○○○られっ子だった私の住処は王宮です

第3話 厳しい試練

謙信が王宮でのお世話係として働く初日。彼女は早朝から目を覚まし、指定された部屋に向かっていた。新しい生活に対する不安と緊張が混ざり合い、彼女の心は揺れていたが、ここで失敗してはならないという決意が彼女を支えていた。

部屋に到着すると、そこには二人の謙信と同年代ぐらいの少女が待っていた。一人は高輝様に仕える家来、隈谷（くまがい）殿の娘である千遥（ちはる）、もう一人は王妃である、美樹子（みきこ）様の姉の娘である千南（ちなみ）だった。二人とも立派な身分の家庭に生まれたようで、その風格から謙信とは全く異なる世界で育ったことがすぐに分かった。

謙信は二人に向かって深く頭を下げ、礼儀正しく挨拶をした。

「お世話係として働かせていただくことになりました、奧野謙信と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」

しかし、二人の反応は冷たかった。千遥は腕を組みながら謙信を見下すような目つきで、

「ここで働くことを決めたのは高輝様とはいえ、庶民がこんな所で役に立つのかしら？」

と皮肉を込めて言った。

千南もまた、冷ややかな視線を謙信に向け、

「私たちには私たちのやり方があるのよ。ついてこれるかしら？」

と挑発するように言った。

謙信はその言葉に傷ついたが、それでも何とか耐え、黙って頷いた。彼女はここで失敗するわけにはいかないと、自分に言い聞かせた。いじめられていた頃のことを思い出し、それに比べればこれくらいは耐えられると自分を奮い立たせたのだ。

その日から、謙信の厳しい試練が始まった。千遥と千南は、わざと厳しい態度で業務を教え、少しでもミスをすると容赦なく怒鳴りつけた。謙信は何度も失敗し、冷たくあしらわれながらも、ひたむきに努力を続けた。

「ここで諦めたら、私はまた元の場所に戻るだけ…」

そう心の中でつぶやき、彼女は耐え続けた。

日が経つにつれ、謙信は少しずつ業務に慣れていった。千遥と千南の厳しい指導にも少しずつ対応できるようになり、ミスをすることも減ってきた。彼女は次第に、自分がこの王宮での生活に適応し始めていることに気づき始めた。

とはいえ、千遥と千南の態度は依然として冷たかった。彼女たちが謙信を受け入れるのはまだ時間がかかるようだった。しかし、謙信は負けなかった。彼女は自分を奮い立たせ、この新しい生活に真剣に向き合っていく決意を固めていた。

こうして、謙信の王宮での生活は次第に形を成し始めた。彼女はまだ多くの試練を乗り越えなければならないが、その心には確かな強さが芽生えつつあった。