あれだけで早急に解決せねばならぬ。さもなくば日本に未来はやってこない。」

「…」

「期待しているよ…。西宮隊長…」

「はい」

そう言って西宮と呼ばれた女性はアタッシュケースを受け取った。

これに日本の未来がかかっている。そう思うと自然に肩に力が入った。


***


 授業が終わり、帰路についた。

「はぁ、結局こっぴどく怒られちゃったよ…」

結局到着したのはホームルームの時間だった…

先生には怒られるし、友達には笑われるし

明日はもうちょっと早く起きよう、そう思って路地に入った時だった。


ぐちょぉ


 聞いたことのない不気味な音。振り返った瞬間に黒い腕がものすごい速度でこちらに伸びてくる

悲鳴を上げる間も無く思い切り突き飛ばされる


 グシャァぁという音と共に僕が立っていた地面が抉り取られる。

これが、怪人…?

 得体の知れない恐怖に全身が硬直している


「大丈夫か?!」

目の前にはスーツ姿の女性が立っている。

この人が僕を押していなければ今頃僕は…


「〇〇市××に怪人出現!民間人が巻き込まれている。応援を頼みます」

通信機を使っていない方の手は、怪人の爪にやられたのか無惨にも服が引き裂かれ、流血していた。

持っていたアタッシュケースは遠くへ弾き飛ばされてしまっている


「ごめんなさい!僕を庇ったせいで…」

「気にするな。民間人を守るのが我々の使命だ」


 女性は華麗な体捌きで攻撃を回避しつつ拳銃で怪人を牽制する。

だが、怪人は少しずつ、少しずつこちらに近づいてくる。


「すまない少年、私が時間を稼ぐ間にあのケースを持って逃げてくれないか?

あとで私の部下に回収させる」

「でもお姉さんが!」

「死にたいのか!?早く行け!」


 震える足でどうにか体を支え、ケースの方へ走る。


「ぐぁぁ!」


 女性の手が怪人の爪に掻かれた。出血が増え、その場にうずくまっている

僕の方に注意をさかせてしまったからだ…

まずい…助けを呼んでいたはずだが、応援の到着にはまだ時間がかかるだろう…。


 このまま逃げていいのか?

 お前が近づいて何ができる?

 見殺しにするのか?

 仲良く死んじまうぞ?


 いろんな不安が頭をよぎる、頭がぐちゃぐちゃして目がまわる


 けど………


「少年!?」

「うわぁぁぁ」


 気づいた時には走ってた。怪人にカバンをぶん投げて怯ませる


「逃げろと言ったはずだ!」

「でも、でも自分だけ助かるのは嫌なんです!」


 女性に肩を貸し、ケースを抱えて走る。


「ギシャァアアアアア」


 怪人は耳をつんざくような叫びをあげ、こちらに近づいてくる

頼む!応援間に合ってくれ!!

心の中でそう叫んだ瞬間…


パシュッ…という音と共にアタッシュケースが開き、球体の何かが飛び出てくる。


「適合者ヲ確認…衛生Z(ゼータ)起動シマス」


ドローンのように空中に鎮座したその球体は、簡潔にそう発した。

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