第13話 安心。
宿題というのはとても面倒なもので、やったって対して学びになんてならない。
まあ、やる側の問題なのが大きな原因ではあるのだが、やってる事は学びではなく作業に近い。
ゆえにこうして今もタマゴ孵化厳選の片手間で宿題
やっているのである。
実に効率的である。
「で、河合さんは宿題の方はどうなんですか?」
「……なんとかなるよ!! うん」
「全く手を付けてないんですね」
「あたしも忙しいんだよっ。厳選したり攻略したりとかっ?!」
「どっちもパケモンの話ですよね」
まあしかし僕も積極的に宿題をやっているわけではないので強く責める事もできない。
タマゴ厳選で暇だから宿題をやっているだけで。
「それにしても河合さンは僕の部屋に入り浸りますね」
「だってさ? 追加コンテンツやるにはオタ君の家じゃないとできないし? 夏だし?」
「確かに夏の大量発生はリアタイで追加されたりとかもしますし、わからなくはないですけども」
一昔前のパケモンでは追加コンテンツなんてものもなかった。
だが今はソシャゲがゲーム界隈で流行している昨今、いわゆる据え置きゲームの類いも時代にあったプレイスタイルというのを提供できなくてはいけなくなった。
既存のストーリーから追加コンテンツ(課金)へ移行させて据え置きゲームとしての在り方とソシャゲのようなベースとなるゲームに新しいストーリーやイベントをアップデートしていくというスタイルはどちらの利点もあり、僕らユーザーとしても有難い。
だがそれ故にこうして僕らの時間はより簡単にとけていく。
「ま、夏休み終盤になって泣きを見るのは河合さんなので僕はべつに問題ないですけどね」
「大丈夫。あたしはオタ君が助けてくれるって信じてるっ」
「僕をアテにしないで下さいよ……」
可愛い顔してそんなこと言われても手伝わないぞ僕は。
……とか思ってても手伝っちゃうんだろうなぁ。
などと考えているとスマホが震えた。
画面を見ると母親からだった。
こんな時間に珍しいと思いつつも電話に出てみた。
「もしもし? うん。家だけど」
疲れた声の母親の要件はどうやら急遽出張になったらしい。
父親は新規の現場の立ち上げでこの夏は長期出張なので、両親出張である。
「なるほど、部下のやらかしで出張して謝罪祭りと。なるほど」
部下のミスで複数の取引先に謝罪しないといけないらしく謝罪する為にあちこち回る羽目になったらしい。
社会人って大変だなぁ。
……働きたくないなぁ。
「うん、それで2日家を空けると。なるほど。わかった」
元々家には寝に帰ってくるだけの人たちみたいになってたところはあるが、こんな事になるのは初めてだな。
まあ、僕が高校生になって1人でもどうにかなると思ってるからこその対処なのだろうけども。
僕が男じゃなくて女の子ならまた話も変わってきたかもしれないが、まあ問題もとくにはないのでいいだろう。
「お母さん?」
「ん? ああ、はい。色々あって両親が2日ほど家を空けることになったらしいのでその報告ですね」
母親は1度着替えなどを取りに戻ってくるらしいし、その時にでも食費をもらっておこう。
いやぁ〜社畜って大変だな〜。
……社会に出たくないなぁ。
「そっか」
「まあそもそも共働きですし、いつも居ないようなものですけどね」
だからこそゲームをしてても何も言われない。
成績だってそこまで悪いわけではないから本当に何も言われない。
気楽なものだ。
「じゃあさ、泊まっていい?」
「…………ん?」
「泊まれたら追加コンテンツやり放題だし!!」
「……子どもか」
「だって家じゃできないし〜」
僕はいよいよ河合さんの貞操観念とか常識とか、その辺が心配になってきた。
まだ付き合っている仲なのであればわかる。
色恋にうつつを抜かしたい年頃の若い男女ならばそれも不思議な話ではないだろう。
だがべつに僕と河合さんはそういった仲でもないし、河合さんがそういう意識を僕に対して向けているようにも思えない。
てか普通に考えたギャルの陰キャのカップリングなんてラノベとエロ漫画くらいありえないような組み合わせであり、どうあってもそんな事にはならないだろう。
僕にだって下心が無いと言えば嘘になるが、僕が手を出す事はないだろうけども、それはあまりにも警戒心が無さすぎないかと不安にもなる。
「それに追加コンテンツのステージでしか手に入らない技マシンをあたしは絶対手に入れなきゃいけないんだよ……」
「ち、ちなみにその技マシンとは?」
目がマジになりだした河合さんに僕は恐る恐る聞いてみた。
河合さんがこの顔になると大抵はショコラン絡みなのだがマジで怖いんだよなぁ。
「もちろん「ひざまくら」だよっ!! 相手を100%眠らせてしかも5ターンは絶対起きない! しかも夢ドレインっていう追加効果で眠らせた相手から少しずつ体力を奪って回復できるとか最高すぎる……。あとなんかえっちで絶対うちのショコランたゃんに覚えさせたいっ! ……技ポイント5しかないけど」
あ、良かったやっぱりいつも通りの河合さんだった。
ちゃんとイカれてましたわ、はい。
安心した。
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