第7話 帰り道と週末の過ごし方。

望月君と別れてからすぐやって来た電車に乗る。

いつもそこで飾られている置物に見えるほどのスムーズさで。

学校探検で疲れた足を少しでも癒すため探した席は目の前で取られてしまう。

ツいてないな~、とそんな気持ちを引きずりながらつり革を探す。

空いている右手で何もないスマホを確認する。

買い換えて数週間もたっていないような新しくて綺麗な箱。

珍しく家族と公式以外から来ることの無かったチャットアプリが働いていた。

『お近づきの印にウチの猫』と茶トラの写真と共に送られてくる。

凛々しくも可愛いその見た目に口角が少しだけ上がる。

『かわいい、お名前は?』と返して写真をじっくりと見る。

見ないと損だから。

すると数分も経たない内に『アールグレイって言うの。みんなちゃちゃって呼ぶからその名前で呼ばないけど』と教えてくれる。

見た目の色から名付けるタイプか…良いね。

アールグレイが何か思い出しながら猫談義が始まった。

猫派と猫派の平和的な話し合い。

それはとても有意義で、座れなかった悲しさなんておつりが帰ってくるほどだった。


    ◇


そうして話し合いは盛り上がり、電車を降りた後も続いた。

大体駅のベンチで二十分程話したと思う。

あのベンチを初めて利用して、少し変な気持ちに包まれたまま自転車にまたがる。

駅からゆっくり漕いで十数分のところに家はある。

アクセスは少し不便、周りは良い環境。

猫に思いを馳せながら漕いでいると住宅街に入ったあたりで猫を見かけた。

勢いでブレーキをかけて猫をよく見る。

首輪がかかっているかわいい猫。

近付いて友好をアピールする。

嫌われていないことを確認してから撫で始める。

もちもちの肉とサラサラの毛並み。

永遠と触っていられる良さがこの子にはある。

…少し惜しい気もしたけどこの子が帰りたそうだったので私も帰ることにした。

もちろん、この子がどこかへ行くのを見届けてから私も動き出した。


    ◇


「ただいまー」

まだ誰も居ない家に挨拶をして、真っ先に洗面台へ向かう。

猫を触った手で過ごすのは少し怖い。

危機管理ができない程ずぼらでは無いのだ。

いつも以上にしっかりと手を洗う。

そうして長い長い見えないものとの戦いを終え、リビングへ戻る。

手には冷蔵庫から漁ったジュースとアイス。

カップのバニラ系がとっても好み。

ソファでスマホを触りながら優雅に過ごす。

スマホには望月君の名前…なぜ。

連絡先を交換した覚えは無く、気になってすぐに開く。

確認するといつの間にかクラスグループも出来ていたらしい。

『日向さん今日はありがと!部活のとことか楽しかったね~』

みたいなことが送られてきていた。

時間を見ると…多分猫と遊んでいたころ。

不慣れなチャットだからゆっくりと返信を書く。

難しい漢字が無いか、他の解釈はしないか、いろいろと考える。

大丈夫なことを確認して望月君に送る。

送れたことを確認してクラスグループに顔を出す。

みんながよろしくの人ことを送りあっていたのにならって、私も『よろしくおねがいしますm(_ _)m』と送って浮かないようにする。

きっと春が誘ってくれたのだと思い、お礼を言いに行く。

するとちょうど望月君から『今週の日曜日とかにクラスで遊びに行こうかなって考えてるんだけど。誘ったら来る?』なんて面白そうな話が飛んでくる。

『場所とかにもよるけど、行きたい!』と、すかさず返事をする。

『じゃあ軽く決めようよ、何も決めないでクラスの人に話してもアレでしょ?』

『確かに、いい案出せるか分からないけど…』

そうして会議が始まる。

ネット検索を片手に部屋の小説だとかを漁ってみる。


    ◇


『良さそうだね、ありがとー!』

『うん、楽しみにしてる!』そうして決まった案にニッコリする。

少し経つとクラスグループに望月君からこんなアナウンスがあった。


『近い日の休日で親睦深めに遊びに行きませんか?いくつか案を考えたので皆さんの意見をお聞かせください!』

そう言ってさっきまで出し合った案を並べる。

ところどころ特殊なものが入って結構混沌としている。


いつも大好きな休日がもっと楽しみになった。
































































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