第3話 好きな言葉は『余り物には福がある』です。
「じゃあそろそろ決めますよ。」
先生の声で皆が席へ戻る。
「確認のため全委員会を読み上げていきます。
仕事内容などで質問があれば、その都度訪ねてください。」
そう前置きをして、説明をしながらゆっくりと読み上げる。
名称の差、文化の差はあれど中学校のころと大して違いはない。
少しの違いは仕事の量と強制かどうか。
中学校は言われた通り皆でやって来たが、高校では有志が頑張る環境である。
前に出ることが苦手な私は出来る限り働かない方を選んできた。
でも人とのつながりの大切さを私は知っている。
機会があったらですかね…。
「まず学級委員を決めて、その人達に進行してもらおうと思います。」
先生がよくやる自分の時間を作る方法。
「1年生は自主性で決めようと思ってます。
やりたい人は居ますか?」
私は前の人に視点を合わせる。
あれ、困ってる?
私も同じように緊張だろうか。
「がんばれ」と念を送るのと同時に周りが手をあげないことを願う。
それから数分気まずい空気が流れ、そろそろ先生も痺れを切らすだろうと思われた頃。
「私、やります!」
小さな声で、されど大きな勇気を持った強い主張が聞こえた。
それにつられて、これからの相棒となる男子も声を上げた。
「2人同時に決まりそうですが、他に立候補したい人は居ますか?」
ここまで待ったということを考えれば、ここで誰かが出てくることは無いだろう。
「それでは2人に任せようと思います。挨拶をした後、進行をお願いします。」
思った通り他に出る人は居なく、学級委員となった2人が拍手を受けながら前へ出る。
2人が少し話してから挨拶を始める。
男子の方は
仲がいいのが少し気になるなぁ…。
「挨拶も終えたので、決めていこうと思います。」
そう言って手順通りに進んでいく。
体育委員や図書委員などの人気な委員会が滞ることなく決まっていく。
すぐに決まらない委員会では男子が居ないことが多く、女子を探すこともとい私が委員会について考えることはなかった。
私はこのまま考えることなく決まっていくことを願う。
「美化委員やりたい女子は居ませんか?」
そんな受け身で居たいという思いはすぐに裏切られる。
「男子は決まってるので女子で誰か…。」
春が話すのと同時に目が合う。
悩んでいた私を後押しするかのような目線。
その目から逃げるように周りを見回してみれど誰もやる気配はない。
頭を抱えて悩んでみるが、入ることに肯定の意見しか出てこない。
私は意を決して手を挙げてみる。
…ただし、主張は弱く。
「あ、日向さんやってくれるのか?」
笹森君が気付く。
私は小さく頷くと、委員会が書いてあったプリントに名前が書きこまれていく。
そういえば、もう一人は誰だったのだろう。
気になるけれど名前だけ聞いてもきっとわからないと思う。
相手が私と違って人に話しかけられる性格であることを願いながら休み時間を待つ。
「えっと…これで全部ですかね?」
春と笹森君がプリントを見ながら先生に確認を取る。
「そうですね、ありがとうございました。」
そう言いながら席へ戻ることを促す。
空いていた前の席が埋まると同時に、私は小さく拍手で迎える。
あんな風に人の前で話すなんてこと、私にはきっと無理だと思う。
春は微笑んで返事をしてくれた。
「委員会に入っていただいた皆さん、協力ありがとうございます。
入っていない人も学校の活動へご協力お願いします。」
こういったところが礼儀正しいなと思う。
「早速ですが、委員会に入った皆さんは昨日伝えた通りホームルームの後に集まりがあります。
短い時間ですので、参加の方をお願いいたします。」
昨日伝えられていた…聞きそびれたかも。
「まだ皆さんで話したい相手が居ると思いますので、ここらへんで挨拶をしようと思います。何か明日のことで聞きたい人などいますか?」
いつものように手を挙げる人は居ない。
まぁ悪いことではないだろう。
「特になさそうですね、挨拶したら皆さん自分の用事を済ましてください。
では起立、礼、さようなら」
皆でさようならの合唱をする。
この後のことなど春と話していると一人の男子が話しかけてきた。
名前は
同じ委員会の子、らしい。
知らない相手ということで緊張している。
上手くやれるのだろうか、少し不安になって来た。
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