第10話最初は屋根と壁さえあればいいさ〜
俺の体質被害者疑惑のオッサンの案内で崩れてはいるが、それなりに広い敷地になってる建物が見えてきた。
「流石にガキ共の暮らす場所を奪う所まで俺らは堕ちてねーのよ。親無しはどんどん増えてくしな。
だから孤児院代わりに広めの敷地の建物で集団生活して貰ってんだわ」
どうやらスラムでもこの辺りはまだ良心的な住人が多いようだ。
俺の活躍する場としては良いかもしれんな。
「うぉらぁ!! くそガキ共! 隠れて見てんのは分かってんだよ! 早く迎えに出て来いや!
こちとらガキの案内じゃ稼げねーんだからよ!」
入り口まで近付くと案内してくれたオッサンは、怒鳴る勢いで叫び始める。
そうすると冒険者始めてそうな歳の少年や少女が何人かワラワラ出て来て、オッサンを睨みつけていた。
「オッサンうっせーわ! チビ達が起きるだろーが!」
「はん! こっちに気付いてて、とっとと出てこねぇのが悪いんだよ!」
……凄い悪態合戦が始まったな。これがコイツらの日常的なやり取りなんだろうか?
と、遠い目をしながら観戦してると少女の方は俺に近付いて頭を撫でてくる。
「きみは新入り? アタシ達の家族になるのかな?
あの人が連れて来たって事はそうだよね?」
「ん、合ってる。スラムを彷徨いてたらここに連れて来られた。
住まわせてくれるなら何でも学んで皆の為になる事何でもするつもりだよ」
「そう、それなら家族として大歓迎だよ。ほらこっちおいで?」
少女は躊躇わず俺と手を繋いで建物の中に引っ張っていく。
流石にお礼も何も言わずに離れるのもどうかと思い、一言だけでもと声を掛けた。
「オッサン! ここに案内してくれてありがとな!」
「けっ! 家もなく彷徨くガキが目に入らなくなって清々したわ!」
何かこの減らず口が楽しい。悪い人じゃないのが伝わってくるからか?
いつか俺のする事に巻き込んで仲間にしたいな。
「まーた減らず口叩いてるこのオッサン!
そんなオッサンにお礼が言えるおめーは素直な良いチビだな!
そう言う奴は人に好かれて長生きしやすい!
いい事だぞ!」
オッサンと謎の張り合いをしていた少年が言い合い合戦に一区切りついたのか、少女に連れられていく俺についていく流れで一緒に建物の中に入った。
中は思ったより掃除されていて破片が転がってる事もなく、子供なりの修繕をしていたのが分かる壁。
スキルが上がったら色々とやりたい。
「起きてて手の空いてる奴集まれ〜」
寝ている赤子に配慮してか普通の音量で少年は呼び掛けを始めた。
「「「「「「はーい」」」」」」
色んな年齢、色んな種族の子供達が10人以上ぞろぞろ出て来る。
「今日はこれだけいたか。
あーお前ら、新入りが来たから仲間として色々と教えてやってくれ」
「「「「「「新しい家族増えたー! よろしくね!」」」」」」
少年の説明に答えた子供達はわぁぁ!と騒ぎながら俺を囲んで、何かもうカオスだ。
どーせすぐにバレるだろうからプレイヤーだってのは伝えておくか。
「言える空気じゃなかったからさっきは言わなかったんだけど、僕は今街を騒がせてる異界の放浪者なんだ。
ただし僕は立場も何も最弱な放浪者で、同じ放浪者に狙われる可能性もあるから秘密にしといて欲しい。
放浪者としてじゃなく、この世界の住人として過ごしたくて来たから」
「なっ!? おまえ放浪者だったのか!
あ〜…ま、いっか。放浪者として活動するんじゃねーみたいだし、オレらの家族として受け入れるのは変わんねーわ」
「その代わり成長しやすい放浪者としてこれから技術を身に付けてくる。
そしてその技術をここの皆に教えて出来る仕事を増やして、皆が過ごしやすい場所にしたいと思ってる」
「そこまでしてくれるのか? お前の負担になってね? 大丈夫か?」
「大丈夫、技術学んだ家族が増えれば人手も増えるし、その時には僕が教えなくてもいい状態だから」
「オレらとやってる事変わんねーか。なら放浪者の話は今後禁止な!
いいな? チビども! この話は絶対するな?
したら外の奴らにコイツが酷い目にあわされると思え!」
「「「「「「ひみつは絶対口にしない! 家族を危ない目にあわせない!
放浪者って言葉も言わない!」」」」」」
「これでいいだろ。悪党に狙われやすい弱いオレらは家族が狙われるような事は絶対にしないって決めてんだ。
みんなが生き残る為の家族の掟って奴だな。
もちろんお前も守れよ?」
ふむ、これなら配信しても住人からポロリの心配はなさそうだ。
寝床も共同で使う以上どうしてもログアウトでバレて騒がれるからな。事前に知っておいて貰えば、放浪者はそんな体質だからで誤魔化せる。
お互いまだ名乗ってないが、おいおい知り合っていくか。
ゴミドロップ拾いも始めたいし、生産技術を学びたいし。
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