第18話  空手 vs ボクシング 1

  実は私、松濤館流空手を辞めてから、半年間ほどボクシングを友人から習っておりました。高校時代にボクシング部に所属し、大学に入ってからはジムに二年ほど通っていたこの友人は三度の飯より喧嘩が大好きな男でした。この友人は、とても丁寧に基本からスパーリングのコツ、ボクシング用のウエイト・トレーニングのやり方、バランスの取れた食事の摂り方まで教えてくれました。


 彼と練習を始めたばかりのある日のこと、彼が、


「空手の突きとボクシングのパンチとじゃ比べ物にならないよ。蹴りなしで空手とボクシングがやったら、絶対ボクシングが勝つよ。」


と言ったのです。まだ若く血気盛んだった私は、


「じゃ、蹴りなしで俺と(スパーリングを)やってみるか?」


と言い返しました。彼の返事はOKでした。で、その場でヘッドギアとグローブを着用して二人はスパーリングをしました。

 

 結果は・・・。賢明な読者の皆様がご明察の通り、私は彼に滅多打ちにされたのです。一度だけ、掌底(手の平)打ちが彼の耳に入りましたが、ボクシングのルールでは手の平で打つのも相手の耳を打つのも反則になるので、あまり自慢にはなりません。

 

 蹴りを使わずパンチだけで闘えば、空手が不利なことは頭では分かっていた私でしたが、あまりに一方的なやられ方をした私は、つい悔し紛れに「蹴りを入れたら、絶対お前に負けんもんね。」と言ってしまいます。私も若かったですが、その友人も若かったんでしょうね。彼も「いいぜ。じゃ蹴りを入れてやろうか?」と言い返してきました。パンチで私をメッタ打ちにしたので、自信があったんだと思います。

 

 その日は彼に何度も殴られて頭がクラクラしていたので、「お互いベストコンディションの時にやろう」という彼の提案を受け入れて、翌週の練習時に彼と異種格闘技戦をやることになりました。(つづく)

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