第5話 姉さんの部屋
(トントン ドアをノックする音)
「ケン君ーっ? おはようーっ」
「ケン君、起きてーっ!」
(ガチャ ドアが開く音)
「あれ、早いねケン君」
「ケン君、今日はね、私の部屋に来て欲しいの」
「え? 心の準備? しなくていいよ(笑)」
「レディの部屋は初めて? 大丈夫、緊張しなくていいよ(笑)」
「支度は整えた?」
「じゃ、早速行くよーっ! レッツゴー!」
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「うん、そうここ」
「そう、再婚したのに別居って……。お父さんから提案したみたいなのよね。ごめんね」
「え? 高そう? そうでもないよ。普通のアパートだよ」
「まあ、とにかく入って入って」
(ガチャ アパートの一室)
「お父さん、まだ帰って来ないからくつろいじゃって」
「え? フラグじゃないよ(笑) 変なこと考えないの」
「じゃ、私の部屋へどうぞ」
「キレイ、かな?」
「ありがとう」
「ピンク色が好きなんだ。あと白色も。大体その二色で統一してる」
「あ、これ? 前の家族写真かな」
「そう、これが前のお母さん。で、この小さいのが私」
「可愛い? ありがと」
「え? 前のお母さん? ……」
「お母さんは……病気で死んじゃった」
「私が3歳の頃。しばらくお父さんは一人で私を育ててくれたんだけど、私がお母さんが欲しいって駄々をこねたから、その……再婚の話が出てきて……」
「保育園でも周りの友達はみんなお母さんと手をつないで帰っていた。私だけだったの」
「今は高校生になって仕方ないと思えるけれど、当時はね」
「友達の家に遊びに行ってもみんな家族って感じで、幼い私には幸せそうに見えた」
「『なんで私にはお母さんがいないの』って。お父さんを毎日困らせていたの」
「お父さんも困り果てて、今のそのケン君のお母さんと再婚したの」
「最近知ったのは、この再婚が時限付きの再婚だったということ」
「これはまさにMasakoさんの小説『再婚』と似たような状況」
「お父さんは私が高校生になったら離婚をする、と。」
「ケン君のお母さんはそれを了承したうえで再婚を……」
「だから、私たちも時間制限付きの姉弟なんだよ、ね」
「でもさ、幸せだったんだよ。ケン君のお母さん、優しい人だし。ケン君も私の弟になってくれたし」
「家族っていうのを実感できてた。今も……」
「こうしてケン君家に遊びに行くのもきっと家族だから……」
「たぶん、もう少しで私たち、姉弟じゃなくなるんだよ」
「だけど、ケン君とこれから先も姉弟でいたいと思ってる」
「過去の思い出が、ケン君との思い出がどうしても忘れられなくて……」
「え? それじゃあ私はどうしたいかって? それはもちろんケン君と。みんなと家族で居たい」
「ケン君も?」
「ケン君、ありがとう……」
(むせび泣く声)
「ケン君も私のお父さんを説得してくれる?」
「ありがとう」
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