第28話 火事場の馬鹿力
件名の「火事場の馬鹿力」と言う言葉をみなさん、よくご存知でしょう。人間が緊急事態に陥ると、脳のリミッターが外れて、普段からは絶対考えられないような筋力を発揮する事です。
聞いた話ですが、ある女性は、ご主人が事故で乗用車の下敷きになった時、「あなた!」と叫びながら、片手で車を持ち上げ、片手でご主人を引き出されたそうです。愛の力が為せる技とは言え、ワンダーウーマン並みのパワーです。
上記のような話は、よく耳にする話です。ここで、あと二つほど、面白いお話をさせて頂きたいと思います。
ある晩、私が友人と飲んで最終バスに乗り遅れ、一人で歩いて自宅まで帰っていたときのことです。道を歩いていると向うから、190cm以上はあろうかという大男が歩いてきました。この人は、酔っていたようで、私を誰かと間違えて「おい、お前、この間は何であんな事したんだ?」とか何とか言いながら、イキナリ殴りかかってきました。
私が、彼のパンチを躱して殴り返すと私の拳が当たった彼の肩関節が脱臼しました。すると、彼は左手で自分の右肩を抑えながら、とても人間とは思えないスピードで走って逃げていきました。その逃げ足の速いこと、速い事。私は、唖然として彼が走って逃げて行くのを見送りました。
あの時の彼も、確実に100m10秒は切ってました。元陸上部の私が言うんだから間違いありません。「いや、あなたも酔ってたんだから、見間違えたんじゃない?」と仰りたい読者の方もいらっしゃるでしょう。
私の話をお疑いの読者の方々のために、取って置きの話をいたしましょう。私の後輩に、M君と言う人がいました。彼は、F大の卓球部に所属していました。このM君がしてくれた話なんですが、ある時、卓球部の後輩達が車で、肝試しに出かけたそうです。福岡では、心霊スポットとして有名な「犬鳴トンネル」というところです。
結局何も出なかったそうなんですが、このとき、そのメンバーの中に一人、超怖がり屋の後輩がいたので、皆で示し合わせて彼を一人その場に残したまま車を発進させました。すると彼は、物凄い形相で何かを喚きながら、走る車について来たそうです。運転していた人が、スピードメーターを見ると時速60キロ出ていたとの事です。実に100m6秒で走っていた計算になります。
彼は身長160cmくらいの小柄な男の子だったそうですが、この時の彼はウサイン・ボルトが打ち立てた100m走の世界記録9秒58を、3秒58縮めた事になります。嘘のようなホントの話です。
実は、私自身の身にも同様の事が起きたことがあるんですが、そのことは、このシリーズの終わりの方でお話しさせていただきます。
次回は、大学時代の空手の授業でお世話になった上原優希徳先生の道場に入門した時のお話です。では、また次のエピソードでお会いしましょう。
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