第10話 こっくりさんに振り回される話(3)
「愚かですね。高々あなたのような人間如きが、私を倒せるわけがないでしょう。…少し大人しくしてもらいましょうか。
こっくりさんは周囲に浮遊している人魂を自身の元へ集め、巨大で高温な青白い炎にして私たちを飲み込んできた。
「わらしに任せて!
座敷童は襲い掛かる炎に向けて手を振りかざした。すると炎は一瞬にして宙へと消え去った。
「何をしたんだ?」
「領域内に漂う妖力に対して正反対の妖力をぶつけたの。こうすればいくらここが相手の主戦場だからって対消滅を起こして無効化出来るんだから」
「そんなことが出来るのか…」
「だから言いましたでしょう?わらしちゃんは領域支配のスペシャリストなんだって」
なぜか覚は自分の手柄のように誇り高ぶっている。最近知った写真というものがあればこの表情を残しておきたいものだ。
「…なぜだ…なぜこんな小娘にこんな芸当が…私の能力をこうもすぐに解析できるとは驚いた……ええい!ならば物量で押し切るまで!これっぽっちで私の妖力を読み切ったと思うなよ!」
こっくりさんはやけくそになって先ほどよりもはるかに多い量の人魂を集め、自身の手の中で巨大な火の玉を作り始めた。しかし座敷童は表情一つ変えずに前に出た。
「こっくりさん。あなたは自分の力に絶対の自信があるみたいだけど…それは大きな誤算だよ?わらしとあなたじゃ妖魔としてこの世に存在してきた年が違う。つまり、妖魔としての格が違う。見せてあげる…『格の違い』ってやつ」
「…
こっくりさんは炎を振りまき、私たちの周りに巨大な魔法陣を作り出した。そしてそれが今にも爆発しそうになった時、陣の中で妖力を迸らせていた座敷童は小さく足を踏み鳴らした。
「
次の瞬間、魔法陣は爆発し辺りは青白い炎に包まれたが、それは一瞬にして消え去った。そして気付けば神社の外には青い空が広がっていた。座敷童が怨念領域ごと妖術を相殺したのである。そしてよく見ると元々神社の周りに張られていた結界も解けているようだった。
「ばっ、馬鹿な…そんなはずは…こんな小娘に私が負けるなんて…」
「小娘小娘ってさっきからうるさいんだけど。わらしが誰か知らないの?どんな家にでも富と不幸を呼び寄せる座敷童だよ?」
すると、先ほどまで馬鹿にしたような態度をとっていたこっくりさんは突然顔を青ざめさせ慌てふためき始めた。
「なっ!ざっ、座敷童ですって!?そんな、私、座敷童と…」
「覚、今のうちに」
「よく見てください、ゲンヨウさん。わらしちゃんが精神的ショックを与えてくれたおかげでもう元に戻ってますよ。」
よく見ると、確かにこっくりさんの姿は先ほどまでの凶悪な姿からは打って変わって、狐の耳と尻尾をはやし和服を着た容姿端麗な少女の姿になっていた。喋り方がこの間本で読んだ「お嬢様口調」なるものなのは若干気になるが。
「あわわわわ……えっと、私、なんだか皆さんに迷惑をおかけしたようですわね…あれ、ついさっきまでのことなのにうまく思い出せませんわ」
そう言ってこっくりさんは首をかしげる。
「こっくりさん。お前は今まで将門の怨念に支配されていたんだ。暴走したお前を倒すのに座敷童がいなかったらどうなっていたか…」
「そうだったんですね…本当にご迷惑をおかけしました。そうですわ、あなたたちのお名前をお聞きしても?」
「私はゲンヨウ。わけあって今は人間になっている元妖怪だ。で、こいつは覚。俺たちは将門の怨念から妖魔たちを解放することを目的としている」
「へぇー…ところで、同じ志を共にしているということは、皆さんのチーム名的なものもあるんですの?」
「チーム名?ああ、組織の名前みたいな…そういえば決めてなかったな。」
「あ、チーム名ならわらし決めてる。」
座敷童は自信に満ちた表情で私の方を見た。
「それはねぇ…『
「妖魔解放戦線…か。まあいいだろう。それよりなんで私が大将なんだ」
「だってたいしょー様はたいしょーじゃない」
「そうか…そうなのか?…まあ、そうか…」
「まあとにかくその辺はどうでもいいですわ。妖魔解放戦線…心にとどめておきますわね。それと…」
こっくりさんは白崎と美奈の元へ近づいていく。
「あなたたちも、なんだか悪かったわね。関係のないことに巻き込んでしまったみたいで」
「えっ、いや、別に私たちも気にしてないから。確かに、試合に出れなかったのは残念だけど…悪いのは全部、その…さっきから言う、将門?のせいなんでしょ?」
「それでも、私はあなたたちに危害を加えてしまった。本当に申し訳なかったわ。」
こっくりさんは深々と彼女たちに頭を下げた。それに対して白崎と美奈は気にしていないといった素振りを見せていた。どうやら和解出来たようだ。
「それじゃあ、私たちも帰りましょうか。今日はわらしちゃんが大活躍だったので何でも好きな物作ってあげます!」
「うーん…イナゴの佃煮?」
「それは俺が食べたくないから却下だぞ…じゃあ、こっくりさん、またいつか」
「はい、またいつか。次は召喚してくれてもいいんですよ?」
私たちは和気あいあいとしながらこっくりさんに別れを告げ、帰路につこうとした。しかしその時、突如上空に鋭い妖気の気配を感じた。間違いない、この気配はこっくりさんを狙っている。
「…!こっくりさん!避けろ!」
私はこっくりさんに避けるよう促したが、もう遅すぎた。次の瞬間、空から飛んできたそれはこっくりさんの胸を貫き、その傷口からこっくりさんを石に変えてしまった。
「なんだ…!」
上空を見ると、そこには一人の男が宙に浮いて私たちを見下すような眼で見降ろしていた。この男は何者なのか、なぜこっくりさんを石に変えたのか、いろいろな疑問や感情が同時にやってきて処理が追い付かないが、一つだけ言えることがある。
(こいつは…生かしておいてはいけない…)
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