第6話 魔族、起こされる

レイナが出ていった翌日は、バン!! という音とともに入ってきた声によって起こされた。


「レイナ!!」


声の主は、家の中を見回すと、


「あれ……? おかしいな……」


とつぶやいて出ていった。


なんなんだ、一体。折角今日は日曜だってのに。


すっかり目が覚めてしまったカインは、顔を洗って着替え、朝食の支度を始める。昨日のスープと巨大な鹿肉を机に並べていると、外からドオオォンという地響きのような、雷が落ちた時のような音が聞こえた。


驚いて外に出れば、レイナが少女と取っ組み合いになっていた。


レイナ……お前出て行ったんじゃないのか?


視線に気がついたレイナは、取っ組み合いをしたまま、すました顔で


「あら、おはようカイン」


となんでもないように言った。それでレイナの気が緩んだのか、彼女が少女を掴んでいたところが離れ、すぐさま少女から攻撃が放たれた。揺れる大地。


揺れが届いたのか、遠くに見える家々から数名、魔族が外に出てくる。一般人に被害が及んだのを知ったカインは、二人の間に割って入った。そして、レイナに向かって放たれた攻撃が、カインに直撃……。


倒れてピクピクするカインに、二人の少女は顔を見合せ、黙ってカインの家まで引きずって行った。


カインはすぐに、引きずられたことによる背中の痛みに顔をしかめ、復活した。


「どういうことなのか……説明しろ……」


怒気を孕んだ声で言うが、体は煤にまみれており、頭はアフロになってしまったので大して怖くない。レイナは笑いを押し殺し言った。


「条件に合う、ぶフッ場所に、家をフフッ建てただけククッ」


「お前キャラ崩壊してるぞ」


レイナはアフロになった人に言われたくないと言いたげな目でカインを見た。


「で、そいつは誰だ?」


カインはレイナの隣に立つ少女に目を向ける。明らかに人間のメスだ。魔界に人間など、そうそう簡単に入れるものでは無い。食用に連れてこられた物はこんな所には居られないはずである。……目の前に一人、例外はいるが。


するとレイナは意外そうに答えた。


「カインも会ったことあるじゃない」


少女を見つめるが、カインに心当たりはなかった。最近攫ってきたやつに、こんな少女はいなかったはずなのだ。


痺れを切らしたレイナは言った。


「地蔵ちゃんよ!」


「地蔵ちゃんじゃないよ! 私にもちゃんと名前あるし!!」


今まで静かにしていた少女が叫んだ。そう言えばこんなやつもいたなとカインは思った。


「……地蔵ちゃんがなんでここに居るんだ? お前も誰かに攫われたのか?」


恐る恐る尋ねると、地蔵ちゃんはふるふると首を振った。


「レイナは修行が足りないから、追いかけて連れ戻そうと思って」


予想外かつ意味不明の答えに、カインは目を白黒させた。

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