てるてる坊主

文字を打つ軟体動物

本文

 このパフェおいしいですね。


 そう、ソフトクリームが濃厚な味わいで……ああ、そうだった。

 怖い話についてでしたよね。


 これは、新居に引っ越してからの話なんですけど。

 てるてる坊主って知ってます?


 そう、あの。

 雨が降らないように、っていうおまじないのやつ。


 それでですね、向かいの家が変で。

 てるてる坊主って窓に飾るじゃないですか。

 私が引っ越してきた時点で、既に……10数個かな、たくさん吊るされてて。


 で、これだけでもおかしいんですけど、1日に一つ、増えるんですよ。

 だからもう、窓中てるてる坊主だらけになっちゃったり……


 え、そんなのできませんよ、直接聞くなんて。

 ヤバい人だったら嫌じゃないですか。

 いや、既にヤバいですけど、まぁ。

 できない理由は他にもあって、いやこっちがメインなんですけど。


 てるてる坊主が窓いっぱいになって、すっかり日常というか……それを見るのがライフワークになっちゃった頃に、引っ越しちゃったんですよ、向かいの人。


 私、思ったんですけど、てるてる坊主って雨が降るのを止めるおまじないじゃないですか。

 雨じゃなくて……漠然としてますけど、別の何か、怖いものが降ってくるのを止めようとしてたんじゃないかな、なんて。


 最近、近所で何かが潰れるような音が聞こえたらしいですし。


 それで、引っ越しちゃったから、何が降ってくるかわからなくて。

 これが怖い話……と言えるかは微妙ですが、作家先生にはパフェ代になるくらいのネタでしょ。



 そう言う彼女は、パフェを食べながら……てるてる坊主を作っていた。

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